真夜中のアヤカシ洋菓子店にようこそ

あさぎかな@コミカライズ決定

文字の大きさ
24 / 35
第4幕 高校入学編

第21話 入学式×チョコブラウニー

しおりを挟む
 四月某日。
 今日は高校の入学式だ。
 オレは少し大きめな学ランに袖を通して、学校指定の鞄を背負って学校へと向かった。

《まほろば駅》から徒歩二十分。ちなみに学校から病院までは十二分ぐらいかかる。バスだと二駅分ですぐだが、オレは徒歩か自転車通勤の予定だ。
 まあ、今日は父さんが車で乗せていってくれるので、楽ちんである。母さんは妹の小学校入学式に出る為いない。


 ***


 雨月高等学校、駐車場。
 オレは車から降りる。駐車場にはすでに五十台以上の車が止まっていた。新入生と親御さんの姿もちらほら見えるが、中学の知り合いは今のところいなそうだ。

 ──クラス発表に、入学式。午前中に学校が終わるから食堂に顔だけ出して、それから爺ちゃんに制服姿を見せて……その後店に戻れば、明日の仕込みぐらいは手伝えるよな。

 なんてオレは呑気に考えながら、昇降口傍にあるクラス発表へと足を運んだ。父さんは学校側に挨拶回りをするとか言って、学校の駐車場で別れた。役所勤めも大変なんだろうな。

「わあ、もう結構集まっている」

 昇降口傍にあるクラス発表の一覧表が張り出されていた。クラスは三組までだ。そう多くないので、探すのも問題ないだろう。そう、実際オレは一組ですぐに見つかった。見つかったのだが──賑やかすぎるのは、なぜか?
 回答──。

「Master」
「おお、俺の弟子が来たか」
「我を待たせるとは良い度胸だ」

 ツインテールでコックコート姿のゴーレム機械人形カノ。
 筋骨隆々きんこつりゅうりゅう、赤い顔、長い花、天狗のクダラ師匠。
 白く長い髪、蛇に近い鱗肌、白い和装の白蛇様。

 ──ぶふぁああああああああああ! なんでいるんすかぁあああああ!?

 オレは口から心臓が「ぴょん」と飛び出すほど吃驚びっくりした。そしてこう思った。

 ──オレの平穏な高校生活、サヨウナラ、バイバイ! はああああ……。っていうか、あの面子なら、仮に今から異世界に行ったとしても十分に通じると思うよ、うん。向かった先がいきなり魔王だったとしても勝てると思う。

「どうした、孝太郎?」
「Master?」
「さっさと歩いてこい」

 視線が痛い。
 オレの名前を連呼して呼ぶ師匠。Masterと呼ぶゴーレム機械人形カノ。いや、あの後、父さんが契約云々は色々やってくれたけど──学校ではMasterと呼ばない約束は無視ですかね。
 オレは盛大な溜息を吐いたのち、三人の元に駆け寄った。

「カノ、クダラ師匠、白蛇様。今日は一体……」

「なに。弟子が高校に入学したんだ、祝いに来た!」

 ──師匠! なんて弟子想いの人なんだ……! この人に一生ついていくぜ!

「Masterの出迎えは必須かと」

 ──ドヤ顔で、さっそく約束無視ってどうなんだ!?

「着てやったのだから、何かよこせ」

 ──最後の白蛇様に至っては、お祝いの言葉なし! その上、スイーツを要求されたし!?

 その後、オレは爺ちゃんのお土産と一緒に作って置いた「しっとり濃厚チョコブラウニー」を白蛇様に献上したのだった。
 「もはや白蛇様は、スイーツの神様で良いんじゃないですかね!?」と思わずにはいられなかった。いや、気に入ってもらえているのは嬉しいのだけれど……。

「……おい、小僧。リョウヘイから渡された《銀の鍵》を持ってきているか?」

 白蛇様は相変わらず脈略もなくオレに尋ねてきたので、返答が一拍遅れる。

「へ? あー、あの鍵とお守りなら、ちゃんと毎日持っているッス……です」

  そう言ってオレはポケットから銀の鍵とお守りを取り出した。爺ちゃんから受け取った鍵だが、未だに何に使うのか分からない。家や店にはそれらしい鍵穴はなかったのだ。

「……そうか。絶対に無くすな」

「もちろんッス」

 それだけ確認すると白蛇様は勝手に納得して、チョコブラウニーを再び食べ始めたのだった。相変わらずの自由人。キングオブマイペースだ。


 ***


 孝太郎こうたろうが教室に向かう姿を見て、天狗のクダラはホッと胸を撫で下ろした。また天狗の横に立つツインテールのゴーレム機械人形カノは、両目に搭載している赤外線センサーを解除する。
 そして白蛇は、三つ目になるチョコブラウニーを口にしていた。

 先ほどまでの人だかりもなくなり、昇降口周辺は閑散としていた。生徒は教室、保護者たちは体育館へと向かったからだ。
 ふと校舎から出てくる男がいた。キチッと決めた紺色のスーツ姿に、オールバックの髪、気真面目そうな顔立ち、年齢は三十代後半に見えなくはない。彼の名は旭正一あさひしょういち、孝太郎の父親だ。彼は三人に向けて頭を下げた。

「挨拶が遅れて申し訳ありません。自分は孝太郎の父、旭正一です。息子が大変お世話になっております」

「おう、久しいな。涼平の息子」

 天狗のクダラは親し気に、孝太郎の父──正一に声をかける。
 一方、ゴーレム機械人形カノは正一に軽く頭を下げると、その場を離れた。素っ気ない態度だが、彼は特に気にしなかった。

「……リョウヘイの息子。策としては些か大胆過ぎるではないか?」

 白蛇は不機嫌そうに眉を吊り上げていたが、それでも賛成したからこそこの場に姿を現したのだった。

「そうかもしれませんが、これで息子にちょっかいを出そうとする《アヤカシ》はもちろん、もぐっと減るでしょう」

「ま、思っていた以上に早い段階で、孝太郎は《アヤカシ》界隈で有名になったからな。有名になったらなったで、色々とトラブルに巻き込まれるからなぁ」

 天狗のクダラは正一へと視線を向ける。のある出来事を知っているモノからすれば、妥当な判断だったのかもしれない。
 人間と《アヤカシ》との共存関係は、危うくも均衡を保ち、そして複雑だった──
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

あやかし甘味堂で婚活を

一文字鈴
キャラ文芸
調理の専門学校を卒業した桃瀬菜々美は、料理しか取り柄のない、平凡で地味な21歳。 生まれる前に父を亡くし、保育士をしながらシングルで子育てをしてきた母と、東京でモデルをしている美しい妹がいる。 『甘味処夕さり』の面接を受けた菜々美は、和菓子の腕を美麗な店長の咲人に認められ、無事に採用になったのだが――。 結界に包まれた『甘味処夕さり』は、人界で暮らすあやかしたちの憩いの甘味堂で、和菓子を食べにくるあやかしたちの婚活サービスも引き受けているという。 戸惑いながらも菜々美は、『甘味処夕さり』に集まるあやかしたちと共に、前向きに彼らの恋愛相談と向き合っていくが……?

黄泉津役所

浅井 ことは
キャラ文芸
高校入学を機にアルバイトを始めようと面接に行った井筒丈史。 だが行った先は普通の役所のようで普通ではない役所。 一度はアルバイトを断るものの、結局働くことに。 ただの役所でそうではなさそうなお役所バイト。 一体何をさせられるのか……

【完結】御刀さまと花婿たち

はーこ
キャラ文芸
【第9回キャラ文芸大賞エントリー中】 刀の神さまを待ち受けていたのは、ひとびとを苦しめるあやかし退治、そして弟と元主と生みの親からの溺愛学園生活!? 現代日本のとある島。神社の蔵で目を覚ました少女・鼓御前(つづみごぜん)は、数百年の時をへて付喪神となった御神刀だった。 鼓御前の使命はひとつ。島にはびこる悪しきあやかしを斬ること。そのためには、刀をふるう覡(かんなぎ)と呼ばれる霊力者の存在が必要不可欠なのだという。 覡とは、あやかしに対抗する武装神職者のこと。しかし鼓御前のもとに集まった三人の覡候補は、かつて同じ刀であった弟、持ち主であった戦国武将、鼓御前を生み出した刀鍛冶が転生した男たちで。 鼓御前は彼らとともに、覡を養成する学び舎へ通うことになる。 ひとと刀は片時も離れず、寄り添うもの。まるで夫婦のように。個性豊かな『花婿候補』たちにかこまれながら、鼓御前は闘い、そしてひとのこころ──恋を知る。 時をこえて想いが花ひらく、現代和風ファンタジー。 ※この物語はフィクションであり、実在の人物・団体などとは関係ありません。 ※他サイトにて公開中の作品を、コンテスト用に大幅改稿したものです。 ※掲載しているイラストはすべて自作です。

大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~

菱沼あゆ
キャラ文芸
華族の三条家の跡取り息子、三条行正と見合い結婚することになった咲子。 だが、軍人の行正は、整いすぎた美形な上に、あまりしゃべらない。 蝋人形みたいだ……と見合いの席で怯える咲子だったが。 実は、咲子には、人の心を読めるチカラがあって――。

火輪の花嫁 ~男装姫は孤高の王の夢をみる~

秦朱音|はたあかね
キャラ文芸
王を中心に五家が支配する、綺羅ノ国。 五家に覡(かんなぎ)として仕える十六夜家の娘、久遠(くおん)は、幼い頃から男として育てられてきた。 都では陽を司る日紫喜家の王が崩御し、素行の悪さで有名な新王・燦(さん)が即位する。燦の后選びに戦々恐々とする五家だったが、燦は十六夜家の才である「夢見」を聞いて后を選ぶと言い始めた。そして、その夢見を行う覡に、燦は男装した久遠を指名する。 見習いの僕がこの国の后を選ぶなんて、荷が重すぎる――! 久遠の苦悩を知ってか知らずか、燦は強引に久遠を寝室に呼んで夢見を命じる。しかし、初めて出会ったはずの久遠と燦の夢には、とある共通点があって――? 謎に包まれた過去を持ち身分を隠す男装姫と、孤独な王の恋と因縁を描く、和風王宮ファンタジー。 ※カクヨムにも先行で投稿しています

後宮薬師は名を持たない

由香
キャラ文芸
後宮で怪異を診る薬師・玉玲は、母が禁薬により処刑された過去を持つ。 帝と皇子に迫る“鬼”の気配、母の遺した禁薬、鬼神の青年・玄曜との出会い。 救いと犠牲の狭間で、玉玲は母が選ばなかった選択を重ねていく。 後宮が燃え、名を失ってもなお―― 彼女は薬師として、人として、生きる道を選ぶ。

祓い姫 ~祓い姫とさやけし君~

白亜凛
キャラ文芸
ときは平安。 ひっそりと佇む邸の奥深く、 祓い姫と呼ばれる不思議な力を持つ姫がいた。 ある雨の夜。 邸にひとりの公達が訪れた。 「折り入って頼みがある。このまま付いて来てほしい」 宮中では、ある事件が起きていた。

オヤジ栽培〜癒しのオヤジを咲かせましょう〜

草加奈呼
キャラ文芸
会社員である草木好子《くさきよしこ》は、 毎日多忙な日々を送り心身ともに疲れきっていた。 ある日、仕事帰りに着物姿の女性に出会い、花の種をもらう。 「植物にはリラックス効果があるの」そう言われて花の種を育ててみると…… 生えてきたのは植物ではなく、人間!? 咲くのは、なぜか皆〝オヤジ〟ばかり。 人型植物と人間が交差する日常の中で描かれる、 家族、別れ、再生。 ほんのり不思議で、少しだけ怖く、 それでも最後には、どこかあたたかい。 人型植物《オヤジ》たちが咲かせる群像劇(オムニバス)形式の物語。 あなたは、どんな花《オヤジ》を咲かせますか? またいいオヤジが思いついたらどんどん増やしていきます!

処理中です...