毒親育ちのトラウマ集

本当に何も出来ないんだね 〜聞こえない〜

～聞こえない～
私達の学年全員で体育館のステージで発表をすることになった。
係の子が1人ずつ短いセリフを言っていき、最後に歌を歌って終わる。
そんな発表だった。
私はセリフを言う係になり、いつも以上に緊張してリハーサルをしていた。
ほかのクラスの子がセリフを言うと、
「もっと、大きな声で言いなさい！」
普段怒らなそうな、しかもそのセリフを言った子の担任ではない先生がそう言った。
その後すぐに私の担任の先生も「聞こえない！｣と、それを聞いて更に気を引き締めた。
私の番の時は特に何も言われずに、リハーサルは終わった。
ほっとしたのもつかの間、終わったあとすぐに担任の先生に「聞こえなかった」と言われ、もっと大きな声で言わないとダメなんだと痛感した。
その後セリフを言う子だけ、残って練習をした。
頭の中が聞こえなかったでグルグルしていた。
そして私の番、さっきよりも大きな声で言った。
私が言った時だけ周りの子達が、ビクッとしたり、うるせえと小さく言われ、嫌な顔までされた。
あとから聞いた話だと、私の声だけ体育館から50メートルほどある保健室まで聞こえていたらしい。
恥ずかしかったが、これなら大丈夫と嬉しくなった。
練習が終わったあと、さっき怒っていたほかのクラスの先生から「声の大きさはいいからもう少しゆっくり話してね」
と言われて更に嬉しくなった。
そしてまた別の日にリハーサルがあった。
私は言われた通り大きく、ゆっくり話した。
リハーサルが終わったあとまた担任の先生が私のところに来て、
「声まだ小さいから前の子と場所変わって」
子供一人分、前に出たところで聞こえる声の大きさに変わりはあるのだろうか？
小さいと言われたのは先生からだけだった。
先生にだけは聞こえない。