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絵画のような人魚ー11ー
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第11話
鮎川みゆきは人の動きを予想できるのか、人波をサーフィンするみたいにすり抜けて行く。まるで人の動きに逆らわずに歩いているようだ。
僕と言えば、彼女の後をついて行くのに精一杯である。波を掻き分けるように進んで行った。ようやく彼女に追いつくと、僕は息を切らしながら彼女の名前を呼んだ!!
「鮎川さん、ちょっと待ってよ!!どこまで行くの!?」
廊下を通り抜けて、早足の彼女は呼びかけに立ち止まると、ある教室の前で僕を待った。息を吐いて、彼女が立ち止まる教室を見上げる。扉の上に【アトリエルーム】と書かれたプレートが貼ってあった。
ここは確か、学校の案内板に絵を描いたり、出展するアート作品を創作する教室だったような記憶をしていた。
「ここは自由に利用していい教室なの。あらゆる画材道具だったり、見本となる絵画がたくさん展示しているのよ」と彼女は楽しそうに説明する。すると教室の扉を開けて中へと入って行った。
僕も続いて中に入ると、教室に漂う絵の具の匂いに驚いた。本格的なアトリエはこんなにも絵の具の匂いがするのか。額材の独特な匂いが空気中を占領しているみたいだ。
「鮎川さん、ここに来た理由は?」と画材道具を隅々まで食い入るように眺める彼女へ聞いた。
「何って、春巻先生が出した課題を考えるためよ。四季くんはどんな絵を描くか頭に想像してる?」
今日の今日で出された課題に考えが浮かぶわけない。そもそもどんな絵を描こうかなんて思いもしてなかったし……
「その顔は考えてないな?図星でしょう」と彼女がニッコリ笑いながら言う。
「三ヶ月なんてあっという間だよ。今から自分が描きたい絵をイメージしとかないと。それとも自信があるの?」
「いや、自信があるとかじゃないけど、今日の今日でイメージなんて湧かないよ」と僕は正直に言った。
すると彼女は教室のカーテンを開けて、教室内へ光を通した。射し込む光が描きかけの絵を鮮やかな色彩から半透明な色合いへと変化させた。まさに春巻先生が言っていた、色の化学反応なのかもしれない。太陽の光によって生み出された新たなる色彩。そんな光景に僕は幻想的な気分にさせられた。
光にだって色があるのだろうか?心の中で思いながら、僕の目の前で光に包まれる彼女の姿を見て、自然と目を奪われた。
「四季くんが描く絵の世界を見てみたいわ。私が感じる世界とあなたが感じる世界、一体何が違っているのかしら……ってね」
彼女の言葉は芸術的で、自然な発想は僕とは違う色合いを持っていた。そんな彼女に対して、僕はなんと答えれば良かったのだろう。
「ねえ、今度時間があったら一緒に課題をやろうね」とボケっとしたまま立つ僕へ言う。
それだけ伝えなかったのか、彼女は友達を待たせているからと言って、アトリエから僕を残して教室から立ち去った……
狐に騙されたように、僕は一人アトリエに残された。彼女が開けたカーテンを閉めようと窓際に歩いた時、彼女の言葉が今になって蘇ってくるのだった。『一緒に課題をやろうねーー』と……
そんな誘いに、僕は自然と頭の中で何を描くかを考えるのだった。
鮎川みゆきは人の動きを予想できるのか、人波をサーフィンするみたいにすり抜けて行く。まるで人の動きに逆らわずに歩いているようだ。
僕と言えば、彼女の後をついて行くのに精一杯である。波を掻き分けるように進んで行った。ようやく彼女に追いつくと、僕は息を切らしながら彼女の名前を呼んだ!!
「鮎川さん、ちょっと待ってよ!!どこまで行くの!?」
廊下を通り抜けて、早足の彼女は呼びかけに立ち止まると、ある教室の前で僕を待った。息を吐いて、彼女が立ち止まる教室を見上げる。扉の上に【アトリエルーム】と書かれたプレートが貼ってあった。
ここは確か、学校の案内板に絵を描いたり、出展するアート作品を創作する教室だったような記憶をしていた。
「ここは自由に利用していい教室なの。あらゆる画材道具だったり、見本となる絵画がたくさん展示しているのよ」と彼女は楽しそうに説明する。すると教室の扉を開けて中へと入って行った。
僕も続いて中に入ると、教室に漂う絵の具の匂いに驚いた。本格的なアトリエはこんなにも絵の具の匂いがするのか。額材の独特な匂いが空気中を占領しているみたいだ。
「鮎川さん、ここに来た理由は?」と画材道具を隅々まで食い入るように眺める彼女へ聞いた。
「何って、春巻先生が出した課題を考えるためよ。四季くんはどんな絵を描くか頭に想像してる?」
今日の今日で出された課題に考えが浮かぶわけない。そもそもどんな絵を描こうかなんて思いもしてなかったし……
「その顔は考えてないな?図星でしょう」と彼女がニッコリ笑いながら言う。
「三ヶ月なんてあっという間だよ。今から自分が描きたい絵をイメージしとかないと。それとも自信があるの?」
「いや、自信があるとかじゃないけど、今日の今日でイメージなんて湧かないよ」と僕は正直に言った。
すると彼女は教室のカーテンを開けて、教室内へ光を通した。射し込む光が描きかけの絵を鮮やかな色彩から半透明な色合いへと変化させた。まさに春巻先生が言っていた、色の化学反応なのかもしれない。太陽の光によって生み出された新たなる色彩。そんな光景に僕は幻想的な気分にさせられた。
光にだって色があるのだろうか?心の中で思いながら、僕の目の前で光に包まれる彼女の姿を見て、自然と目を奪われた。
「四季くんが描く絵の世界を見てみたいわ。私が感じる世界とあなたが感じる世界、一体何が違っているのかしら……ってね」
彼女の言葉は芸術的で、自然な発想は僕とは違う色合いを持っていた。そんな彼女に対して、僕はなんと答えれば良かったのだろう。
「ねえ、今度時間があったら一緒に課題をやろうね」とボケっとしたまま立つ僕へ言う。
それだけ伝えなかったのか、彼女は友達を待たせているからと言って、アトリエから僕を残して教室から立ち去った……
狐に騙されたように、僕は一人アトリエに残された。彼女が開けたカーテンを閉めようと窓際に歩いた時、彼女の言葉が今になって蘇ってくるのだった。『一緒に課題をやろうねーー』と……
そんな誘いに、僕は自然と頭の中で何を描くかを考えるのだった。
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