絵画のような人魚

葉桜色人

文字の大きさ
62 / 74

絵画のような人魚ー62ー

しおりを挟む

連休の3日間、僕は一度も寮に帰らず三葉さんの部屋に泊まっていた。毎晩彼女と寝て、毎晩彼女との生活を過ごした。

そして4日目、三葉さんは休みだったので、僕は一人で図書館へ向かった。いつも通りの朝、図書館は静けさを漂わせて朝の光を差し込めていた。

早番だったので、僕は鍵を手にして各扉を開けて準備する。この頃には、鍵の開閉も任されるようになっていた。

僕は全ての鍵を開け終わると事務所へ戻った。9時過ぎに中川さんが出勤して来るので、それまで時間を潰そうと図書館で借りた小説を取り出した。

事務所内は静けさに包まれて、ブラインドの隙間から太陽の光が少しだけ漏れていた。すると突然、後ろの扉が開いて誰かが入って来た。てっきり中川さんが早く出勤したと思ったが、振り返ると見慣れない顔に驚いた!!

いや、見慣れないと言うか、面接以来一度も会っていなかったのだ。


「あら四季くん?ずいぶん早いのね」


ヒロセさんこと、広瀬川優子さんが立っていた。まさか彼女がこのあと、僕に新たな色を与えてくれるなんて、この時は全く予想もしていなかった。


面接以来の再会に僕は慌てて立ち上がると挨拶をした。そんな僕を見つめながら、ヒロセさんは自分の席について椅子へ深々と座った。そして指先でこめかみをしばらく抑えて……


「昨夜ね、ある悩み事があったのよ。それについて私は一晩中考えたのね。そしたらやっぱり答えは出ないの。そうなって来ると、眠気はあっても寝れなくなるものよ」


ヒロセさんの話しになんて答えれば良いのかわからなかったので、僕は相槌を打ちながら、ヒロセさんの言葉を待った。


「そう言う事って無い?」

「無い事はないですが、因みに悩み事って何なんですか?」


「……結局、悩みなんて解決するには人に話さないとダメなのよ。わかるかしら四季くん?」こめかみを抑えていた指先を、今度は机に移動してリズミカルに叩いた。


トントン……トントントン……


「そう言う事なの。だから今晩、食事に行きましょう。7時に仕事を切り上げて、私の悩みを聞いて頂戴」

「えっ!?僕とですか?」と突然の展開に驚いた。


「四季くん、この部屋にあなた以外に誰かいるかしら?」


この時、僕は思い出した。面接でも思っていたが、広瀬川さんは少し変わっている人だった。確か、三葉さんもそんな事を言っていたし……


急な話しだったけど、特に予定もなかったので、僕は今晩、広瀬川さんと食事をする事になった。一体、ヒロセさんの悩み事とは……


つづく……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...