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第六幕
15 嫉妬
しおりを挟むその日は無断早退という失態を野原にさせてしまったのは反省だ。さすがに課長職がそれではまずい。
あれから何度となく彼の中で果てた。無理させたのは重々承知だが、自分の不安を解消するためには、彼とのつながりが必要なのだ。ここ数日抱え込んでいた不安を解消するかの如く、何度も——だ。
気を張っていた野原は、眠り込んでしまった。実家に帰っていても、そう寝ていなかったのかもしれない。離れている間、野原がどんな思いで暮らしてきたのか分からないが、彼もきっと、心痛めてくれていたのだろうか?
寝入っている野原をベッドに残し、そのまま職場に連絡を入れた。定時過ぎてしまった。
——誰か残っているのだろうか?
正直今更という気持ちになるが、野原のことを考えると、一応念のために連絡を入れておいたほうがいいと思ったのだった。
『はい、文化課の篠崎です』
あいにく、電話口に出た人間は篠崎だった。槇はバツが悪くなったが、仕方がないとあきらめた。
「槇だ。昼間は大変失礼をいたしました。野原は体調が悪く、早退させました。緊急でしたので、申し訳ない。事後報告になってしまって……」
電話口の篠崎は心配そうな声色だった。
『課長のお加減はいかがでしょうか? 私のお弁当で体調を崩されたのではないかと心配しておりました』
——そうだった。この女。弁当で雪を誘惑しようとしていた。
槇は嫉妬心を燃え上がらせたが、彼女は淡々としていた。
『野原課長の件はすべて処理済です。早退する旨を局長にもお伝えしておきました。その件はご安心ください。それよりもお大事になさってください。槇さん』
——あの昼間のランチ女か。総務係長の篠崎。抜け目がない。やはり侮れない。
正直、彼女の機転のおかげで大事にならなかったのだ。感謝しなければならないはずだが、槇は素直に喜べなかった。
——女性の抜け目なさは侮れないのだ。要注意。
人事権はないが、本気を出せば、それなりに圧力をかけられるはずだ。
——あの女。雪に手を出したらただじゃすまないぞ。
槇はそんな嫉妬心を丸出しにした。
しかし意外だ。野原は、生まれてこの方、女性に興味を示したことがなかったのに、まさか、ここにきて女性の手を握るだなんて。
——起きたら問い詰めないと。
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