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プロローグ
はじまりのお菓子作り
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──パティシエは奇跡を二度起こす──
オレの爺ちゃんがよく口にしていた言葉だ。
二〇一〇年、某日──
飛来した隕石によって、それまで日常だった世界に終止符が打たれた。
空を一直線に横切った水色の光源、夕暮れ時の赤紫に映えた光景をオレは覚えている。
傍に居た爺ちゃんは、どこか覚悟した顔をしていた。幼かったオレは、爺ちゃんがあの隕石を見て何を思ったのか、分からなかった。
オレが不安げに見ていたからか、爺ちゃんは「大丈夫だ、孝太郎」とオレの名前を呼んでから頭を撫でた。
大きくて、武骨な手だったが、甘い匂いと──手の平がとても温かいのを覚えている。
「よし、砂遊びはしまいだ。手を洗って来い」
「爺ちゃん?」
「今日は特別に、特別な菓子を作ってやろう」
爺ちゃんは白シャツの腕をまくり、筋肉質な上腕二頭筋を見せ──にい、と口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。もう七十歳を過ぎると言うのに「まだまだ若い者には負けん」と豪語する。その言葉や口調がすごくかっこよくて、オレも同じように口元を吊り上げた。
「特別なお菓子、オレも手伝う!」
「おお、手伝ってくれるか」
オレは「うん」と大きく頷いた。
「孝太郎は、菓子作りが好きか?」
「すき!」
そう言うと爺ちゃんは目を細めて、嬉しそうに笑った。「そうか、そうか」と繰り返すと、オレの後ろにいる何かに視線を向ける。
「お前さんたちも、そのつもりで来たのだろう?」
オレは小首を傾げて振り替えた。庭で砂遊びをしていたのは、オレと爺ちゃんだけだ。勝手口はここにはない。目に映るのは、巨大な壁のように立ちふさがる青々しい垣根だけだ。
「はははっ、慌てなさんな。ほら、孝太郎。支度だ、支度!」
「うん!」
隕石が墜落した日、爺ちゃんは定休日だった店を開けた。それも夜に営業をするという。
当時、テレビでは「世界の終末。人類滅亡」と言う話題で持ち切りだったのに、そんなことなど気にせずに、爺ちゃんは自分の矜持を貫いた。
二〇一〇年某日──
その日は、人間の世界と幽世と呼ばれる、アヤカシの存在する世界の垣根が消えた日だった。
オレの爺ちゃんがよく口にしていた言葉だ。
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飛来した隕石によって、それまで日常だった世界に終止符が打たれた。
空を一直線に横切った水色の光源、夕暮れ時の赤紫に映えた光景をオレは覚えている。
傍に居た爺ちゃんは、どこか覚悟した顔をしていた。幼かったオレは、爺ちゃんがあの隕石を見て何を思ったのか、分からなかった。
オレが不安げに見ていたからか、爺ちゃんは「大丈夫だ、孝太郎」とオレの名前を呼んでから頭を撫でた。
大きくて、武骨な手だったが、甘い匂いと──手の平がとても温かいのを覚えている。
「よし、砂遊びはしまいだ。手を洗って来い」
「爺ちゃん?」
「今日は特別に、特別な菓子を作ってやろう」
爺ちゃんは白シャツの腕をまくり、筋肉質な上腕二頭筋を見せ──にい、と口角を上げて不敵な笑みを浮かべた。もう七十歳を過ぎると言うのに「まだまだ若い者には負けん」と豪語する。その言葉や口調がすごくかっこよくて、オレも同じように口元を吊り上げた。
「特別なお菓子、オレも手伝う!」
「おお、手伝ってくれるか」
オレは「うん」と大きく頷いた。
「孝太郎は、菓子作りが好きか?」
「すき!」
そう言うと爺ちゃんは目を細めて、嬉しそうに笑った。「そうか、そうか」と繰り返すと、オレの後ろにいる何かに視線を向ける。
「お前さんたちも、そのつもりで来たのだろう?」
オレは小首を傾げて振り替えた。庭で砂遊びをしていたのは、オレと爺ちゃんだけだ。勝手口はここにはない。目に映るのは、巨大な壁のように立ちふさがる青々しい垣根だけだ。
「はははっ、慌てなさんな。ほら、孝太郎。支度だ、支度!」
「うん!」
隕石が墜落した日、爺ちゃんは定休日だった店を開けた。それも夜に営業をするという。
当時、テレビでは「世界の終末。人類滅亡」と言う話題で持ち切りだったのに、そんなことなど気にせずに、爺ちゃんは自分の矜持を貫いた。
二〇一〇年某日──
その日は、人間の世界と幽世と呼ばれる、アヤカシの存在する世界の垣根が消えた日だった。
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