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11.キラキラ笑顔ましまし
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ガタゴトと音を立てながら馬車は進む。
座席のクッションは柔らかいから問題ないが、揺れは防ぎようがなく少し辛い。
乗り物に強くて良かったと思いながら揺られる。
こう考えると前世はハイテクだったんだなと思う。
整備された道も前世はとっても滑らかだったし、タイヤも立派で揺れも少なかった。
王都に来るまでの道は均してあったけど、もっとぼこぼこだったな。所々、均してもなかったけど……
なんて、恒例の現実逃避をしてみたが、いい加減向き合うことにしよう。
「なぁ……何で強引に俺をお兄様から引き離して馬車乗せたんだよ」
「……エリックが君を抱きしめたから」
「はぁ?お兄様だから問題ないだろ?つか殿下は俺が嫌いだったんじゃないのかよ?」
「……たしかにアンジェリカ嬢は苦手だった……だが、君はアンジェリカ嬢とは違うだろう?」
「あんた……俺と婚約破棄しないのは王命だから仕方無くなんじゃ……」
「……アンジェリカ嬢なら、そう思ってはいたが……俺は君を本気で好きになった。むしろ婚約しててよかったと思っているよ」
真剣な目を向けられ、その視線が熱を帯びている事に気づいた。グッと息が詰まる。
何故かその視線をそらせない……
前に会った時と違う話し方にも何故かドキドキする。
こっちの話し方が素なのだろうか?
王族なら常に優美さを求められるから作った笑顔と話し方をしていたのかも知れない。
つまり俺には猫を被る必要は無くなったと言うことか。
「なあ……聞きたいことがあるんだが良いか?」
「なんだ?」
「前にも聞いたけど……俺の前世は男だ。そして今の俺の感情は男としての感情が大きい……それでも、す……す……す、き……とか言うのかよ?」
「何だ、そんなことか」
「何だとは何だよ!俺には大事な事なんだよ!」
「同性同士の恋人なんて珍しくもない。寧ろ軍人は男所帯だからか、良い関係の奴らも多い。同性婚は認められてないが妻がいて、男の愛人がいる貴族もいる」
「あ……あんたも男が好きなのか?」
「まさか。偏見はないが俺はそういう嗜好はない。だから同性の恋人を作る気持ちは一切分からなかったが……性別などではなく彼らはお互いの心に引かれたのであろうと今なら分かる」
「心……?つまり男だから好きなのではなく俺だから好きだと……」
「そうだ。王太子としては世継ぎを作るために、妃を迎えなければならないからな。だが、俺は側室を持たず、ただ1人母を愛した父のようになりたかった。君もそう望んでいただろう?政略結婚でもお互いを思いやる関係が良いと……」
確かに愛はほしいとは言ったけども!政略結婚が回避できないなら信頼できる関係にはなりたいとは言ったけども!!
まさか相手から愛をいただけるなんて思わないじゃないか!
「何で?俺あんたに好かれる事なんてなんもしてないじゃないか……」
「同じ考えだったのが嬉しかった」
「そんなの俺以外にもいるだろ……」
「いや……身分しか見てなかったり、家のためや、見栄を張るためだったりと多いんだ。そこに愛はない。王族相手なら尚更だ」
考えられないのは俺が身分のない国で育ったからか……それでも似たような奴は少なからずいるのだから、平等ではないこの世界ならそうなるのだろうか……
少なくとも、同じような考えを持つ人は、いるだろうけど、そんな人と出会える事が奇跡に近いのかもしれない。
そして奇跡的に出会ったのが俺だったのだろう。
「…………やっぱり俺は男とは結婚は嫌だ……でも……あんたにも言われたけど結婚しない道は無理だと分かってる。だから俺の事知って受け入れてくれた殿下なら……俺の考えに同調してくれた殿下なら……信頼してやる」
「……っ!!」
クッソ!嬉しそうな顔しやがって!キラキラましましじゃないか!
ましましは背油たっぷりラーメンだけで十分だ!
「でも好きだからとかじゃないからな!そこは間違えるなよ!」
「今はそれでも構わない。ありがとう」
向けられた初めて会った時の大人びた笑顔とは違う年相応の笑顔は更にましましの眩しさだった。
俺は赤くなった顔を隠すように、うつ向くしかなかった。
座席のクッションは柔らかいから問題ないが、揺れは防ぎようがなく少し辛い。
乗り物に強くて良かったと思いながら揺られる。
こう考えると前世はハイテクだったんだなと思う。
整備された道も前世はとっても滑らかだったし、タイヤも立派で揺れも少なかった。
王都に来るまでの道は均してあったけど、もっとぼこぼこだったな。所々、均してもなかったけど……
なんて、恒例の現実逃避をしてみたが、いい加減向き合うことにしよう。
「なぁ……何で強引に俺をお兄様から引き離して馬車乗せたんだよ」
「……エリックが君を抱きしめたから」
「はぁ?お兄様だから問題ないだろ?つか殿下は俺が嫌いだったんじゃないのかよ?」
「……たしかにアンジェリカ嬢は苦手だった……だが、君はアンジェリカ嬢とは違うだろう?」
「あんた……俺と婚約破棄しないのは王命だから仕方無くなんじゃ……」
「……アンジェリカ嬢なら、そう思ってはいたが……俺は君を本気で好きになった。むしろ婚約しててよかったと思っているよ」
真剣な目を向けられ、その視線が熱を帯びている事に気づいた。グッと息が詰まる。
何故かその視線をそらせない……
前に会った時と違う話し方にも何故かドキドキする。
こっちの話し方が素なのだろうか?
王族なら常に優美さを求められるから作った笑顔と話し方をしていたのかも知れない。
つまり俺には猫を被る必要は無くなったと言うことか。
「なあ……聞きたいことがあるんだが良いか?」
「なんだ?」
「前にも聞いたけど……俺の前世は男だ。そして今の俺の感情は男としての感情が大きい……それでも、す……す……す、き……とか言うのかよ?」
「何だ、そんなことか」
「何だとは何だよ!俺には大事な事なんだよ!」
「同性同士の恋人なんて珍しくもない。寧ろ軍人は男所帯だからか、良い関係の奴らも多い。同性婚は認められてないが妻がいて、男の愛人がいる貴族もいる」
「あ……あんたも男が好きなのか?」
「まさか。偏見はないが俺はそういう嗜好はない。だから同性の恋人を作る気持ちは一切分からなかったが……性別などではなく彼らはお互いの心に引かれたのであろうと今なら分かる」
「心……?つまり男だから好きなのではなく俺だから好きだと……」
「そうだ。王太子としては世継ぎを作るために、妃を迎えなければならないからな。だが、俺は側室を持たず、ただ1人母を愛した父のようになりたかった。君もそう望んでいただろう?政略結婚でもお互いを思いやる関係が良いと……」
確かに愛はほしいとは言ったけども!政略結婚が回避できないなら信頼できる関係にはなりたいとは言ったけども!!
まさか相手から愛をいただけるなんて思わないじゃないか!
「何で?俺あんたに好かれる事なんてなんもしてないじゃないか……」
「同じ考えだったのが嬉しかった」
「そんなの俺以外にもいるだろ……」
「いや……身分しか見てなかったり、家のためや、見栄を張るためだったりと多いんだ。そこに愛はない。王族相手なら尚更だ」
考えられないのは俺が身分のない国で育ったからか……それでも似たような奴は少なからずいるのだから、平等ではないこの世界ならそうなるのだろうか……
少なくとも、同じような考えを持つ人は、いるだろうけど、そんな人と出会える事が奇跡に近いのかもしれない。
そして奇跡的に出会ったのが俺だったのだろう。
「…………やっぱり俺は男とは結婚は嫌だ……でも……あんたにも言われたけど結婚しない道は無理だと分かってる。だから俺の事知って受け入れてくれた殿下なら……俺の考えに同調してくれた殿下なら……信頼してやる」
「……っ!!」
クッソ!嬉しそうな顔しやがって!キラキラましましじゃないか!
ましましは背油たっぷりラーメンだけで十分だ!
「でも好きだからとかじゃないからな!そこは間違えるなよ!」
「今はそれでも構わない。ありがとう」
向けられた初めて会った時の大人びた笑顔とは違う年相応の笑顔は更にましましの眩しさだった。
俺は赤くなった顔を隠すように、うつ向くしかなかった。
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