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第18話「レイと二人きり」

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「……どこへ行くのです?」


 準備を整え部屋から出ようとする俺達を止めたのは、レイの側で世話をしていたミケだった。


「飯の材料を買いに。飯が不味いんだよ」


 ミケには申し訳ないが、この一週間の不満もあってか少しキツイ言い方をしてしまった。ミケの顔を見たらイライラしてしまう。突っかかるようにご飯の文句を告げるとミケの表情が歪んだ。


「ソウル様、以前のお食事時も私の食事に不満があるとこぼされておりましたね。皆様は美味しいと召し上がってくれていましたのに……」


 納得いかない様子で、ミケも俺に突っかかってきた。


「美味いわけねぇだろ、あんなもん。まあ見てくれは立派だったけどな! よくあんな不味いものをレイに食わせようと思ったな」


「ですから、これまでもレイ様は美味しいと仰ってくださいました!」


「レイの優しさに自惚れてんじゃねぇぞ、クソが! 言っとくがな、俺はおまえが大嫌いだ!」


「それはそれは、前はあんなに僕を好いてくださっていたのに驚きです。本当に変わられてしまったのですね」


 ミケと話して思ったことがある。男を誘うような、そんなフェロモンをミケから感じていたけれど、今は感じない。何故だろう、俺が怒りに身をまかせているからだろうか。


 俺はレイみたいにミケのフェロモンを無効化する能力はないけれど、今、ミケのフェロモンを無効化できてしまっている。


 ……まさか、怒り? レイがミケのフェロモンを無効化できているのは能力だと思っていたけれど、ミケに対しての怒りがあるからか? 怒りがあるのならなんでミケを側に置いている。レイとミケの間にいったい何があるんだ。


 俺の背後にいたレイが、そっと俺の肩を叩いた。


「ミケ、私は今からソウルと一緒に外へ出てくる。帰るのは明日の夜になるかもしれない。それまで城のことをお願いできるか?」

「承知致しました。レイ様に何かあってはいけないので、僕もご一緒致します」

「いや、ソウルがいるから大丈夫だ。ソウルは三メートル内のヤツを一瞬で殺すことができることはミケも知っているだろう?」

「し、知ってはいますが……」


 不満を抱えながらもミケは馬車を手配してくれた。途中、アゼンダ、リリック、ユーデルも一緒に行くことになりそうだったが、レイはあえて全て断り俺と一緒に行くことを貫き通してくれた。レイの隣に座るように俺も馬車へと乗り込み、白くて長い髭が生えた御者に挨拶をした。


 馬車なんて乗るの初めてだ。未知すぎてワクワクしてしまう。馬車が走り出した後も、レイはしばらく外の景色を眺めていた。


「まさか貴様と二人だけでこれに乗るハメになるとはな……」


 皮肉を言いつつも、嫌そうではないレイに少しだけホッとする。


 座席を見ると、レイと俺の間には距離が空いていたけれど、レイが外を眺めていることをいいことにそっと近寄る。レイの華奢な身体がすぐちかくにあり足が触れた。流石に気付かれないというのも無理な話で、


「……おい、近すぎだ。もう少し離れろ」


 レイは俺の太ももを手でグイッと離すように押した。


 ……やば、また……!!


 悟られないように足を閉じ、手で股間を隠した。


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