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絵画のような人魚ー66ー
しおりを挟む「上手く説明はできないけど、私の母は完璧な美しさを持った女性だったのよ。わかる?完璧な美しさよ。何しろ私の父親は母のために生きていた。そして私にも何不自由ない生活をさせてくれたの」ヒロセさんはそう言って、ワイングラスを飲み干した。
「それは黄金比率と言われる美しさなんですか?」
「違うわ。母の美しさはそれさえも超えている。彼女が導く言葉にも絶対的な美しさがあるのよ。だから父親は日本の首相にもなれたと言ってたわ」
「失礼ですけど、ヒロセさんの母親は今?」と気になった事を聞いた。
元首相は今でも政界にいる大物だが、彼が裏で政治的は力を使っているという噂は聞いていた。という事は今でもヒロセさんの母親を愛人として養っているのか知りたかったのだ。
「もちろん健在しているわ。だから私も母親もこんな暮らしができるの。じゃなきゃ、こんな贅沢な所に住めるかしら?」
「住めないと思うし、こんな高級な店の会員なんかになれませんね。でも不思議なのは美しい女性なんて、この世に何万人と居ると思います。何故、ヒロセさんの父親は……」
「それは四季くんも気付いて居るはずよ。私の指を見て感じているもの」
動揺した!!ヒロセさんの僕の見る目が、すべてを物語っていたからだ。
「さっき私の手を握った時、君は私の指に対して性的なイメージをした。もちろんエッチな性的とは違うわ。私の指の美しさに本能的な性のイメージをしたのよ」
僕は何も答えず、ただジッと彼女の顔を見つめた。
「そして君は、私の指が自分のペニスに触れた時、どんな感情になるか知りたがっている」
……沈黙が流れた。なんて言えば良いのかわからないからだ。心を読まれたとか、そんか感覚ではなかった。自分の願望を丸裸にされて、欲望をさらけ出された気分だった。
「四季くんも何か話しなさいよ。私に聞いて欲しいはずよ。君はそう思っているし、話している相手が自分の秘密を打ち明けられた時、人は自然と心を許して話したくなるものよ」
ヒロセさんの言葉に僕は不思議と歯向かえなかった。彼女に聞いてもらいたかった。彼女に話したかった。僕はグラスのワインを一口飲むと、高校時代に起きた出来事を話し始めた。辛い過去なのに、ヒロセさんの前だと気持ちを楽にして話せる。自然と心は落ち着いて、あのグチャグチャな色は滲んで来なかった。
運ばれて来る料理を食べながら、僕は細かく丁寧に説明しながら話した。
ヒロセさんは時折頷いたり、優しい微笑みを浮かべながら、僕の話を黙って聞いてくれた。
僕の中で色が変化した瞬間でもあった。
つづく……
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