ばかな男は恋で賢くなるのか?

雪うさこ

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第六幕

04 一緒にいられなくなる

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「ただいま」

 自宅に帰るのも少しずつ馴染んできた。靴を脱いで玄関にそろえていると、トレーナー姿の妹、りんが顔を出した。

「公務員さんは、毎日毎日、帰宅が遅いんだねぇ」

「別に」

「ごはんは?」

「いい」

「あっそ。またお菓子ばっかり食べてるんじゃない?」

「……」

 彼女との会話は苦手だった。兄弟なのに、彼女は自分とは全くちがったタイプでテンポも合わない。
 野原はネクタイを緩めてから二階に上がろうとしたが、ふいに腕を掴まれて一階のリビングに連行された。

「な、なに?」

「あのさ。いい? ちょっと」

「よくない」

「よくなくない!」

 彼女は野原を洗濯ものの山になっているソファに座らせる。野原は周囲を見渡してため息を吐いた。
 女性二人で暮らしているには、汚なすぎると思ったのだ。

「あのねえ。いつまでここにいるの?」

「出て行ったほうがいい?」

「そういう意味じゃないの。いたっていいけど。でもさ……篤兄あつにいと仲直りしたほういいよ?」
 凛は大きな鳶色とびいろの瞳をじっと野原に向けてきた。

「——仲直り、したくない」

「え? 嘘でしょう? せつ。本気?」

 ——だって……実篤さねあつは……。

「おれのこと、なにもわかっていない。仲直りしない」

「もう! 雪。なに言ってんの? 本気なの? そんなんじゃ、このまま終わりになっちゃうよ?」

「終わり?」

「そうだよ。篤兄あつにいと一緒にいられなくなるんだよ?」

「……一緒にいられなくなる——?」

 凛の言葉は野原の心を揺さぶる。

 しかし、どうしたらいいのかわからないのだ。

『槇さんを助けたくないの? 野原課長——?』

 久留飛くるびの言葉が脳裏から離れない。




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