素直になれなくて

結婚

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結婚当初。



式も無事に終わり、私は新居に足を踏み入れた。

ここへ来るのは今日が初めてだった。

本当にいきなりの結婚だったから。



本当に結婚したんだな…。

なんだかいろいろな手続きや挨拶などがあり、日々は慌ただしく過ぎていって、籍はいれてあるといっても結婚したなんて現実味がなかった。


でもやっとそれも落ち着き、ここでこうやって吉哉さんといると、だんだんとこれは現実なんだと実感してくる。


ボスッ

吉哉さんがソファに腰を下ろす。


ビクッ

なんてことない吉哉さんの一挙一動に私の神経は集中する。


だって今日は初夜だし…。

いくらお互い好きで結婚したんじゃないからって言ったって、『それ』はあるよね…？


結婚したんだし。

これからずっと一緒にいるわけだし。

吉哉さんだって男だし。

子供だっていたほうがきっといいだろうし………。


でもどうやってその流れを作ればいいかわからない。

私は男性経験もあまり多くないし。

…というか、ない？


高校の途中で借金ができた私は、最後まで通うことが出来ずに中退。

当時つきあっていた彼ともそこで終了。

あとはひたすら働き詰めだった。

なのでそっちの経験はない。



チラッと吉哉さんを盗み見る。

疲れているみたいで、目をつむったままソファから動く気配がない。

本当に今日『する』のだろうか？


だいたい、私は吉哉さんのことをあまり知らない。

吉哉さんはなんで私を選んだんだろう？