32 / 97
31.無防備な君と隠しきれない恋心
しおりを挟む
結局、俺の願いも虚しく、早馬によって手紙は届けさせていると良い笑顔で夕食の時に爺に言われた。
ホントにごめんね、届けてくれる人……
帰ってきたら労って上げてくれとお願いしておいた。
次の日、朝からソワソワと落ち着きがなかったと、放課後シアが帰り際に言ってきた。
別に兄が帰ってくるから嬉しいとかではない。断じて違うからな。
シアは上の空だった俺を咎めてる訳でもなく、ただ微笑ましそうに言いながら俺が反論する前にさっさと帰っていった。
横のイーノスも何故か1日機嫌か悪かったのか、何時もより言葉にトゲが増えてた気がする。帰り支度をして、まだ教室にいるクラスメイトに挨拶をしてから玄関ホールに向かう。
玄関ホールに入ると人だかりがいつも以上に多かった。
どうやら3年生を出迎えている下級生でごった返していているようで、思わず渋い顔になる。
あの人だかりに入る勇気はないと思っていると、丁度人に揉まれながら人だかりから出てきた人に聞くことにした。
3年生は既に全員、到着してるものの一気に降りてくると混雑するから、順番に降りて来てるところだそうだ。
一度教室に戻って点呼をとってから帰る事になるそうだ。
つまりお兄様も帰れるのはもう少し後になる。
帰りは一緒に帰ると約束していたので、時間が空いてしまった。
せっかく時間が空いているなら勉強するかと思ったがお兄様を待つのには教室にいた方が分かりやすくて良いだろう。ならば図書室で歴史書でも借りて教室で読みながら待つことに決めて図書室に足を向ける。
図書室に入ると、まばらだが人がいた。皆、俺と同じで待ってる組なんだろうなと考えながら目的の本棚に向かう。歴史に関する本が並べられた本棚は奥まった場所にあって一番遠い。
辿り着くと、見知った後ろ姿があった。
「ラノフ」
空色の髪が揺れて振り向いて見えた同じ色の瞳が俺をとらえた。目を見開いたラノフは少し呆けたように口が小さく開いていた。
「アンジェリカ様、今日は来れなかったのでは?」
「一緒に帰ると約束したお兄様が、まだ帰れそうにないから時間潰しに勉強しようと思って……でも、何時もより時間はないだろうから歴史書を借りて読もうかなって」
「そうでしたか」
本棚を眺め、数冊手に取り中を確認する。
ラノフはスッと俺の近くにあった本を取ると俺に差し出した。
「この本がお勧めです。今度の試験の範囲がすべて入っていますし、他の本に比べれば分かりやすいです」
「わぁ!ありがとう助かるよ!」
にっこり微笑んで受けとると、ラノフはぐっと堪えるような顔をして顔を反らした。
どうしたんだと覗き込もうとすると、ジトリと軽く睨まれた。
「貴女は……どうして、そう無防備なのですか」
「え?」
無防備とはなんのことだ?そんな事ないと思うが、仮に無防備だったとしても友達に警戒する必要なんてないしと首を傾げていると、いつの間にか至近距離にラノフが立っていた。
ラノフは俺の頬をするりと撫でじっと見下ろしている。急に頬を撫でられた俺はくすぐったくて、肩を竦めた。見上げたラノフの瞳は熱がこっていて困惑する。現状が理解はできてないが何故かヤバいと思った。後退りすると、同じだけ詰めてくる。あっという間に本棚との間に挟まれてしまった。
逃げ道を塞ぐように本棚に手を置かれ、囲われてしまった。混乱した頭の端で、これが噂の壁ドンかと思っていた。
「ラ……ラノフ?あの……」
「貴女は……分かっているのか?俺だって男なのだと」
それぐらい解っている。と思うのに口から声が出ない。至近距離で見つめられ戸惑う俺の髪を一房持ち上げると唇を押し当てる。
髪にキスをされたと一拍置いてから理解し顔が赤くなる。
「昨日、貴女は気になる方がいるのかと聞きましたよね?」
確かに昨日、好きな人がいるかは聞いた。曖昧だったけど肯定と取れる返事をされたので誰だろうとは思ってた。
急に昨日の話を振ってくるラノフの艶のある笑みを見て、聞いてはいけないと心が訴えてくる。
ドクドクと心臓が早鐘を打ち、聞きたくないと必死に顔を反らして目を瞑り耳を塞ぐ。目を瞑っていても視線が突き刺さる。
耳を塞いでいた手に手が重なったと思ったら手を耳から退かされ抱き締められた。
「アンジェリカ……俺を見て……」
ラノフは懇願するような声色で囁く。最後は掠れたように小さくなって黙り混んでしまう。強張る俺の体を抱き締める腕は少しキツくなった。
ホントにごめんね、届けてくれる人……
帰ってきたら労って上げてくれとお願いしておいた。
次の日、朝からソワソワと落ち着きがなかったと、放課後シアが帰り際に言ってきた。
別に兄が帰ってくるから嬉しいとかではない。断じて違うからな。
シアは上の空だった俺を咎めてる訳でもなく、ただ微笑ましそうに言いながら俺が反論する前にさっさと帰っていった。
横のイーノスも何故か1日機嫌か悪かったのか、何時もより言葉にトゲが増えてた気がする。帰り支度をして、まだ教室にいるクラスメイトに挨拶をしてから玄関ホールに向かう。
玄関ホールに入ると人だかりがいつも以上に多かった。
どうやら3年生を出迎えている下級生でごった返していているようで、思わず渋い顔になる。
あの人だかりに入る勇気はないと思っていると、丁度人に揉まれながら人だかりから出てきた人に聞くことにした。
3年生は既に全員、到着してるものの一気に降りてくると混雑するから、順番に降りて来てるところだそうだ。
一度教室に戻って点呼をとってから帰る事になるそうだ。
つまりお兄様も帰れるのはもう少し後になる。
帰りは一緒に帰ると約束していたので、時間が空いてしまった。
せっかく時間が空いているなら勉強するかと思ったがお兄様を待つのには教室にいた方が分かりやすくて良いだろう。ならば図書室で歴史書でも借りて教室で読みながら待つことに決めて図書室に足を向ける。
図書室に入ると、まばらだが人がいた。皆、俺と同じで待ってる組なんだろうなと考えながら目的の本棚に向かう。歴史に関する本が並べられた本棚は奥まった場所にあって一番遠い。
辿り着くと、見知った後ろ姿があった。
「ラノフ」
空色の髪が揺れて振り向いて見えた同じ色の瞳が俺をとらえた。目を見開いたラノフは少し呆けたように口が小さく開いていた。
「アンジェリカ様、今日は来れなかったのでは?」
「一緒に帰ると約束したお兄様が、まだ帰れそうにないから時間潰しに勉強しようと思って……でも、何時もより時間はないだろうから歴史書を借りて読もうかなって」
「そうでしたか」
本棚を眺め、数冊手に取り中を確認する。
ラノフはスッと俺の近くにあった本を取ると俺に差し出した。
「この本がお勧めです。今度の試験の範囲がすべて入っていますし、他の本に比べれば分かりやすいです」
「わぁ!ありがとう助かるよ!」
にっこり微笑んで受けとると、ラノフはぐっと堪えるような顔をして顔を反らした。
どうしたんだと覗き込もうとすると、ジトリと軽く睨まれた。
「貴女は……どうして、そう無防備なのですか」
「え?」
無防備とはなんのことだ?そんな事ないと思うが、仮に無防備だったとしても友達に警戒する必要なんてないしと首を傾げていると、いつの間にか至近距離にラノフが立っていた。
ラノフは俺の頬をするりと撫でじっと見下ろしている。急に頬を撫でられた俺はくすぐったくて、肩を竦めた。見上げたラノフの瞳は熱がこっていて困惑する。現状が理解はできてないが何故かヤバいと思った。後退りすると、同じだけ詰めてくる。あっという間に本棚との間に挟まれてしまった。
逃げ道を塞ぐように本棚に手を置かれ、囲われてしまった。混乱した頭の端で、これが噂の壁ドンかと思っていた。
「ラ……ラノフ?あの……」
「貴女は……分かっているのか?俺だって男なのだと」
それぐらい解っている。と思うのに口から声が出ない。至近距離で見つめられ戸惑う俺の髪を一房持ち上げると唇を押し当てる。
髪にキスをされたと一拍置いてから理解し顔が赤くなる。
「昨日、貴女は気になる方がいるのかと聞きましたよね?」
確かに昨日、好きな人がいるかは聞いた。曖昧だったけど肯定と取れる返事をされたので誰だろうとは思ってた。
急に昨日の話を振ってくるラノフの艶のある笑みを見て、聞いてはいけないと心が訴えてくる。
ドクドクと心臓が早鐘を打ち、聞きたくないと必死に顔を反らして目を瞑り耳を塞ぐ。目を瞑っていても視線が突き刺さる。
耳を塞いでいた手に手が重なったと思ったら手を耳から退かされ抱き締められた。
「アンジェリカ……俺を見て……」
ラノフは懇願するような声色で囁く。最後は掠れたように小さくなって黙り混んでしまう。強張る俺の体を抱き締める腕は少しキツくなった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる