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第二十九話・元婚約者セドリック
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翌朝、旅の疲れが出たのと久しぶりに自分のベッドだったからか、目が覚めたのはかなり遅い時間。神殿にいたら朝の参拝の時刻をとっくに過ぎていて慌てたところだが、ここではそんなことは気にしなくていい。
そして、中庭の方からジェシー兄様が誰かと言い争っている声が聞こえた気がして窓から顔を覗かせる。
「セドリック……?」
朝の鍛錬を終えたばかりという格好の兄様が、私の元婚約者を追い返すべく背を押して門へと促しているように見えた。距離もあってはっきりとは聞こえないけれど、こちらを何度も振り返りながらセドリックが私の名を口にしているのは分かった。
「昨日、アイラの侍女を見かけたんだ! だからもう帰ってるんだろう⁉」
「例え帰っていたとして、もう君には関係のない話だっ! 自分がうちの妹にしたことを覚えていないのかっ⁉」
二人の騒ぎに神殿から付いて来てくれた護衛騎士達まで出てきて、セドリックのことを取り囲み始める。多分、私の名を何度も呼ぶから反応してくれたのだろう。セドリックは初めて見る体格の良い騎士達にちょっと慄いているように見えた。この人数には勝てないと思ったのかは分からないが、セドリックが肩を落とし抗うのを止めたのは何となく分かった。それに対し兄様が何か静かに声を掛け、彼は了承したように頷き返している。
「何なのかしら……?」
二階の自室からではどういうやり取りがされたのかまでは知ることができない。私は首を傾げつつ、遅い朝食を取るために食堂へと向かった。
「おはよう、アイラ。セドリックがまた訪ねてきて、どうしても話を聞いて欲しいって言ってたから夕方に少し時間を空けてくれるかい?」
「ハァ⁉」
私がのんびりとパンをちぎって口に入れていると、さっと湯浴みを済ませて来たらしい兄様が食堂へと顔を出した。そして、おそらくはさっきの騒動の流れからだろうが、悪びれもせずに私の予定にセドリックを組み込んでくる。
「今更、私は話すことなんてないわ……」
「まあ、そうだとは思ったけどね。でも、あいつの顔を見て文句を直接言えるのはこれが最後だろうし、適当に罵倒でもしてやったらいいよ」
彼が大人しく私に罵られているとは思えない。だから私は午後から会う約束をしていた級友達をそのままディナーにお誘いすることにする。卒業パーティー以来だったナーシャとエミリアは私の提案を喜んで受けてくれた。
お茶を飲みながら二人へと私の身に起こったことを掻い摘んで話せば、ナーシャ達は驚きで目をパチクリさせた後、黄色い声を上げた。
「素敵ねー、世界樹の下で王子様との出会いだなんて」
「王都観光の際には必ず会いに行かせていただくわね、友人が向こうにいるだなんて頼もしいわ」
王都での生活も王子様も私達にとって物語の世界でしかなかったのだから当然だ。私だって自分のことじゃなかったらキャーキャー言って盛り上がっていただろう。
「だったら尚更、セドリックは何しに来るのって感じよね?」
「そうなの。婚約解消は向こうから言い出したことなのに、何の用事で来るのかさっぱりで……なのに、兄が勝手に約束したみたいで困っているの」
「ま、いいわ。卒業パーティーの時は何も言ってやれなかったんだから、ガツンと言ってやりましょう!」
ナーシャの心強い言葉に、私とエミリアは揃って噴き出してしまう。卒業後には街中にある幼子向けの学舎で教師として働き始めたナーシャ。毎日のように理屈の通らない悪ガキ達を相手にしているせいだろうか、すっかり逞しくなっている。
兄が約束した時間ぴったりに玄関前の呼び鈴を鳴らしたセドリックは、我が家の一階ホールに設置された大型のソファーの真ん中で縮こまるように座って待っていた。侍従に呼ばれて下の階へ降りていった私達三人は、彼の前に並んで腰を下ろすとセドリックへと真顔で訊ねる。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「私達、あなたが皆の前で行った仕打ちを忘れたわけじゃないのですが?」
「ああ、どの面下げてって、こういう時に使う言葉なのね。初めて理解できたわ」
セドリックはナーシャ達まで居るとは思ってなかったから、驚きと同時に委縮してしまっていて、私達とは目を合わせないように下を向いていた。朝の中庭での剣幕はどうしたのだろうか? 念の為にと近くに護衛騎士を待機させていたが、出番は無さそうだ。
「辺境の親戚のところへ行くんですってね?」
あまりにも会話が進まないのに業を煮やして私が話題を振ると、セドリックは水を得た魚のように「そうなんだよ!」と顔を上げた。
「一年の半分近くを雪で埋もれているようなところなんだ。そんなところへ行かなくていいよう、アイラがうちの親に話をしてくれないか? 君が一言、許すと言ってくれたらきっと父だって……」
セドリックの口から発せられた身勝手な言葉に、私達は揃って「ハァ⁉」と呆れ声を出す。エミリアは元々よく笑う子だったけれど、大きなツボにでもハマってしまったらしく手を叩いて笑い始める。
「それを言うことで私には何かメリットはあるのかしら?」
「メリットって……?」
「あなたのお家に伺って、あなたのお父様と話して欲しいってことでしょう? そんな手間をかけることで私が得られるものは何?」
例えば、パトリック様は私と婚約することで彼は神殿の後ろ盾が得られ、私は神殿での退屈な生涯から逃れられると言ってきた。それと同じように交渉事には相互メリットがあって当然だという私のことをセドリックはキョトン顔で見ている。
「俺達、婚約解消したって友達には変わりないだろう? 友達が困っていたら助けたいとは思わないのか?」
「え……私、これまであなたのことを友達だと思ったこと、一度もないんだけど」
彼はあくまでも親が決めた政略結婚の相手だった人だ。ずっとそれ以上でもなかったし、婚約が無くなった今は大幅にそれ以下だ。私の言葉に、セドリックは見る見る内に顔色を失っていった。
そして、中庭の方からジェシー兄様が誰かと言い争っている声が聞こえた気がして窓から顔を覗かせる。
「セドリック……?」
朝の鍛錬を終えたばかりという格好の兄様が、私の元婚約者を追い返すべく背を押して門へと促しているように見えた。距離もあってはっきりとは聞こえないけれど、こちらを何度も振り返りながらセドリックが私の名を口にしているのは分かった。
「昨日、アイラの侍女を見かけたんだ! だからもう帰ってるんだろう⁉」
「例え帰っていたとして、もう君には関係のない話だっ! 自分がうちの妹にしたことを覚えていないのかっ⁉」
二人の騒ぎに神殿から付いて来てくれた護衛騎士達まで出てきて、セドリックのことを取り囲み始める。多分、私の名を何度も呼ぶから反応してくれたのだろう。セドリックは初めて見る体格の良い騎士達にちょっと慄いているように見えた。この人数には勝てないと思ったのかは分からないが、セドリックが肩を落とし抗うのを止めたのは何となく分かった。それに対し兄様が何か静かに声を掛け、彼は了承したように頷き返している。
「何なのかしら……?」
二階の自室からではどういうやり取りがされたのかまでは知ることができない。私は首を傾げつつ、遅い朝食を取るために食堂へと向かった。
「おはよう、アイラ。セドリックがまた訪ねてきて、どうしても話を聞いて欲しいって言ってたから夕方に少し時間を空けてくれるかい?」
「ハァ⁉」
私がのんびりとパンをちぎって口に入れていると、さっと湯浴みを済ませて来たらしい兄様が食堂へと顔を出した。そして、おそらくはさっきの騒動の流れからだろうが、悪びれもせずに私の予定にセドリックを組み込んでくる。
「今更、私は話すことなんてないわ……」
「まあ、そうだとは思ったけどね。でも、あいつの顔を見て文句を直接言えるのはこれが最後だろうし、適当に罵倒でもしてやったらいいよ」
彼が大人しく私に罵られているとは思えない。だから私は午後から会う約束をしていた級友達をそのままディナーにお誘いすることにする。卒業パーティー以来だったナーシャとエミリアは私の提案を喜んで受けてくれた。
お茶を飲みながら二人へと私の身に起こったことを掻い摘んで話せば、ナーシャ達は驚きで目をパチクリさせた後、黄色い声を上げた。
「素敵ねー、世界樹の下で王子様との出会いだなんて」
「王都観光の際には必ず会いに行かせていただくわね、友人が向こうにいるだなんて頼もしいわ」
王都での生活も王子様も私達にとって物語の世界でしかなかったのだから当然だ。私だって自分のことじゃなかったらキャーキャー言って盛り上がっていただろう。
「だったら尚更、セドリックは何しに来るのって感じよね?」
「そうなの。婚約解消は向こうから言い出したことなのに、何の用事で来るのかさっぱりで……なのに、兄が勝手に約束したみたいで困っているの」
「ま、いいわ。卒業パーティーの時は何も言ってやれなかったんだから、ガツンと言ってやりましょう!」
ナーシャの心強い言葉に、私とエミリアは揃って噴き出してしまう。卒業後には街中にある幼子向けの学舎で教師として働き始めたナーシャ。毎日のように理屈の通らない悪ガキ達を相手にしているせいだろうか、すっかり逞しくなっている。
兄が約束した時間ぴったりに玄関前の呼び鈴を鳴らしたセドリックは、我が家の一階ホールに設置された大型のソファーの真ん中で縮こまるように座って待っていた。侍従に呼ばれて下の階へ降りていった私達三人は、彼の前に並んで腰を下ろすとセドリックへと真顔で訊ねる。
「今日はどういったご用件でしょうか?」
「私達、あなたが皆の前で行った仕打ちを忘れたわけじゃないのですが?」
「ああ、どの面下げてって、こういう時に使う言葉なのね。初めて理解できたわ」
セドリックはナーシャ達まで居るとは思ってなかったから、驚きと同時に委縮してしまっていて、私達とは目を合わせないように下を向いていた。朝の中庭での剣幕はどうしたのだろうか? 念の為にと近くに護衛騎士を待機させていたが、出番は無さそうだ。
「辺境の親戚のところへ行くんですってね?」
あまりにも会話が進まないのに業を煮やして私が話題を振ると、セドリックは水を得た魚のように「そうなんだよ!」と顔を上げた。
「一年の半分近くを雪で埋もれているようなところなんだ。そんなところへ行かなくていいよう、アイラがうちの親に話をしてくれないか? 君が一言、許すと言ってくれたらきっと父だって……」
セドリックの口から発せられた身勝手な言葉に、私達は揃って「ハァ⁉」と呆れ声を出す。エミリアは元々よく笑う子だったけれど、大きなツボにでもハマってしまったらしく手を叩いて笑い始める。
「それを言うことで私には何かメリットはあるのかしら?」
「メリットって……?」
「あなたのお家に伺って、あなたのお父様と話して欲しいってことでしょう? そんな手間をかけることで私が得られるものは何?」
例えば、パトリック様は私と婚約することで彼は神殿の後ろ盾が得られ、私は神殿での退屈な生涯から逃れられると言ってきた。それと同じように交渉事には相互メリットがあって当然だという私のことをセドリックはキョトン顔で見ている。
「俺達、婚約解消したって友達には変わりないだろう? 友達が困っていたら助けたいとは思わないのか?」
「え……私、これまであなたのことを友達だと思ったこと、一度もないんだけど」
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