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絵画のような人魚ー25ー
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第25話
翌朝、早朝の時間帯を狙って女子寮を抜け出した。裏口から男子寮へ回ると、朝6時には玄関が開いていたので慎重に辺りを警戒して、無事に男子寮へと戻った。
幸いにも入口に寮長の姿は無く、静かなフロアーを横切り、部屋に繋がる階段を駆け上がった。途中、女子寮の見える窓から外を眺めると、なんと彼女がパジャマ姿のまま、こっちを見ていた。僕が無事に戻れたかを確認したかったんだろう。手を振って合図を送ると、彼女に向かって『電話するね』と口を動かした。彼女は頷いて笑顔を見せながら手を振り返した。なんとも微笑ましい光景だった。
部屋の前に着くと、僕は静かに扉を開けた。緑郎に何て説明をすれば良いのか考えていたが、大の字で寝ている緑郎を見てホッとした。どうやら部屋に戻って、そのまま眠ってしまったようだ。そう言えば食事会の時、あいつだけ結構飲んでいたのを思い出す。結果的に助かった。正直なところ、あれこれ聞かれるのも困ったからだ。
寝不足だったのもあったけど、少し冷静になりたかったので、僕は行きそびれたお風呂へ向かった。静かな廊下を一人で歩いていると、誰かが一階から上がって来る足音が聞こえてきた。こんな朝早くに誰だろう?僕は少し歩くスピードを緩めて、一階から上がってくる人物を確認しようとした。すると目の前に……
「秋人!!」
「あれ、四季じゃん!!こんな朝早くに何してんの?」
秋人の返しに、その台詞は僕も一緒だと思いながら、昨日入りそびれた風呂へ行くと説明した。すると秋人も付き合うと言い出して、部屋に着替えを取りに行った。内心、風子のマンションで入らなかったのか?と思った。そして秋人には、鮎川さんと付き合うことになったことを言うべきか悩むのだった。
お風呂場に着くと服を脱いで、僕らは大浴場へ入った。もちろんこんな朝早くからお風呂に入るような学生はいない。僕と秋人は並んで座るとシャワーを捻って、身体を洗い始めた。
「秋人、もしかしてだけど風子と付き合うの?」
「それは幼馴染として心配だから?それとも気になるのか?」
「気にしてないよ。あいつとは腐れ縁だし、でも一様、幼馴染だから本気で付き合うのか思っただけ」
「そっか……」と秋人はそれだけ言って、湯船に向かって身体をゆっくりと沈めた。僕も同じように身体を洗い流して、少し離れた距離で浸かった。
「風子って気が強いな」と秋人が天井を見上げながら言う。
「やっぱ気づいたんだ。あいつ、秋人の前では女らしく振る舞っていたけど、いつかボロが出て素を見せると思ってたんだ」
僕の言葉に、秋人は納得した表情で頷いた。そして手のひらでお湯をすくって顔にかけた。フゥーと息を吐いて、秋人は僕に向かって……
「真剣に付き合うことにした。俺、正直言って、高校生の頃はいろんな女と遊んでた。でも、あんなに強い女は初めて出会ったよ」
秋人の女遍歴が凄かったのは容易に想像ができた。そんな秋人さえ、風子の性格と今までに出会ったことのない衝撃を受けたのだろう。これまでの人生で、女が従わないことなんてなかったはずだ。そんな秋人の前に現れた自分勝手な女(ちょっと言い過ぎたかもしれない)
つまり風子みたいなタイプは初めてだったんだ。逆にそれが秋人は魅力的に感じて、真剣に付き合うと思ったのだろう。
「でもさ、あいつ胸ないよな!!」と秋人が笑いながら言う。それを聞いて、高校の時のアクシデントで見てしまった胸を思い出すのだった。
「そういや四季、お前、純奈のことどう思ってる?」
「なんだよ、いきなり!?」
「いや、あの子、かなりお前に惚れてるぜ。俺に色々聞いてくるんだ。四季の趣味とか好きなものは何だとか。ああいうタイプは想いが強いから気をつけろ」
「脅かすなよ!!僕は別に何とも思ってないし」
「だったら俺から忠告な。ああいうタイプには、それらしい素振りは見せないこと。四季は誰にも優しいタイプだから、ドツボにハマったら大変だぞ。友達として言っとく」秋人はそう言うと湯船から上がった。
「でもさ、あの巨乳は拝む価値あるよな」と半分冗談に聞こえない。だが秋人の忠告は正解かもしれない。気をつけなきゃ……
何故なら僕には彼女がいる。鮎川みゆきという女性と付き合ったばかりだ。真壁純奈が動き出す前に、タイミング良く皆の前で言わないといけない。
だけど今はそんなことより、一刻も早く彼女と会いたかった。それぐらい僕は彼女に夢中だったから。
翌朝、早朝の時間帯を狙って女子寮を抜け出した。裏口から男子寮へ回ると、朝6時には玄関が開いていたので慎重に辺りを警戒して、無事に男子寮へと戻った。
幸いにも入口に寮長の姿は無く、静かなフロアーを横切り、部屋に繋がる階段を駆け上がった。途中、女子寮の見える窓から外を眺めると、なんと彼女がパジャマ姿のまま、こっちを見ていた。僕が無事に戻れたかを確認したかったんだろう。手を振って合図を送ると、彼女に向かって『電話するね』と口を動かした。彼女は頷いて笑顔を見せながら手を振り返した。なんとも微笑ましい光景だった。
部屋の前に着くと、僕は静かに扉を開けた。緑郎に何て説明をすれば良いのか考えていたが、大の字で寝ている緑郎を見てホッとした。どうやら部屋に戻って、そのまま眠ってしまったようだ。そう言えば食事会の時、あいつだけ結構飲んでいたのを思い出す。結果的に助かった。正直なところ、あれこれ聞かれるのも困ったからだ。
寝不足だったのもあったけど、少し冷静になりたかったので、僕は行きそびれたお風呂へ向かった。静かな廊下を一人で歩いていると、誰かが一階から上がって来る足音が聞こえてきた。こんな朝早くに誰だろう?僕は少し歩くスピードを緩めて、一階から上がってくる人物を確認しようとした。すると目の前に……
「秋人!!」
「あれ、四季じゃん!!こんな朝早くに何してんの?」
秋人の返しに、その台詞は僕も一緒だと思いながら、昨日入りそびれた風呂へ行くと説明した。すると秋人も付き合うと言い出して、部屋に着替えを取りに行った。内心、風子のマンションで入らなかったのか?と思った。そして秋人には、鮎川さんと付き合うことになったことを言うべきか悩むのだった。
お風呂場に着くと服を脱いで、僕らは大浴場へ入った。もちろんこんな朝早くからお風呂に入るような学生はいない。僕と秋人は並んで座るとシャワーを捻って、身体を洗い始めた。
「秋人、もしかしてだけど風子と付き合うの?」
「それは幼馴染として心配だから?それとも気になるのか?」
「気にしてないよ。あいつとは腐れ縁だし、でも一様、幼馴染だから本気で付き合うのか思っただけ」
「そっか……」と秋人はそれだけ言って、湯船に向かって身体をゆっくりと沈めた。僕も同じように身体を洗い流して、少し離れた距離で浸かった。
「風子って気が強いな」と秋人が天井を見上げながら言う。
「やっぱ気づいたんだ。あいつ、秋人の前では女らしく振る舞っていたけど、いつかボロが出て素を見せると思ってたんだ」
僕の言葉に、秋人は納得した表情で頷いた。そして手のひらでお湯をすくって顔にかけた。フゥーと息を吐いて、秋人は僕に向かって……
「真剣に付き合うことにした。俺、正直言って、高校生の頃はいろんな女と遊んでた。でも、あんなに強い女は初めて出会ったよ」
秋人の女遍歴が凄かったのは容易に想像ができた。そんな秋人さえ、風子の性格と今までに出会ったことのない衝撃を受けたのだろう。これまでの人生で、女が従わないことなんてなかったはずだ。そんな秋人の前に現れた自分勝手な女(ちょっと言い過ぎたかもしれない)
つまり風子みたいなタイプは初めてだったんだ。逆にそれが秋人は魅力的に感じて、真剣に付き合うと思ったのだろう。
「でもさ、あいつ胸ないよな!!」と秋人が笑いながら言う。それを聞いて、高校の時のアクシデントで見てしまった胸を思い出すのだった。
「そういや四季、お前、純奈のことどう思ってる?」
「なんだよ、いきなり!?」
「いや、あの子、かなりお前に惚れてるぜ。俺に色々聞いてくるんだ。四季の趣味とか好きなものは何だとか。ああいうタイプは想いが強いから気をつけろ」
「脅かすなよ!!僕は別に何とも思ってないし」
「だったら俺から忠告な。ああいうタイプには、それらしい素振りは見せないこと。四季は誰にも優しいタイプだから、ドツボにハマったら大変だぞ。友達として言っとく」秋人はそう言うと湯船から上がった。
「でもさ、あの巨乳は拝む価値あるよな」と半分冗談に聞こえない。だが秋人の忠告は正解かもしれない。気をつけなきゃ……
何故なら僕には彼女がいる。鮎川みゆきという女性と付き合ったばかりだ。真壁純奈が動き出す前に、タイミング良く皆の前で言わないといけない。
だけど今はそんなことより、一刻も早く彼女と会いたかった。それぐらい僕は彼女に夢中だったから。
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