絵画のような人魚

葉桜色人

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絵画のような人形ー49ー

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図書館を出た時、僕は携帯電話を確認した。マナーモードにしていたので電話が掛かっているかチェックをしたのだ。予想はしていたが、真壁純奈から着信があった。昨夜の出来事があったからだろう。このまま無視することもできないので、僕は仕方なく掛け直した。


最後までいかなかったとは言え、彼女に対して肉体関係を求めようとした事は間違いない。そんな状況で無視をする行為は考えられなかった。三回コール音がして、真壁純奈が嬉しそうな声で出た。


『四季くん、良かった電話に出てくれないかと思ったよ。緑郎くんに聞いたら、授業に出ていないって聞いたから心配になっちゃって』


僕は手短にバイトの面接に行っていたと説明をした。場所はあえて言わなかったけど。あくまでも普通に対応をして、微妙な距離を図った。純奈の方は折り返し電話があった事に、心なしか安心している感じがした。


『四季くん、今から会えないかな?四季くんの顔が見たいよ』


予想通りの展開に……


「ごめん。今から風子と会う約束をしてるんだ」と一瞬だけ間を開けて話した。


「ちょっとあいつと話したい事があってさ。あっ、でも真壁さんの事じゃないから気にしないで。あくまでも僕とあいつの問題だから」こう言えば、何も言えなくなると予想はしていた。


昨日の今日だ、僕の過去を少なからず知ってしまった純奈にしたら何も言えなくなるだろう。それに僕の過去を純奈に話したのは風子だし、僕がこれから会うと言ったら何かしら感じてしまう。


『……わかった。それじゃあ、今日は無理だね』と明らかに気にしている。声のトーンが下がって、純奈の方から会いたいなんて言葉は出なかった。


僕は予め用意していた純奈への対策が、一体いつまで通用するか考えたけど、実際はそんなには保たないだろうと心の中で思った。


純奈と電話を切って、駅に向かう途中で色々な考えを模索した。現実から逃げようと必死になっている自分が、逃げれない道を選んでしまったと改めて考えてしまう。僕の中で色がぐちゃぐちゃに混ざったままだ。


解決の糸口が掴めないまま、風子のマンションへ向かう。風子と会う約束は嘘ではなかった。何しろ、僕とみゆきが付き合っている事は風子しか知らせていない。今となっては仲間たちに話すタイミングがない。だからと言って黙ったまま付き合うなんて無理な話だった。


だが、僕には考えが浮かばない。どうすればいいんだ……


つづく……
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