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75.謝罪
しおりを挟む年末の夜会から十数日。
寒気休暇、前世で言う冬休みが終わる前日。俺は明日から始まる学院へ行く準備をしていた。
3日程前に両親が領地に帰り、屋敷の中が静かに感じる。
休み前に学院の図書室で借りた本を忘れないように鞄に詰めているとノック音が響いた。
「お嬢様、ミシェル様がお越しです」
「すぐ行く!」
年末の夜会でミシェルの父、モーガン・イグナシオンは断罪された。
財務大臣だったモーガンは、王都から離れた地方の町村から必要以上の税を搾り上げ、浮いたお金を一部の権力のある貴族に賄賂として横流ししていたことが分かった。
昔、若くして大臣に上り詰めただけあって頭の切れる男で巧みに偽装されていたからジョセフは証拠を掴むのに苦労したらしい。
勿論受け取った方の貴族も数名、断罪されたそうだ。
モーガンは捕まりイグナシオン家の当主は息子のケレイブに移った。
爵位も侯爵から子爵へ降格されたらしく、少しやり過ぎじゃないかと俺は思ったのだけど、当主になったケレイブが過多の税を取られていた民の事を考え、自ら爵位返上を望んだらしい。
賛同する者もいたらしいが、俺と同じく重すぎると言う者もいて、賛否は分かれ、爵位降格で最後は話が纏まったそうだ。
これからイグナシオン家は風当たりが強くなるだろうが、ジョセフはケレイブなら大丈夫だろうと言っていた。
あのジョセフが言うのだから、きっと大丈夫。
彼の人を見る目は確かなのだから安心できる。
結局、ミシェルに一切の被害が及ばないようにする事は出来なかった。
すぐに謝りたかったけど、当然ながらイグナシオン家はゴタゴタしてて今日まで会えなかったのだ。
本当は謝罪なのだから俺が行きたかったけど、イグナシオン家はまだ少しゴタついているらしく、ミシェルだけなら抜け出せるからと会いに来てくれたのだ。
応接室について一呼吸してからノックをする。
「お待たせしました。今日は来て頂いてごめんなさい」
扉を開けるとソファーに座っていたミシェルは立ち上がり俺を見て微笑んだ。
「いいえ、我が家では今は落ち着いてお話出来ませんし、むしろ招いて頂けて嬉しく思いますわ」
「そう言っていただけると助かります」
俺はミシェルに座るよう進めてから俺も向かいに座る。
暫く沈黙が続く。
言い出しにくいけど時間がたてばもっと言い出しにくくなるし今日呼んだのも謝るためなのだからと腹を決めて俺は頭を下げた。
「ミシェル……ごめんなさい。結局、私は何もしてあげれませんでした……」
「頭を上げてくださいませ。貴女が謝る必要などありません。それに貴女はいつもわたくしに寄り添って下さいましたでしょう?それだけで、わたくしは救われましたのよ。爵位降格の事も爵位返上を希望したのは兄様で、わたくしも兄様の立場なら同じ事をしましたわ。それでも殿下も陛下も寛大なお心でイグナシオン家を存続させてくださいました。むしろ感謝しておりますの」
そういって微笑むミシェルは晴々とした顔をしていた。
もう父親に怯えて暮らさなくてすむのだから当然かもしれないけど。
だけど、取り巻きだった令嬢達が前に立場が悪くなっただけで見事な手のひらを返した事を考えると、子爵令嬢になった彼女は立場が大分弱くなっている今、あの時以上に酷くなるんじゃないかと俺は危惧している。
打開策も出てこなくてお手上げ状態だ。明日シアやジョセフに相談してみようかな……。
本当に俺は無力だなー……豊みたいに頭が良かったらなと思うけど無い物ねだりしたって変わらないから、自分のできる事をやるしかない。
明日からの学院は出来る限りのミシェルの傍にいるとミシェルに言うと彼女は嬉しそうに微笑んだ。
勉強頑張らないとな……2年はミシェルと同じソールクラスになれるように……と新たに決意をした。
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