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絵画のような人魚ー62ー
しおりを挟む連休の3日間、僕は一度も寮に帰らず三葉さんの部屋に泊まっていた。毎晩彼女と寝て、毎晩彼女との生活を過ごした。
そして4日目、三葉さんは休みだったので、僕は一人で図書館へ向かった。いつも通りの朝、図書館は静けさを漂わせて朝の光を差し込めていた。
早番だったので、僕は鍵を手にして各扉を開けて準備する。この頃には、鍵の開閉も任されるようになっていた。
僕は全ての鍵を開け終わると事務所へ戻った。9時過ぎに中川さんが出勤して来るので、それまで時間を潰そうと図書館で借りた小説を取り出した。
事務所内は静けさに包まれて、ブラインドの隙間から太陽の光が少しだけ漏れていた。すると突然、後ろの扉が開いて誰かが入って来た。てっきり中川さんが早く出勤したと思ったが、振り返ると見慣れない顔に驚いた!!
いや、見慣れないと言うか、面接以来一度も会っていなかったのだ。
「あら四季くん?ずいぶん早いのね」
ヒロセさんこと、広瀬川優子さんが立っていた。まさか彼女がこのあと、僕に新たな色を与えてくれるなんて、この時は全く予想もしていなかった。
面接以来の再会に僕は慌てて立ち上がると挨拶をした。そんな僕を見つめながら、ヒロセさんは自分の席について椅子へ深々と座った。そして指先でこめかみをしばらく抑えて……
「昨夜ね、ある悩み事があったのよ。それについて私は一晩中考えたのね。そしたらやっぱり答えは出ないの。そうなって来ると、眠気はあっても寝れなくなるものよ」
ヒロセさんの話しになんて答えれば良いのかわからなかったので、僕は相槌を打ちながら、ヒロセさんの言葉を待った。
「そう言う事って無い?」
「無い事はないですが、因みに悩み事って何なんですか?」
「……結局、悩みなんて解決するには人に話さないとダメなのよ。わかるかしら四季くん?」こめかみを抑えていた指先を、今度は机に移動してリズミカルに叩いた。
トントン……トントントン……
「そう言う事なの。だから今晩、食事に行きましょう。7時に仕事を切り上げて、私の悩みを聞いて頂戴」
「えっ!?僕とですか?」と突然の展開に驚いた。
「四季くん、この部屋にあなた以外に誰かいるかしら?」
この時、僕は思い出した。面接でも思っていたが、広瀬川さんは少し変わっている人だった。確か、三葉さんもそんな事を言っていたし……
急な話しだったけど、特に予定もなかったので、僕は今晩、広瀬川さんと食事をする事になった。一体、ヒロセさんの悩み事とは……
つづく……
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