やり直し女王陛下の逆転劇~今度こそ、最後の瞬間まで貴方を信じるわ~

あさぎかな@コミカライズ決定

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「──ッ、陛下!」

 鈍い音と真っ赤な血が世界を染めた。
 女王を庇い、その最期の最期まで忠義を尽くしてくれたのは、最初に裏切ったとされるディミトリ宰相だった。
 どうして……。君は私を真っ先に見限ったのに……。

 城が燃え落ち、今まさに自分の首が落とされる寸前で、その男は私の代わりに槍に貫かれたのだ。

「ディミトリ!」
「がはっ……。……申し訳ありません、女王陛下。……貴女の思い描いた国家ため支えたかったのですが、数手およばなかったようです」
「……っ」

 抱き寄せるように彼の腕の中に包まれ、追撃で打たれた矢から私を守るため自身が盾となった。もみくしゃに抱き寄せられた腕の中で、ディミトリの温もりに泣きそうになる。
 ジャスミンと鉄の入り混じった匂いが鼻についた。ああ、この香りは……いつも送られてくる手紙の……。じゃあ、君が……影でずっと私を……。

「女王を殺せ。そうすれば【黒薔薇病】も治まる!!」
「はっ!」

 逆光で指示をする騎士の顔が見えない。
 黒薔薇病? でもあれは呪いでもなんでもなくて……。

「愚かな……っ、あんなものを引き合いに出して……! 女王、私は……ぐっ」
「ディミトリっ……」

 彼の黒く長い前髪が私の頬に触れる。熱を孕んだ紫色の瞳に答える資格は私にはない。
 どうしてこんなにも私に尽くしてくれた彼を、その御心を信じて上げられなかったのだろう。敵の刃が振り落ちる寸前、私は自身の愚かさを呪った。

 なぜ私は君の話を、言葉を、その瞳を……真っ直ぐに受け止めなかったのだろう。あの時は君に子供扱いをされて、君の優しさを受け入れる余裕がなかったのだ。……すまない、ディミトリ。
 もし時を戻せるのなら──私は。


 ***


「王女! エカテリーナ様!」
「はっ!」

 顔を上げると、いつもの執務室だった。
 淡い薔薇とインクの匂い。
 ベージュ色の部屋に深紅の絨毯に広々とした仕事机。いくつかの書類の山が積み上がっている。
 よくある光景、懐かしい日々。
 そして──。

「また居眠りですか。公務中に眠くなるようであられるのなら、椅子に座らずに仮眠室で数分ほどお休みになってください。上の者が休まないと下の者まで休めないでしょうに。だいたい貴女はいつもいつも机に座って仕事ばかりをして、もう少しご自身の体のことを考えてください。国王が倒れてからお一人で奮起しても、周囲が付いてこなければ国は回りません。もっと周りを頼り、自身に何が出来るのかを見極め、任せるということを覚えてください。現状ですと教会との支援金問題、薔薇祭の準備、貴女様の即位に向けての準備、縁談、税金の見直しに──」

 あー、ディミトリの小言。……懐かしい。
 当時は口うるさいとしか思っていなかったが、それは自分が未熟だったからだ。勤勉である事、正しくあるべきだと理想を胸にしていたが、まったくの隙がないというのは案外息が詰まるものだ。

 何事においてもメリハリ、そして時に大雑把かつ茶番も必要なのだと年を重ねてから実感したし、余裕がないというのは本当によくない。
 ディミトリは宰相として国王を支えてきた自負がある。だからもっと寄り添い耳を傾ければ、よい国にできたのに……。あんな最期を……。
 ん? 最期? ……いやそれよりもディミトリの傷!
 思い出した瞬間、反射的に椅子を倒して立ち上がってしまった。

「王女? 顔色が悪いですがどうかされたのです。それに急に立ち上がるなど王族として、はしたな──」
「ディミトリ、今すぐ服を脱いで!」
「は? は!?」

 ディミトリは手にしていた書類を床に落としているが、今はそれどころではない。

「傷の確認をしなくては!」
「何を急に言い出したかと思えば──って、エカテリーナ様、何ベルトを緩めようとしているのですか!? ……っ、服を捲るな。やめないか、傷など何処にもっ……!」
「あら?」

 傷が……ない。生きている。胸元に引っ付いてみたが、心臓の鼓動が少し早い程度だわ。うん、無傷だわ。

「よかった……」
「──っ」

 ふとディミトリと目が合う。困惑と驚きに満ちていて、やってしまったと背筋が凍りつく。これは痴女扱いされかねない。
 それでも背中の服を捲り、包帯などもしていないことを確認すると満足して服から手を離した。けっして痴女ではないのだと自分に言い聞かせ「予知夢を見て、貴公が怪我をしていたので心配した」と誤魔化した。我ながら苦し紛れにも程がある。ああ、もっと違う言い回しがあっただろうに! なぜに私は可愛げのない言葉を口にしてしまうのか。

「何を言っているのですか、しっかり寝たほうがいいですね」と冷ややかな言葉が返ってくると思ったのだが、反論はなく、ディミトリの目元が少しだけ赤い。
 もしかして、ディミトリは風邪気味だった!? だから私にもしっかり休むようにと?

「エカテリーナ様。先ほどの行為を私以外の者でやったら、……国王に進言せねばなりません」
「ディミトリ。緊急性かつ初動を遅れれば手遅れになる場合があるのですから、負傷した場合は誰であろうと剥ぐつもりだ」
「いや剥ぐなよ!?」

 思わず素が出てしまったのか、ディミトリは叫んだ。
 いつもオールバックの前髪がくしゃくしゃになって垂れ下がる。艶のある黒髪に、紫色の瞳はどこか色香があった。

「し、失礼しました」
「ふむ。私としては、ディミトリは前髪があったほうが格好いいと思う。綺麗な黒髪だし、もったいない」
「──っ!?」

 何気ない言葉だったのだが、ディミトリは固まってしまった。
 ここが夢ではなさそうだと実感すると、窓硝子に映った自分の容姿に目を見張った。まだ若い十七ぐらいの少女の姿ではないか。
 ディミトリが未だ復活する前に机の書類から日付を確認する。
 王国が滅びる四年前。
 死に戻った? であれば……あの惨劇を今なら止められる!?

 王国が炎に包まれ、隣国の侵略を許してしまった末路は悲劇でしかない。
 この国は紫薔薇型の鉱石と、緑豊かな領土を持っている。そして王家を守護する十三の騎士長と宰相によって、さらなる発展を遂げるはずだった。

 最初の歪みは国庫の裏金の横領に、二重帳簿の発覚によってディミトリが責任を負わされるところからだ。
 次に私の結婚相手を決める縁談の席で、隣国を巻き込み揉めに揉めて破局。
 最大の問題は、黒薔薇病の蔓延からの崩壊。

 そういえば二重帳簿が発覚したのって私が十七の頃だった。薔薇祭が迫っていて、不眠不休で書類やら祭の準備などの手配をしていた頃……。確かハジムラドが突然執務室に入ってきて……。

「王女殿下! こちらに謀反者のディミトリはおりますか!」

 そうそんな感じ! ……って、今日、そして今!?
 ノックもなしに突然部屋に飛び込んできた騎士は、教会のハジムラド聖騎士長だ。品行方正、美しい顔立ちに、人懐っこい笑顔が人気の青年で、白銀の甲冑姿を見せる。
 金髪碧眼の彼に、固まっていたディミトリが鋭く睨んだ。

「ノックもなしに何のようだ? ハジムラド聖騎士長殿。王女陛下の御前だぞ」
「ディミトリ殿、いや謀反者のディミトリ! 宰相という立場を悪用し国家の金を利用し、二重帳簿を付けていただろう! これがその証拠だ。貴公の屋敷から出てきた」
「はぁ。いつから貴公ら教会は、家捜しをする泥棒になったのだか」

 展開が早いっ! ちょ、ちょっと待ってティータイムを挟むぐらいの時間が欲しかったのだが!
 投げ捨てたのは、確かに裏帳簿の書類だった。この後の展開は弁明するディミトリに対して、教会側の騎士達が捕縛しようとしていた。

 あの時は気が動転していたが、普通に考えてなぜ教会側がその情報を知っていたのだろう。というかこれは女王に即位して知ったけれど、国家では二重帳簿ないと困る。暗殺とか毒殺対策資金やら、闇組織への情報収拾や尾行に捕縛なんかも、表に金額を出せる訳ないからあるわけで……。

 国を運営する上では綺麗事だけでは駄目なのだと、女王に即位して思い知った。私の理想はあまりにも高潔で、夢物語に近かっただろう。
 けれどそれを諦めず、めげずに支え続けてくれたのはディミトリや教皇聖下、王国騎士長、近衛兵たちだった。

 みな最後まで尽くして、そして命を落とした。だからこそ自分が倒れる時は誰もいないと思っていたのに、最期の最期でディミトリが駆けつけてくれた時は、嬉しさと申し訳なさでいっぱいだった。

 ──って、感傷に浸っている場合ではない! それよりも、今だ! そもそも教会はこの国の祀る薔薇女神の信仰活動が目的で、聖騎士団は、魔獣との戦いにおいて必要だったから。……いつから聖騎士は許可も無く私の執務室に入るようになったのだ。大体この国に黒薔薇病が発症した時に教会が……。

 近衛兵の姿がない。前もって誰かが人払いをしていた? そんなことができるのは、それなりの地位がなければ無理だ。おそらく裏切った大臣がいるな。まあ、それは後だ。
 近衛兵に緊急招集の通知を秘密裏に送る。イヤリングに触れる振りをして招集魔導具のスイッチを入れる。

「王女殿下、今回の件は国王に話を仰ぎ、対処しようと思いますがよろしいでしょうか」

 考え込んでいた私に声をかけてきたのは、ディミトリだ。落ち着き払った顔をしており、全くもっていつも飄々としていた。

「(あれ? ?)……ええ」
「私を信じて頂きありがとうございます」

 少なくとも過去の、私の記憶にある彼はもの凄く焦っていた気がする。
 あの頃は国王である父が病で倒れ、王女である私がこの国を支えるべく執務室で仕事をしていた。そんな矢先にディミトリの不正が発覚したということを思い出す。
 あ。あれは私が取り乱したから?

「王女、ディミトリの言葉に耳を傾けてはいけません!」
「ハジムラド聖騎士長殿。我が屋敷への不法侵入、教会の越権行為、王城及び王女への面会申請を無視したことへの不敬、私への冤罪なども含めて対処させて頂こう」
「病に伏せっている国王陛下に無理をさせるつもりか!? 裏切り者のディミトリ、呪われた黒髪の男! ……王女殿下、彼を捕縛するように私にご命令ください!」

 ああ、そうだ。私が裏切られたと思ってショックを受けている隙に、この騎士はそう言って私から、いいや、この国から有能な人材を排除していった。この次は近衛兵たち、有能な文官も嫌疑をかけられ地方に飛ばされるか、暗殺……。

 思い出してきたら今回の企みは、王女を操り人形にするため画策した教皇聖下幼なじみの部下の一人、枢機卿セルゲイが主犯だったな。セルゲイはこの国を隣国に売り渡して、黒薔薇病の発生と同時期に他国に逃亡した。
 私を守ろうとした教皇聖下を苦しませたあの男も、この騎士も報いを受けてもらおう。

 指針が決まった瞬間、場の空気を変えようと何もないところから黒い扇を取り出す。王家の女だけが受け継ぐ王家の証。
 扇を開き、口元を隠しながら乱入してきたハジムラド聖騎士と、その後ろにいる騎士達を一瞥した。

「捕縛? 捕縛するのはハジムラド聖騎士長及び騎士達でしょう。ここを何処だと思っている? それともそれが教会の総意、教皇聖下の意志か?」
「そ、それは……」
「そもそもその帳簿は国家を脅かす……いずれくる疫病対策の予算として帳尻があるように、私の個人の財産から出してあることを隠すためにディミトリに頼んだものだ。あまり王女が有能だったら周囲は警戒するであろう? ……にしても現場を目撃したならともかく、宰相の屋敷に押し入り、国家の運営に関して教会の一騎士長が、私の政策に意見とは何事か?」
「そ、それは……」

 さすがに堂々と裏金のからくりを説明する必要も無いと思い、途中で言葉を変える。
 私が支持したなど、まったくそんなことはないのだが、ここは一番偉い自分が泥を被ることで切り抜けよう作戦に出た。ハジムラド聖騎士は言葉を濁し、ディミトリは深々と頷いている。ディミトリって意外と演技派だったようだ……。私のでまかせに一ミリも驚いてない。

「さて、ハジムラド聖騎士長。いつまで王女に対して剣を向けたままでいるつもりだ!」
「これは、王女に刃を向ける者ではなく……」
「今回、貴公を動かしたのは誰だ? 貴公か?」
「……さては謀ったな、ディミトリ!」

 なぜそうなる!?
 ハジムラド聖騎士はわなわなと震え、武力行使によってうやむやにするつもりだ。何という脳筋、浅慮さ。ここがどこだか分かっていないのだろうか。

「主犯はセルゲイだろうな。ハジムラド聖騎士長に付いて来た騎士たちに命じる、枢機卿とハジムラド聖騎士長を捕縛すれば、お前たちがこの王城に襲撃したことは不問にしよう」
「「「!?」」」

 ざわりと空気が一変し、連れてこられた騎士たちはハジムラド聖騎士長に刃を向ける。

「どうした? 教皇聖下の勅命がなければ動けぬか? 、聖騎士たち全員を捕らえよ。抵抗するのなら、多少傷つけてもかまわん」
「「「はっ! 王女殿下!」」」
「な!? いつの間に!? 話が違うではないか!!」

 近衛兵の突入により一気に形勢逆転し、更にハジムラド聖騎士長は部下の裏切りによって、あっけなく捕縛された。王国騎士団長のレフと、近衛兵長ジェエルが飛んできたのが大きかった。
 ジェエルは私が仮眠室を使うかもしれないからと、隣室で安全確認を行っていたところ、暗殺者と運悪く遭遇して駆けつけるのが遅かったという。レフは大臣の命令で護衛場所の変更を言われたが、魔導具の反応を察知して駆けつけてくれた。

 他の護衛騎士たちも、門塀で不審人物がいたため確認して遅れて来た。思えばこういった些細な問題を起こして、注意力を分散させる方法をとったのだろう。
 前回は見事に嵌められたのだ。

 もっともこの王城では、王族に対して刃を向けることが出来ない。そういう加護が働いている。国が傾かない限り、その加護は永久的に続く。だからこそ私の周囲にいた有能な者たちを一人ずつ引き離していったのだろう。
 ここが戦場にならなくてよかった。

「何故です、王女殿下。何故、この国で漆黒は呪われた色であり、罪人である象徴!! それなのに何故ディミトリを信じられるのですか!? 彼はいずれ国を裏切り、滅ぼす厄災です!」
「……」

 捕縛されたハジムラド聖騎士長の叫びに、カチンときた。
 ディミトリは澄ました顔をしているが、それは傷ついていないのではなく、今までに何度も似たような言葉を浴びせられて麻痺してしまっているだけだ。

 あの燃えさかる炎の中、王国が崩れ去る最期の瞬間まで、私の臣下でいてくれた騎士。その信頼を今ここで応えなくて、何が王と言うのだろうか!

「黙れ!」
「エカテリーナ様?」
「髪の色がなんだというのだ。それはこの国ではない、教会の決めた逸話の一節に出てくるだけで、彼の何処か罪人だというのか。東の民の髪は、このような美しい夜の帳に似た色をしている。それだけで教会のお前たちは、彼を差別するのか。薔薇女神の下、信仰では等しく平等では無かったのか? ディミトリ・ル・ルロワは、私の知る中で最高の忠臣であり、最期まで我が国を憂い、守り、慈しみ、発展させようと望み、行動する者だ! !」
「──っ」

 怒りで声が震えていたと思う。
 あの最期の時を思い出すと涙が出そうになる。王女らしくない、淑女らしくないと後でディミトリに小言を言われるのは、覚悟していた。それでもこの言葉は言わなければ気が済まなかった。

 私を最期の最期まで守ろうとした忠義者を、粗野に扱うことなど許さない。などと愚かにも熱血に語ってしまったのだ。それはもう扇をへし折らん勢いだった。

 ふと気づいた時には色々遅かった。傍にいた文官たちはハンカチを目に当てているし、ディミトリは固まっているし、その後の収拾が本当に大変だったのだ。
 出来ることなら全員の記憶から削除するか、私の記憶から抜き取って欲しい。


 ***


 今回の一件で、国内逃亡を図ろうとしていた枢機卿のセルゲイ、大臣数名も加担した証拠が出てきたので捕縛となった。彼の屋敷からは教会への寄付金などを横領した書類と金貨が出てきた。
 ハジムラド聖騎士長はセルゲイ枢機卿に加担し、折を見て国を出る予定だったと自供したそうだ。

 その夜の薔薇庭園で、ディミトリから諸々の報告を聞かされていた。
 薔薇庭園には青紫色の花が咲き誇り、灯り鳥という小さな小鳥が舞うことで幻想的に見える。そんな良い雰囲気の場所に、空気も読めずディミトリは謁見を申し出たのだ。

 こ、断れなかった……。気分転換にガゼボで薔薇の花を愛でつつ、黒薔薇病について調べていたのが仇となった。自室だったら眠ってしまったという言い訳が出来たのに!

「エカテリーナ様、此度の件、貴女様に気付かれる前に動いたつもりでしたが、お恥ずかしながら足下を掬われてしまいました」
「ふふっ、私にはそうは見えなかったけれどな」
「……貴女様に醜態を見せたのですから、私としては反省するべき点が幾つもあります」
「一人で背負いすぎるなと君は言う癖に、君は一人で背負い込むのだな」

 ディミトリは口を閉した。ここで会話が終わりかと思ったが、そうはならなかった。

「……しかし、あの黒衣の騎士の手紙が私だとよく気付かれましたね」
「(急激な話題転換! いつもならお小言がくるのに?)……あー、それは……」

 黒衣の騎士。
 王家を守護する十三の騎士長の中で、亡霊とも呼ばれる王家を守護する騎士の一人、それが黒衣の騎士だ。黒い全身甲冑を身に纏い、王家の影として代々仕えている。

 そんな彼は幼い頃に数度会った程度で、その後は手紙のやりとりを欠かさずに行っている、気を許せる友人の一人だ。
 それがまさか宰相だとは気付かなかった。雰囲気がまったく違うのだから、これはしょうがないと思う。声変わりだってしているし。
 あのジャスミンの香りを嗅ぐまでは、わからなかった。

「手紙に付いていたジャスミンの香りと、ディミトリの服を……捲ろうとしたときに香ったものが同じだったからだ(……本当は死に戻りしたときに気付いたとは言えない)」
「そうでしたか。……本来であれば、もっと早く名乗り出る予定でしたが……エカテリーナ様は、私のことを口うるさい臣下だと嫌っておられていましたので……。今日のことも、正直ハジムラド聖騎士長の弁を信じると思っていました」
「うっ……」

 そう前回は信じ切っていた……。王家にとっての二重帳簿の存在意義を把握していなかった私の落ち度だ。
 心の中で謝罪しつつも、狡猾にも上手く立ち回るため言葉を紡ぐ。

「父様が倒れて国が揺らぎかける時ほど膿は出てくるもの。まず私を孤立させるためにも、政治に熟知しているディミトリを失脚することを考えるのは正しいだろう。だからこそ私は愚鈍であり、浅慮な振る舞いをする必要があったのだ」

 全くもってそんなことはないのだが、ちょっと出来る王女風を装いたくて背伸びをする。いつもディミトリには、口うるさく言われ続けたのだ「実は凄いのだぞ」と思わせたかった。
 ちょっと褒めて貰えれば、よかったのだが──。

「流石は新進気鋭の賢王の娘であり、私が忠義を捧げるだけのお方だ」
「…………」

 え、信じた!? いや流石に十七そこらの娘がそこまで考えつかないと思うのだけれど!
 王女として微笑みながらも、心の中ではとんでもなく動揺しっぱなしだ。
 明日は雪が降るのでは?

「黒衣の騎士として書かれた手紙の裏を読み、今日まで道化を演じていたとは……。このディミトリ感服致しました」
「(私への信頼度がとんでもないことになっている。……って、そんなこと書かれていたのか全然気付かなかった。こ、これはまずい。このままだと本当に賢女として、ディミトリの信頼に応えられるようなことをしなければならなくなる……)そ、そうか。私であれば造作もないことだったぞ」

 私の馬鹿!
 失望されたくなくて見栄を張ってしまった自分を呪うものの、もう手遅れだった。

「今日ほど貴女に付いて来てよかったと思ったことはありません」
「(何て綺麗な眼差しでこちらを見るのだろう。……罪悪感が。あ、何だか胃が痛くなってきた……。私は私が死ぬ寸前までディミトリを裏切り者だと思っていたのに)……これからは、君をもっと大事にする」

 それは本音だ。
 黒衣の騎士が彼だったという事実に、困惑しているものの本音なのだが、まさか口に出ているとは思っていなかった。顔を上げたら男泣きしているディミトリに、自分の発言がいかに酷いものだったか気付いて弁解しようと試みる。

 これから大事にする何て言ったら、今まで大事にしていないと言っているようなものだし、なんら駒のように扱われて嫌だと思うかもしれない。

「え、あ、ディミトリ……その今のは、えっと」
「いえ、臣下に対してお心を砕いてくださるとは……嬉しくて、……っ、申し訳ありません」

 わあああ、とってもポジティブに受け取っている!? 私への信頼度がえぐい……。
 冷や汗を流したからか、喉が異様に渇くので、紅茶を飲んで気持ちを落ち着かせようと試みる。冷めないように魔法瓶に紅茶を淹れておいたので、カップに注ぐだけだ。
 一人で飲もうとしたが、それもそれで酷いのでは? という雰囲気を感じ、口元がもぞもぞする。

 そもそも私は……ずっと黒衣の騎士とお茶をしたいとは……思っていたのだ。
 パキパキ。
 私の感情の揺らぎによって青紫の薔薇が硬化していく。王家にある秘密の一つ。王族の王女の心が満たされる時、周囲の薔薇が差高品質の鉱石になる。採掘場から紫薔薇の鉱石の質も少しばかり影響を与えるという。

 自分の心内が分かり易いのが何だか悔しくて、鉱石に気付かれないようにディミトリの分のカップを用意する。

「…………っ、ディミトリも今日だけ特別だ。お茶を淹れるから飲んでいってくれ」
「はい。……有り難くちょうだいし、家宝に」
「するな。絶対に、ここで飲んでほしい」
「しかし、今後その様なことがあるか――」
「定期的に淹れるので、付き合ってくれないだろうか」
「承知しました。……私は果報者ですね」

 若干言わされた感が否めないけれど……、でもこんな風にディミトリと話が出来るようになったことは嬉しい。
 その日、臣下泣かせの王女の話は王城だけではなく、国中に広がった。美談なので個人的にはいい話なのだが、話が美化されまくって私の評価がもの凄く高くなってしまったのは、誤算だったのだけれど。



 *ディミトリ視点*

 幼い頃、黒髪と言うだけで罵倒される日々にうんざりしていた。俺は曾祖父の血が色濃く出たらしく、黒い艶のある髪を持って生まれた。
 ただそれだけ。

 他者と少し違うと言うだけで差別対象になり、宰相の息子だからと気にかける声にも辟易していた。
 こんな国など壊れてしまえばいい。

 この国の男子は必ず剣技を習う。そこで才能があれば騎士としての道を歩むことができる制度があった。身分関係なく剣技場では技術を身につけることが出来る。
 日々蓄積される不満を抱きつつ、稽古の終わりに父に書類を届けるため王城を訪れた。
 たしかこの庭園を……。

「ほら、これでもう飛べるはずよ」

 ふと薔薇庭園のガゼボにいたのは、幼い王女だった。侍女や近衛兵たちに囲まれて、守られて、甘やかされている彼女は、自分とは違う遠い存在。
 全てにおいて恵まれて、幸福である彼女は──なぜか、烏を両手で掴んで空に飛ばそうとしていた。

「は?」

 意味が分からなかった。
 忌み嫌う烏を。この国の王女が両手で掴んでいるのだ。しかも会話からして傷ついた烏を手当てした後、飛び立てるようにしている最中だという。
 本当に意味が分からなかった。

「君は自由なのだから、どこまでもおゆき」

 バサリと、漆黒の翼を広げて青空に飛び立つ姿に目を見開いた。美しい栗色の髪、青紫色の瞳は宝石のように美しい。
 初めて彼女を認識したのは、その時だった。
 変わり者の王女。その程度だった。

 次に出会ったのは稽古の終わりに、他の訓練兵に足をかけられて泥水に倒れ込んだときだった。起き上がって何処かの井戸で水浴びしなければ、とウンザリしていたときだ。

「もしかして、あの時の烏だろうか?」
「いやなんでだよ?」

 思わず悪態をついてしまった。
 しかし彼女は気にした様子もなく、躊躇いもなく手を差し出した。

「あの翼と同じ綺麗な黒い色をしていたから、恩返しに来たのかと思った」
「童話の読み過ぎだろう。……というか黒は不吉じゃないのか?」
「私は夜の帳も、黒いインクも、黒い背表紙の本も、黒服、特に黒の燕尾服も好きだが。大人っぽいし、そういうのが似合う大人になろうと思っている。君に髪も好ましい」

 たったそれだけの言葉に救われた。
 変わった王女だが、それでも懐の深さと大胆さ、何より人を惹きつけて笑顔にする力に尊敬と敬意を持って接していた。

 彼女が王位を継ぐのなら……彼女の望む国を見てみたい。そこには見た目による差別もなく、もっとよい暮らしを、国そのものを変えるだけのポテンシャルを持たれている!


 ***


「──やはり私の目に狂いはなかった!」
「その話、もう十三回目なのだけれど……。あと目は大分曇っているから、いい目薬を今度送るよ」
「私の目は曇ってはいない。ユーリーは現場を見ていないからそう言えるのだ」

 会員制の酒場で隣のカウンターに座っているのは、ユーリー・クヴィテラシヴィリ・レベデフ教皇聖下だ。

 灰色の髪に、琥珀色の瞳、中性的な顔立ちのせいで女性だと勘違いされがちだが男だ。そして俺よりも十も年上なのだが、俺とユーリーと、エカテリーナ様は幼なじみだったりする。
 もっとも三人が揃ってお茶会をしたのは、俺が黒衣の騎士を名乗る前の数カ月だけだ。
 ユーリーとは教会との軋轢を設けないためにも何かと腹を割って話をしていたりする。今回の失態については、地方への巡礼で対処が遅れたのだとか。

「今回の事は全面的に教会の不手際だ。……とは言え、エカテリーナと主従関係の結びつきが強くなってよかった」
「ああ、……あそこまでの才覚をお持ちだったとは、端倪たんげいすべからざる人物であられる」
「うーん。あの子にそこまでのポテンシャルがあるとは思えないけれど、でも君が支えるのなら良いんじゃないかな」
「ああ、この身が朽ちるまで、彼女の目指す国を支え──」
「あー、それもだけれど、人生の伴侶としてもありなんじゃないかなって」
「ぶっ!?」

「ぶっ……ごほごほっ」と、同じタイミングで噎せる声が聞こえた。エカテリーナ様に似ていたが、きっと気のせいだろう。いやあの方がこんな所にいるはずがない。

「黒衣の騎士として、彼女の理想の騎士を再現するために頑張っていたじゃないか。エカテリーナが女王陛下となることが確定し、国王が病に伏せったのだから更に縁談は増えるぞ。……と言うか、よく今まで彼女への縁談が出てこなかったな」

 国王が娘を溺愛しているので、幼少期は全力で縁談をはねのけていたらしい。現在は俺がその役割を引き継いでいる。

「ああ、他国からの縁談を吟味しつつ、かの国に対して条件が良さそうな令嬢を手配しているので、今の所問題ない。……マスター、いつもの」
「季節限定パフェですね、かしこまりました」
「……今までは良いかもしれないが、今回の帝国からの縁談は面倒だと思うよ。下手すれば戦争だ」

 珍しく話を続けるので、僅かに眉をひそめた。

「それは分かっているが、それならば一度縁談の席を設けた上で条件が合わなかったと断れば良いだろう」
「いや、それだとこちらに火の粉が掛かるかもしれない。現在、帝国もまた王位継承問題で頭を抱えているし、王子も十人以上いる。そんな後継者問題がある人物を国に招きたくないし、巻き込まれるのは得策ではない。だからさっさと君がエカテリーナとの結婚をすませるべきだ。相手は僕でもいいけれど……資格ならディミトリだってあるだろう」

 普段は天使のように微笑むことが多いが、この手を話すときの彼はとても冷ややかな目で物事を捉えて判断する。

「私はっ……しかし立場的にも、状況的にも俺がユーリーぐらいか」
「そうそう。僕はエカテリーナも好きだけれど、君も気に入っているからね」
「気持ちは有り難いが、……俺はそっちの趣味はないのだが」
「そう言う意味じゃない! 何で時々天然が入るんだよ!?」
「ユーリーが紛らわしいことを言うからではないか」
「もーやだー、僕は普通なことを言っているのに! マスター、鶏の激辛炒め一つ!」
「かしこまりました」

 それからいつもの季節限定パフェを頬張りながら考えた。
 このバニラアイスの濃厚さと、クリームの甘すぎないバランスが最高なのだ。もっと言えばフルーツの蜂蜜漬けも控えめに良いって神だと思う。エカテリーナに告白するのも吝かではないのだが、大きな問題がある。

「彼女の前だと真顔で、ついキツい物言いになってしまうのは、どうすれば良いだろうか」
「今、仕事場でシミュレーションしたよね? 馬鹿なのかな」
「辛いものを食べている時は、いつにも増して辛口じゃないか」
「そうかな? とりあえず食事に誘うとか?」
「しかしどう食事に誘えば──」
「面倒くさいな。甘い物が食べたいから、一緒に店に来てくれないかとかでいいんじゃないか!」
「だがそんなことをしたら、俺が甘い物好きだとバレてしまう」
「大分前からそれはバレていると思うから大丈夫だよ。黒衣の騎士の時に、よく菓子が送られてきていたと言っていただろう」
「そう言えばそうだった」

 プリン部分にスプーンを入れながら、彼女と甘い物が食べられることを想像したら自然と口元が緩んだ。まさかそんな未来を想像する日が来るとは思っていなかったので、今の幸福を噛みしめる。


 *エピローグ*


 その後、午後三時過ぎに甘い物を用意してお茶休憩を挟んだ結果、今まで以上に仕事の回転率が上がった。意外と文官たちは甘い物が好きだと知り、騎士達は水分補給しやすい飲み物や軽食を提供したらかなり好評だという結果を得た。

 今日はティラミスと焼き菓子を用意してもらい、侍女たちに紅茶を淹れて貰う。
 この辺りの出資は私の持っていた、正確にいえば生み出した鉱石を一つ売ることで三カ月は賄えた。本格的に導入する際の予算は改めて詰める必要があるのだが、みなが喜んでくれる姿はなかなかに心が温かくなるものだ。
 ……こういう感じで、ディミトリと仕事以外で話す機会を作れたのはよかったのだな。

「エカテリーナ様?」
「ふふっ、もう少し早くこのような場を設けていればよかったと思ってな。いい国とはこの国で暮らす者たちが笑って過ごせるように、私たちもまたこの国の一人として貢献し、自身の環境にも笑顔のというものが必要なのだろう」
「そうですね。以前の貴女は国王が倒れて余裕が無かった。……我々も同じように神経質になりがちだったと思います」

 あの一件から、ディミトリは少し目元や口元に笑みを浮かべることが増えたように思う。偶々黒薔薇病の情報収集のため隠しバーに言った時に、ディミトリが甘党好きだというのを知ったのだ。

 思えば黒衣の騎士は甘い物が好きだった。「可愛らしい菓子店に男一人では入れない」と嘆いていたので、季節の変わり目にはよく新作などの菓子を手配していた。

 そして何気に甘い物を食べているときのディミトリが、ちょっと可愛いのだ。幼い頃であった時の眼差しを思い出して、なんで今まで思い出せなかったのかと少しへこんだが。
 まあ、伴侶云々は……あの黒衣の騎士がディミトリなのなら、私としては願ってもないのだけれど……これは私から言うべきだろうか。もし国の運営のための政略結婚として致し方なく提案する場合もある。そう考えると心の準備をしておくべきなのだろうか。

「エカテリーナ様、……私は貴女の思い描いた国家を支えるため、日々精進しようと思っていります」

 それは前回、彼が私に告げた言葉と似ていた。
 けれど──。

「つきましてはエカテリーナ様の隣で、夫として末永く傍にいたいと考えておりますが──前向きにお考えいただけないでしょうか?」
「──っ!?」

 まさか真正面から来るとは思わず、一瞬変な声が出そうになったが堪えた。

『がはっ……。……申し訳ありません、女王陛下。……貴女の思い描いた国家ため支えたかったのですが、数手およばなかったようです』

 そう言ったディミトリの言葉を思い出し、あの未来にならなくてよかったと心から思った。数手足りないどころか、今回は完璧ではないか。
 少し悔しいが、黒衣の騎士がディミトリだという時点で、彼の真っ直ぐすぎる忠節を目の当たりにしてチェックメイトがかけられているという気がしないでもない。

 艶やかな黒髪に触れたい気持ちを堪えて、しっかりと彼に向き合う。やっぱり彼は前髪があった方がいいと思った。

「ディミトリ」
「はい」
「これからも私を支えてほしい。臣下として、夫としても。君のことをもっと知りたいのだ。……だから、今後もし誰かにその髪のことで文句やら酷いことを言われたら、ちゃんと私に報告してくれるだろうか。私も好いている者を守りたいのだ」
「エカテリーナ様……貴女は」
「む。あ、えっと、その髪に触れたいと思ったらつい、違うことまで話してしまった……。ええっと、とりあえず、政治的な部分から見て──婚約から始めるべきなのだろうか?」

 紫の美しい目を輝かせ、ディミトリはくしゃりと微笑んだが、すぐに獣のような目に戻る。
 微かに頬が赤いので、怒っているのではないだろう。

「いえ。政治的にも、私的にも、ここは電撃結婚に致しましょう。式はそうですね、明日がちょうどよいかと」
「明日!? 明日は──」
「薔薇祭と、おあつらえ向きではないですか、エカテリーナ様」

 計算していたのかと思い、ムッとしてしまったが触れた唇の甘さに簡単に消えてしまった。
 これでまた一つ彼と私、そしてこの国の未来が変わっただろう。まだ解決していない問題や、この先に起こる厄災もディミトリとなら越えられる。

 部屋に飾ってある紫薔薇の鉱石が、きらりと光ったような気がした。
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