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絵画のような人魚ー30ー
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第30話
緩やかな坂道を久しぶりに風子と並んで歩いた。課題の絵がイマイチ描けない僕は、デッサンをやめて大学を後した。
緑郎は創作意欲がのってきたのか、もう少し描いていくと言うので、僕と風子は先に上がらせてもらった。
そのまま風子と一緒に帰ることになったのだ。
春の風が優しく吹く中、僕の心に穏やかな風は吹いていなかった。胸に空いた無色の心に風が素通りしているようだった。
「何よ、暗い顔して、そんなに絵が描けないことがショックなの?」
「いや、ショックというかイメージが湧かない自分に腹が立つんだ」僕が言いたかったのは、自分の色が上手くイメージとして出てこないからだ。緑郎のように自然と湧いてこない。変に意識すると、余計な考えが浮かんで心が黒くなる。
「そんなに思い詰めたら、余計に描けなくなるわよ。四季は昔からスマートに物事を考えない悪い癖があるから」
「天才じゃないから、自分は平凡な塊なんだよ。これと言って特技もないし……」幼馴染の風子の前なのか、思わず卑屈になってしまう。
「あの時と一緒ね。すぐにそうやって殻に閉じ込めようとする」と風子が僕の袖を掴んで言ってきた。
「……ごめん。心配させた?」
首を横に振って、風子は口許に笑みを浮かべた。
「心配はしてないよ。でも初めから何でも上手くやろうなんて思わない方がいいよ。まずは誰かの真似でもいいと思う。影響された人の色を素直に見てみたら……」
励まされたのか、風子は楽観的な考えを言ってくれたのか、僕は少しだけ楽な気持ちになったのは確かだった。
「話しは変わるんだけど、私、秋人と付き合ってるの」
「なんだよ、唐突だな!!知ってるよ、秋人から聞いた」
「アイツ話したんだ!!意外!?私と付き合ってること内緒にすると思ってた」
「それだけ真剣なんだろう。秋人はいいやつだよ」僕の言葉に、照れた表情を浮かべる風子に驚いた。女っぽいところもあるんだなと……
「四季は好きな子とか居ないの?」
すぐ頭に浮かんだのは、みゆきの顔だった。風子には話そうと思った。一様、元気付けられた感謝もあったし
「あのさ、まだ黙っていて欲しいんだけど、おれ、鮎川さんと付き合ってる。それも昨日から……まだ誰にも言ってない」
「嘘!!ホントに!?信じられない……みゆきちゃんと、いつの間にそんな事になってんのよ!!」と風子が目を丸くして驚いている。だから僕はすぐ様、「お前だって秋人と付き合ってるのだろう」
「そうだけど……まあ、みゆきちゃん可愛いし、四季とはお似合いかな?」
「かなって何だよ。意味深な言い方だな」
「ううん、気にしないで。まあ、四季に彼女ができたことに、少しは安心したよ」まるで親心のように言う風子。でも、この事を話せてずいぶんと気持ちは楽になった。
それから風子はマンションへ、そして僕は寮へと帰るのだった。
緩やかな坂道を久しぶりに風子と並んで歩いた。課題の絵がイマイチ描けない僕は、デッサンをやめて大学を後した。
緑郎は創作意欲がのってきたのか、もう少し描いていくと言うので、僕と風子は先に上がらせてもらった。
そのまま風子と一緒に帰ることになったのだ。
春の風が優しく吹く中、僕の心に穏やかな風は吹いていなかった。胸に空いた無色の心に風が素通りしているようだった。
「何よ、暗い顔して、そんなに絵が描けないことがショックなの?」
「いや、ショックというかイメージが湧かない自分に腹が立つんだ」僕が言いたかったのは、自分の色が上手くイメージとして出てこないからだ。緑郎のように自然と湧いてこない。変に意識すると、余計な考えが浮かんで心が黒くなる。
「そんなに思い詰めたら、余計に描けなくなるわよ。四季は昔からスマートに物事を考えない悪い癖があるから」
「天才じゃないから、自分は平凡な塊なんだよ。これと言って特技もないし……」幼馴染の風子の前なのか、思わず卑屈になってしまう。
「あの時と一緒ね。すぐにそうやって殻に閉じ込めようとする」と風子が僕の袖を掴んで言ってきた。
「……ごめん。心配させた?」
首を横に振って、風子は口許に笑みを浮かべた。
「心配はしてないよ。でも初めから何でも上手くやろうなんて思わない方がいいよ。まずは誰かの真似でもいいと思う。影響された人の色を素直に見てみたら……」
励まされたのか、風子は楽観的な考えを言ってくれたのか、僕は少しだけ楽な気持ちになったのは確かだった。
「話しは変わるんだけど、私、秋人と付き合ってるの」
「なんだよ、唐突だな!!知ってるよ、秋人から聞いた」
「アイツ話したんだ!!意外!?私と付き合ってること内緒にすると思ってた」
「それだけ真剣なんだろう。秋人はいいやつだよ」僕の言葉に、照れた表情を浮かべる風子に驚いた。女っぽいところもあるんだなと……
「四季は好きな子とか居ないの?」
すぐ頭に浮かんだのは、みゆきの顔だった。風子には話そうと思った。一様、元気付けられた感謝もあったし
「あのさ、まだ黙っていて欲しいんだけど、おれ、鮎川さんと付き合ってる。それも昨日から……まだ誰にも言ってない」
「嘘!!ホントに!?信じられない……みゆきちゃんと、いつの間にそんな事になってんのよ!!」と風子が目を丸くして驚いている。だから僕はすぐ様、「お前だって秋人と付き合ってるのだろう」
「そうだけど……まあ、みゆきちゃん可愛いし、四季とはお似合いかな?」
「かなって何だよ。意味深な言い方だな」
「ううん、気にしないで。まあ、四季に彼女ができたことに、少しは安心したよ」まるで親心のように言う風子。でも、この事を話せてずいぶんと気持ちは楽になった。
それから風子はマンションへ、そして僕は寮へと帰るのだった。
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