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絵画のような人魚ー41ー
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第41話
4月……暖かい春から夏に向けて衣替えをするのかな。
連休に入る前、大学の授業で忙しい日々を過ごしていた。世の中はゴールデンウィークが近づく中、僕は大学帰りの電車でメールを読んでいた。
みゆきからのメールで【今夜は会えない】という内容だった。なんでも遠い親戚の叔父さんが亡くなったらしい。最終の新幹線で急遽、実家の岐阜へ帰ると書かれていた。
僕は吉祥寺へ着くと、近所の本屋に立ち寄った。すっかり忘れていたアルバイトの件だ。正直なところ、家からの仕送りだけでは苦しかった。元々バイトはするつもりだったのでバイト求人雑誌を購入した。本屋から出ると、ちょうど緑郎が一人で歩いているのを目撃した。僕は早足で緑郎の背後に近づくと、肩を叩いて呼んだ。
「緑郎、一緒に帰ろうぜ」と軽く叩いたつもりなのに、緑郎がフラフラとよろけながら転びそうになる。
「何だよ!?大袈裟だな。そんなにオーバーなリアクションするなよ」
「四季くん、君は知ってたんか?」
「はっ?何が!?」と僕に背中を見せたまま、緑郎が小さな声で言うのだった。
「秋人くんや!!知ってるやろう、あの二人、いつ間にか付き合ってるんやで!!」と緑郎が振り向いた瞬間、奴の表情を見てショックが大きいとわかった。
「別にサークル内で恋愛禁止と決めてないだろう」そう言いながら、心の中で僕とみゆきは付き合っていることもあり、秋人と風子に関しては何も言えない自分がいた。
「そやけど、今度皆と集まった時、変に意識するやん。それに僕、何気に風子ちゃんのこと気に入ってたやん」
「何気に気に入るぐらいだろう。それにお前に風子は無理だよ。ああ見えて性格キツイからな。秋人だから付き合えるんだよ。お前ならもっと素敵な女の子をゲットできるさ」
僕は単純な緑郎を性格を考えて、そんな風に言うのだった。すると緑郎が……
「そやな、僕もそう思ってたんや。四季くんはようわかってるわ」とスイッチの切り替えが早い。僕の言葉ですっかり上機嫌になるのだった。
「それより先週のレポートとどうだった。みゆきとシャガールのレポートはブログに載せた?」
僕らのサークル、【アートの集い】で行っている活動だ。先週、上野美術館へ行ったことをレポートにまとめて、緑郎のブログに載せるようお願いしたのだ。これをきっかけにして、僕らは個展への道を目指していた。
「みゆきちゃんのレポートは良かったわ」緑郎はそう言ってから、しまったような表情を見せた。
「じゃあ、僕のレポートは?」と焦った顔する緑郎へ細い目をしながら詰め寄った。
とその時、「何だか楽しそうね。私も混ぜて欲しいな」と僕らの背後から誰かが声をかけてきた。
「純奈ちゃん!!ちょっと助けて、四季くんが僕をいじめるんや」
振り向くと真壁純奈が笑いながら立っていた。僕は瞬間的に目を逸らした。実はあまり会いたくなかったからだ。あの日以来、僕は一度も彼女と会っていなかった。もちろん連絡も取らなかったし、彼女からの告白に対して何て言えば良いのかわからなかったからだ。
「四季くん、あんまり緑郎くんをいじめちゃダメだよ」
こないだの事を気にしていない様子で、真壁純奈が話しかけてきた。もしかしてあれは冗談だったのか?それとも本当だったのか……
「別にいじめては……サークル活動の話しをしてただけだよ」と僕はぎこちなく返した。
「そうや!!今から久しぶりにオリーブでご飯食べようや。サークル活動の話も兼ねて。どうや?」
流れ的に断るのも変だったので、僕は二人と食事をすることにした。幸いもみゆきは実家の岐阜へ帰った。それに帰ってもバイト求人雑誌を見るぐらいだったので。
こうして緑郎と真壁純奈も入って、僕たちはオリーブへ向かうのだった。これが僕にとって、これからの道が少しずつ狂うきっかけになるのも知らずに……
4月……暖かい春から夏に向けて衣替えをするのかな。
連休に入る前、大学の授業で忙しい日々を過ごしていた。世の中はゴールデンウィークが近づく中、僕は大学帰りの電車でメールを読んでいた。
みゆきからのメールで【今夜は会えない】という内容だった。なんでも遠い親戚の叔父さんが亡くなったらしい。最終の新幹線で急遽、実家の岐阜へ帰ると書かれていた。
僕は吉祥寺へ着くと、近所の本屋に立ち寄った。すっかり忘れていたアルバイトの件だ。正直なところ、家からの仕送りだけでは苦しかった。元々バイトはするつもりだったのでバイト求人雑誌を購入した。本屋から出ると、ちょうど緑郎が一人で歩いているのを目撃した。僕は早足で緑郎の背後に近づくと、肩を叩いて呼んだ。
「緑郎、一緒に帰ろうぜ」と軽く叩いたつもりなのに、緑郎がフラフラとよろけながら転びそうになる。
「何だよ!?大袈裟だな。そんなにオーバーなリアクションするなよ」
「四季くん、君は知ってたんか?」
「はっ?何が!?」と僕に背中を見せたまま、緑郎が小さな声で言うのだった。
「秋人くんや!!知ってるやろう、あの二人、いつ間にか付き合ってるんやで!!」と緑郎が振り向いた瞬間、奴の表情を見てショックが大きいとわかった。
「別にサークル内で恋愛禁止と決めてないだろう」そう言いながら、心の中で僕とみゆきは付き合っていることもあり、秋人と風子に関しては何も言えない自分がいた。
「そやけど、今度皆と集まった時、変に意識するやん。それに僕、何気に風子ちゃんのこと気に入ってたやん」
「何気に気に入るぐらいだろう。それにお前に風子は無理だよ。ああ見えて性格キツイからな。秋人だから付き合えるんだよ。お前ならもっと素敵な女の子をゲットできるさ」
僕は単純な緑郎を性格を考えて、そんな風に言うのだった。すると緑郎が……
「そやな、僕もそう思ってたんや。四季くんはようわかってるわ」とスイッチの切り替えが早い。僕の言葉ですっかり上機嫌になるのだった。
「それより先週のレポートとどうだった。みゆきとシャガールのレポートはブログに載せた?」
僕らのサークル、【アートの集い】で行っている活動だ。先週、上野美術館へ行ったことをレポートにまとめて、緑郎のブログに載せるようお願いしたのだ。これをきっかけにして、僕らは個展への道を目指していた。
「みゆきちゃんのレポートは良かったわ」緑郎はそう言ってから、しまったような表情を見せた。
「じゃあ、僕のレポートは?」と焦った顔する緑郎へ細い目をしながら詰め寄った。
とその時、「何だか楽しそうね。私も混ぜて欲しいな」と僕らの背後から誰かが声をかけてきた。
「純奈ちゃん!!ちょっと助けて、四季くんが僕をいじめるんや」
振り向くと真壁純奈が笑いながら立っていた。僕は瞬間的に目を逸らした。実はあまり会いたくなかったからだ。あの日以来、僕は一度も彼女と会っていなかった。もちろん連絡も取らなかったし、彼女からの告白に対して何て言えば良いのかわからなかったからだ。
「四季くん、あんまり緑郎くんをいじめちゃダメだよ」
こないだの事を気にしていない様子で、真壁純奈が話しかけてきた。もしかしてあれは冗談だったのか?それとも本当だったのか……
「別にいじめては……サークル活動の話しをしてただけだよ」と僕はぎこちなく返した。
「そうや!!今から久しぶりにオリーブでご飯食べようや。サークル活動の話も兼ねて。どうや?」
流れ的に断るのも変だったので、僕は二人と食事をすることにした。幸いもみゆきは実家の岐阜へ帰った。それに帰ってもバイト求人雑誌を見るぐらいだったので。
こうして緑郎と真壁純奈も入って、僕たちはオリーブへ向かうのだった。これが僕にとって、これからの道が少しずつ狂うきっかけになるのも知らずに……
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