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30.それぞれの夜
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午後の授業を終えて、帰路につく。
教室出るときに、3人の生暖かい視線を背中に浴びて飛び出してきた。
なんで女子は噂とか色恋沙汰が好きなんだろな?
男も話したりはするけど、からかい程度だが、女はほっとくとずっと話してたりする。
誰それと誰それが付き合っててーとか、別れたとか、婚約したとか、すぐに広まる。
知らない奴や仲良くない奴の話して何が楽しいのか……
帰宅すると出迎えた、リーチェとナタリーに挨拶もそこそこに、この屋敷の家令のダンクレスに王宮へジョセフ宛の手紙を届けるよう頼みに行く。
何故か凄く嬉しそうな顔をして早馬で砦に届けさせると言い出した。
いやいやいや!王宮で良いって言ってるじゃん!
砦は半日かかるんですよ!?
夜通し走らせるつもりですか!?
ダンクレスは止める言葉も聞かずに走ってないのに、めっちゃ早い速度で立ち去っていく。あっという間に見えなくなって追いかけるのは諦めた。ダンクレスは背筋がピーンとしてるけど髪には白髪の混ざってて、そこそこの年だった筈なのに。64歳ぐらいだったかな。だから俺もお兄様も爺と呼んでる。
爺なのにあのスピードはどう言うことだ。
元々は本邸の家令だったのだが、本邸の家令は息子に譲り今は王都のこの屋敷を任されている。
まあ、とりあえず早い方がいいだろうし届けてくれる人に申し訳なく感じつつ、どうしようもないと自室に向かう。
最後の爺との会話でドッと疲れた俺はリーチェにお茶を頼んで部屋に入るとソファに突っ伏した。制服がシワになるから着替えてくださいとナタリーに言われて、そんなん知るかーと思ってたら、お茶を持ってきたリーチェに怒られました。すみません。着替えます。
こんこんとお説教を受けて、俺は平謝りするしかなかった。
**************
開けた窓から涼しい風が入ってきて頬を撫でていく。
ジョセフは読んでいた書物から顔を上げて見ると星が瞬いていて、椅子から立ち上がり窓辺から空を見上げた。
彼女も今この空を見ているだろうか……
一昨日書いた手紙は無事届いたであろうか……
一昨日の夜、アンジェリカ宛に書いた手紙を翌日の朝イチで王都まで運ぶ書類や手紙と共に運んでもらったから、夕刻迄には到着したことだろう。
砦にいる兵士も、家族や恋人を残してきて来ているのだから物質以外でも手紙や贈り物も届くし、こちらから送ったりもするのだ。
定期的に送る書類のついでに出す事を受け付けていて、今回は運良くその日に当たったのだ。
控えめなノック音がして、廊下で警備してくれていた兵士が来客を知らせてくる。
こんな時間に?と思いながらも入室の許可をする。
ドアが開き一礼した、兵士の後ろにエリックの姿が見えて、兵士を下がらせてエリックを招き入れる。
完全にドアがしまってから、エリックに向き直る。
「どうしたんだエリック?こんな時間に」
「すまない、ジョセフ急に来てしまって。少し息が詰まってるんじゃないかと思って……」
砦の中では良い部屋を宛がってもらってるが、王宮にあるジョセフの部屋に比べれば雲泥の差はある。
しかし、寝るだけなのだから問題には思っていなかったし、エリックが言いたいのは、皆3人~4人部屋で、あんまり出歩けなくともクラスメイト達は部屋で談笑出来るが、王族のジョセフだけは1人部屋で1人でいる事だろう。常に入り口に兵士が二人立っている為、皆は先生の目を盗んで1つの部屋に集まったりしているようだが、ジョセフだけは護衛がいるから抜け出して皆と話すことすら出来ない。
こういう時は王族とは不便だとジョセフは思う。行事に参加させてもらえるだけマシかもしれないが、普通の生徒の様にはいかない。
王族の誇りと王太子の責務は解っているからこそ諦めていた事もたくさんある。
学院に入ってエリックと出会い初めて心の許せる友が出来たことは幸運だった。
「すまない、ありがとうエリック」
「僕が君と話したかっただけだからね」
そういって微笑んだエリックを見て、笑った顔がアンジェリカに似ていて、やはり兄妹なのだなと思いながら、アキラは元気にしているだろうか、寂しがっていやしないだろうかと思いを馳せた。
「アンジェに手紙出したんだって?」
「ああ……だが、流石に返事は期待できないな。アンジェは恋文のために早馬なんて出してはくれないだろうしな」
「んー……どうかな?爺なら嬉々として出しそうだけど……あの子は優しいから、無理させてまで届けさせたくはないと考えそうだ」
「そうだよな……」
ため息をついたジョセフにエリックは苦笑する。
「ジョセフの事がどうでも良いと言うわけではないし、返事をしないなんて事はないはずだから、明日、王宮に帰ったら届いているかもしれないよ?」
「だと嬉しいんだけどね」
再び窓から星を眺めると、釣られたようにエリックも顔を上げて眺める。
「アンジェに会いたいな……」
初めはアンジェリカを良く思ってなかったジョセフがココまで惚れ込んでいる事がエリックは嬉しくもあり寂しくもあり、そして羨ましかった。
いつか自分もジョセフの様に想える人に巡り会いたいと一筋の流れた星に願った。
教室出るときに、3人の生暖かい視線を背中に浴びて飛び出してきた。
なんで女子は噂とか色恋沙汰が好きなんだろな?
男も話したりはするけど、からかい程度だが、女はほっとくとずっと話してたりする。
誰それと誰それが付き合っててーとか、別れたとか、婚約したとか、すぐに広まる。
知らない奴や仲良くない奴の話して何が楽しいのか……
帰宅すると出迎えた、リーチェとナタリーに挨拶もそこそこに、この屋敷の家令のダンクレスに王宮へジョセフ宛の手紙を届けるよう頼みに行く。
何故か凄く嬉しそうな顔をして早馬で砦に届けさせると言い出した。
いやいやいや!王宮で良いって言ってるじゃん!
砦は半日かかるんですよ!?
夜通し走らせるつもりですか!?
ダンクレスは止める言葉も聞かずに走ってないのに、めっちゃ早い速度で立ち去っていく。あっという間に見えなくなって追いかけるのは諦めた。ダンクレスは背筋がピーンとしてるけど髪には白髪の混ざってて、そこそこの年だった筈なのに。64歳ぐらいだったかな。だから俺もお兄様も爺と呼んでる。
爺なのにあのスピードはどう言うことだ。
元々は本邸の家令だったのだが、本邸の家令は息子に譲り今は王都のこの屋敷を任されている。
まあ、とりあえず早い方がいいだろうし届けてくれる人に申し訳なく感じつつ、どうしようもないと自室に向かう。
最後の爺との会話でドッと疲れた俺はリーチェにお茶を頼んで部屋に入るとソファに突っ伏した。制服がシワになるから着替えてくださいとナタリーに言われて、そんなん知るかーと思ってたら、お茶を持ってきたリーチェに怒られました。すみません。着替えます。
こんこんとお説教を受けて、俺は平謝りするしかなかった。
**************
開けた窓から涼しい風が入ってきて頬を撫でていく。
ジョセフは読んでいた書物から顔を上げて見ると星が瞬いていて、椅子から立ち上がり窓辺から空を見上げた。
彼女も今この空を見ているだろうか……
一昨日書いた手紙は無事届いたであろうか……
一昨日の夜、アンジェリカ宛に書いた手紙を翌日の朝イチで王都まで運ぶ書類や手紙と共に運んでもらったから、夕刻迄には到着したことだろう。
砦にいる兵士も、家族や恋人を残してきて来ているのだから物質以外でも手紙や贈り物も届くし、こちらから送ったりもするのだ。
定期的に送る書類のついでに出す事を受け付けていて、今回は運良くその日に当たったのだ。
控えめなノック音がして、廊下で警備してくれていた兵士が来客を知らせてくる。
こんな時間に?と思いながらも入室の許可をする。
ドアが開き一礼した、兵士の後ろにエリックの姿が見えて、兵士を下がらせてエリックを招き入れる。
完全にドアがしまってから、エリックに向き直る。
「どうしたんだエリック?こんな時間に」
「すまない、ジョセフ急に来てしまって。少し息が詰まってるんじゃないかと思って……」
砦の中では良い部屋を宛がってもらってるが、王宮にあるジョセフの部屋に比べれば雲泥の差はある。
しかし、寝るだけなのだから問題には思っていなかったし、エリックが言いたいのは、皆3人~4人部屋で、あんまり出歩けなくともクラスメイト達は部屋で談笑出来るが、王族のジョセフだけは1人部屋で1人でいる事だろう。常に入り口に兵士が二人立っている為、皆は先生の目を盗んで1つの部屋に集まったりしているようだが、ジョセフだけは護衛がいるから抜け出して皆と話すことすら出来ない。
こういう時は王族とは不便だとジョセフは思う。行事に参加させてもらえるだけマシかもしれないが、普通の生徒の様にはいかない。
王族の誇りと王太子の責務は解っているからこそ諦めていた事もたくさんある。
学院に入ってエリックと出会い初めて心の許せる友が出来たことは幸運だった。
「すまない、ありがとうエリック」
「僕が君と話したかっただけだからね」
そういって微笑んだエリックを見て、笑った顔がアンジェリカに似ていて、やはり兄妹なのだなと思いながら、アキラは元気にしているだろうか、寂しがっていやしないだろうかと思いを馳せた。
「アンジェに手紙出したんだって?」
「ああ……だが、流石に返事は期待できないな。アンジェは恋文のために早馬なんて出してはくれないだろうしな」
「んー……どうかな?爺なら嬉々として出しそうだけど……あの子は優しいから、無理させてまで届けさせたくはないと考えそうだ」
「そうだよな……」
ため息をついたジョセフにエリックは苦笑する。
「ジョセフの事がどうでも良いと言うわけではないし、返事をしないなんて事はないはずだから、明日、王宮に帰ったら届いているかもしれないよ?」
「だと嬉しいんだけどね」
再び窓から星を眺めると、釣られたようにエリックも顔を上げて眺める。
「アンジェに会いたいな……」
初めはアンジェリカを良く思ってなかったジョセフがココまで惚れ込んでいる事がエリックは嬉しくもあり寂しくもあり、そして羨ましかった。
いつか自分もジョセフの様に想える人に巡り会いたいと一筋の流れた星に願った。
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