エンディングプランナー

モモタロー!

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第一話 理想のエンディング

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「…さん、山井さん!」



青年は頬を叩かれながら自分の名前を呼ばれ、ゆっくりと意識が戻ってきた。
雨はやんでいるようだ。



「よかった、まだ死んでいませんでしたね。」


どうやら、足を滑らせたものの、落ちたのは橋の内側だったらしい。死に損ねたのだ。


「財布の中身を見せていただきましてね、名前がわからなかったもので、保険証で確認しました。あ、わたくしこういうものです。」


そういって女はポケットから名刺を取り出した。


「…エンディングプランナー?」

「はい!わたくし、エンディングプランナーの井口、と申します。出席番号で1番をとったことあるんですよ!『い』ぐちなのに!すごくないですか?」

「いや、どうでもいいです…、で、なんなんですエンディングプランナーって?」

「はい!ご説明させていただきますね!」


そうしてその女――井口は、「エンディングプランナー」なる職業の説明を始めた。
曰く、依頼者の理想の死に方の演出を実現する仕事だという。


「ほら、暇なときに話したことありません?もし死ぬならこうやって死にたい~とか、この死に方はいやだな~とか。」

「まぁ、ありますけど、死に方なんて決められないでしょう?」

「いえ、そんなことありません。現にあなたは今自殺という死に方をしようとしていたじゃありませんか!」


山井は思わず、口ごもる。


「年齢は22歳、大学を卒業したばかりですかね?ブラック企業に勤め、彼女もおらず、頼りにある友人もおらず、何もいいことがない人生に嫌気がさし、帰り道に橋から飛び降り自殺…なんと嘆かわしいんでしょう!?」

「…一体何なんです?俺を馬鹿にしたいんですか?あなたに何がわかるんです?
 確かに自殺はしようとしていましたが、理由まではわからないでしょう!?」

「わかりますよ~、仕事ですからね、鞄の中身を見たらその人の人生とか性格とか大体わかるんですよ。あ、鞄を見たのは不可抗力ですよ不可抗力!あなたの名前がわからないと、気絶したあなたを呼びかけられませんから。」


中身を荒らした鞄を整理しながら、飄々と語り続ける。


「…まあいいです。で、その『エンディングプランナー』とやらなら、僕にもっと良い死に方を提供できると?」

「そうです!その話をしたかったんです!」


ぱぁっと明るい笑顔を見せた後、井口は自分のビジネスバッグからファイルを取り出した。


「いくつかプランがあるんですがね、山井さんにおすすめなのはこの『トクトク選択エンディングプラン』です!複数のエンディングプランから…あ、死に方のことですね、そのプランから、一つ選んで実現させてもらうものになります!完全オーダーメイドタイプのプランもあるんですが、ちょっと値が張りまして…山井さんの収入からするに、こちらの方が財布にやさしい!心にやさしい!理想のエンディングプランをお楽しみいただけるかと!」


「収入まで分かるんですか?気味が悪い…。
 …いや、それに私にはこのプランだって高いですよ。払えないです。」

「ご安心ください!わが社のサービスで、希望するプランの料金が今すぐ支払えない場合、サポートさせていただきます。具体的には、保険会社との契約や、エンディングを迎えるまでの収入確保のお手伝いなどです!。そのサポート込みの山井さんの支払い能力なら、このプランもご利用いただけます!」

「保険会社の契約って…死ぬやつと結ぶところなんてないでしょう…いや、それも言わなければ良いのか…?でも自殺の場合って保険金もらえないでしょう。」

「あ、いえ、私たちが行う演出はあくまで『あなたが希望する死に方』です。自殺とは限りません。保険会社からはあなたは外部的な要因で死んだように見えるのです。」


そういって井口はプランに含まれる選択可能な死に方の一覧資料を見せた。
『きれいな花に囲まれるエンディング』『因縁の相手と刺し違えるエンディング』『たらふくおいしいものを食べたあと眠りにつくエンディング』…利用者の年齢や性別データなどとともに、多様な死に方のプランが書かれていた。


「いかがです?先ほども言った通り、お金の心配はありません。わたくしどもの方で全力でサポートいたします。問題はあなた自身の決定です。何も良いことがなかった人生、最後くらい素晴らしい演出をされたいと思いませんか?どうせ今日失うはずだった命です。わたくしに預けてみてください。きっと素敵なエンディングにしてみせますよ。」

「そうか…まあ、そうですね、では、このプランにします。」


自分のペースでしゃべり続ける井口に調子を狂わされ、半ば諦めるように山井は一つのプランを指さした。

『ヒーローのようなエンディング』


「…ご利用ありがとうございます♪」
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