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5話『にっかり堂のガトーショコラは美味しいなぁ。僕たまは毎日食べるのだぁ』お兄様は毎日美味そうにガトーショコラを食って、僕に見せつけます

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 にっかり堂のガトーショコラが食いたかったんです。
お兄様は毎日毎日美味そうにガトーショコラを食って、
 『にっかり堂のガトーショコラは美味しいなぁ。僕たまは毎日食べるのだぁ。
なんせ僕たまはオズボーン男爵家嫡男シップトたまだぁ。
毎日にっかり堂のガトーショコラが食べれるのだぁ。
イフレウトぉ、お前たまのようになぁ、弱くて馬鹿で醜い次男坊にはもったいない食べ物だぁ。
お前なんかには食べさせてやらないぞぉ。
悔しかったらなー食べたかったらなー、オズボーン男爵家次期当主にでもなってみるんだなぁ。
まぁー無理だろうがなー』
お兄様に、毎日いじめられていました。
当時僕はにっかり堂のガトーショコラを食べた事がなく、それはとても美味しそうでした。
しかし、食べられませんでした。
次男坊の僕ににっかり堂のガトーショコラを買う金など与えてもらえず、オズボーン男爵家としての仕事ばかりやらされて、
時間をみつけては訓練をして、そんな事をしながらにっかり堂のガトーショコラが食べたくて。
そんな辛く苦しくにっかり堂のガトーショコラを美味しそうに思い食べたい日々に、僕の我慢はもう限界に達しそうになっていました。
 『ふーん、なんだぁ。そんなに物欲しそうに。
そんなににっかり堂のガトーショコラが食いたいかぁ。
いいだろーう。食わせてやろうかーなぁ』
 僕はその時、にっかり堂のガトーショコラが食べたくて食べたくて仕方がなくて、にっかり堂のガトーショコラを食べるためならなんでもしたん
でしょう。
当時の僕は今より馬鹿で、視野も狭くて、そんな事しか考えていなかったのです。
貴族の本能のままに生きていました。
貴族の本能のままに生きる男爵家次男坊のすることなんて、限られています。
お兄様お姉様に殺されるか、お兄様お姉様を殺して家督を継ぐか。
 『僕たまを殺す事ができれば、お前がにっかり堂のガトーショコラを食べられるようになるだろうなぁ、毎日毎日好きなだけだぁ』
そんな言葉に僕は乗せられて、お兄様が寝ている間にお兄様の部屋に入りました。
不自然が過ぎて自然な程にお兄様は無防備で、舎弟も側近の一人も付けず、お兄様は寝ていました。
簡単に殺せました。
そりゃあそうでしょう。
男爵家嫡男が、舎弟も側近も付けずに一人で寝ているなんて有り得ないことです。
男爵家嫡男というのは、常に隙を弱さを見せてはいけないのです。
兄弟姉妹に殺されないようにしなければいけないのです。
それなのに、何故だかお兄様は無防備で寝ていたのです。

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