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参 二人きりの朝を迎えて
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◆
ルーナはそろそろ今日の準備をしようと階段に足を掛けた時、ラスに呼び止められる。
「俺の荷物を取りに帰りたい。一度宿に戻ってもいいか?」
ルーナはハッとして、もちろんと頷いた。
ラスのシャツはすっかり乾いていたので、彼は外出出来るようシャツを羽織り身嗜みを整えた。
そして、ラスに続いてルーナは外に出る。まだ、早い時間の朝だからか街中で見かける人の数は少なかった。
しかし、すでに活動している人たちは一般住人ではなく、殆どが冒険者達なので、ルーナとラスが並んで歩く姿を見て皆目を丸くしていた。
(あぁ…絶対に誤解されてる…)
自分達に興味津々な視線を向けながらコソコソと囁き合う彼らを見て、ルーナは居心地悪そうな表情を浮かべながらラスに並んで歩く。
ルーナがチラリと隣を歩くラスに目を向けると、彼は何も気にしていないような平然とした顔で歩いている。
ふと、彼の瞳がルーナを見た。
「…なんだ?」
『ルーナが俺を見てる…』
不機嫌そうな鋭い目で睨まれるルーナだったが、彼の心の声はルーナと目が合った事に歓喜しているようだった。
「……なんでもない」
ルーナはすぐに目を逸らして前を見る。
ラスは、表面上では睨んだり冷たい視線を向けたりと嫌っているような素振りを見せるのに、本音は全く逆のことを考えている。
これまでルーナは、自分がラスに好かれているなんて微塵も思ったことはなく、女嫌いとはいえ他の女性に比べてもルーナは特にあからさまに避けられていたので、かなり嫌われているとすら思っていた。だから…
(なんか、戸惑う…)
本音と建前が違う彼に、ルーナはモヤモヤと頭を悩ませた。正直、彼のちぐはぐさが気になって仕方なかった。
これまで、言葉も数えるほどしか交わしたことのないラスについて悩んだり深く考えたりした事なんて無かったのに…ルーナは昨日の晩から、彼のことで頭がいっぱいだ。
「——ここだ」
ラスの声にルーナはハッとする。顔を上げれば、この街で一番大きな宿屋の前に到着していた。
ラスはチラリとルーナに目を向けると、さっさと宿の中へと入っていった。ルーナも慌てて彼の後ろ姿を追う。
さすがは最大級の宿ということで、室内に入ると部屋の扉が多く並んでいた。ラスは無言のまま先を進み、ルーナも後を追いかけていくと、彼は三階にあるとある部屋の前で足を止めた。
「少し待っていろ。すぐに準備してくる」
ラスがルーナを振り返り言う。ルーナは頷きながら、扉を開けて部屋の中へと入っていくラスを見つめていた。
「———だから、俺があいつに言ってやったんだ」
「へぇ、なんて?——」
ふと、複数人の声が聞こえてくる。距離的に階段を登ってきているようだ。ルーナは目を丸くして、慌てて自身のローブのフードを深く被った。
ラスの部屋の前で待っている姿を見られたら、ルーナとラスは一体どんな関係なんだと疑問に思われるどころの騒ぎじゃない。
それはもう、二人は特別な関係ですと言っているようなもので、ルーナがどんなに必死に違うと言っても、もはや言い逃れ出来ないほどに決定的な証拠となるだろう。
アワアワと慌てるルーナの様子を見ていたラスが、咄嗟に彼女の腕を掴み部屋の中へと引き込む。
パタン。
ラスの部屋の扉は閉まり、その前を数人の男達がお喋りしながら通り過ぎていった。
「……あ、の……ラスさん…」
ルーナは顔を真っ赤にして、か細い声で彼を呼んだ。
「抱きしめる必要、あります…?」
自分の背に回された逞しい腕。肩と腰をしっかり掴むラスの手が大きくて温かい。
腕を引かれて飛び込むようにラスの部屋の中へと入ったルーナは、そのままの勢いで彼の胸の中へと飛び込んでしまった。そして、そんな彼女をラスはしっかりと抱き止めたのだった。
ルーナはそろそろ今日の準備をしようと階段に足を掛けた時、ラスに呼び止められる。
「俺の荷物を取りに帰りたい。一度宿に戻ってもいいか?」
ルーナはハッとして、もちろんと頷いた。
ラスのシャツはすっかり乾いていたので、彼は外出出来るようシャツを羽織り身嗜みを整えた。
そして、ラスに続いてルーナは外に出る。まだ、早い時間の朝だからか街中で見かける人の数は少なかった。
しかし、すでに活動している人たちは一般住人ではなく、殆どが冒険者達なので、ルーナとラスが並んで歩く姿を見て皆目を丸くしていた。
(あぁ…絶対に誤解されてる…)
自分達に興味津々な視線を向けながらコソコソと囁き合う彼らを見て、ルーナは居心地悪そうな表情を浮かべながらラスに並んで歩く。
ルーナがチラリと隣を歩くラスに目を向けると、彼は何も気にしていないような平然とした顔で歩いている。
ふと、彼の瞳がルーナを見た。
「…なんだ?」
『ルーナが俺を見てる…』
不機嫌そうな鋭い目で睨まれるルーナだったが、彼の心の声はルーナと目が合った事に歓喜しているようだった。
「……なんでもない」
ルーナはすぐに目を逸らして前を見る。
ラスは、表面上では睨んだり冷たい視線を向けたりと嫌っているような素振りを見せるのに、本音は全く逆のことを考えている。
これまでルーナは、自分がラスに好かれているなんて微塵も思ったことはなく、女嫌いとはいえ他の女性に比べてもルーナは特にあからさまに避けられていたので、かなり嫌われているとすら思っていた。だから…
(なんか、戸惑う…)
本音と建前が違う彼に、ルーナはモヤモヤと頭を悩ませた。正直、彼のちぐはぐさが気になって仕方なかった。
これまで、言葉も数えるほどしか交わしたことのないラスについて悩んだり深く考えたりした事なんて無かったのに…ルーナは昨日の晩から、彼のことで頭がいっぱいだ。
「——ここだ」
ラスの声にルーナはハッとする。顔を上げれば、この街で一番大きな宿屋の前に到着していた。
ラスはチラリとルーナに目を向けると、さっさと宿の中へと入っていった。ルーナも慌てて彼の後ろ姿を追う。
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「少し待っていろ。すぐに準備してくる」
ラスがルーナを振り返り言う。ルーナは頷きながら、扉を開けて部屋の中へと入っていくラスを見つめていた。
「———だから、俺があいつに言ってやったんだ」
「へぇ、なんて?——」
ふと、複数人の声が聞こえてくる。距離的に階段を登ってきているようだ。ルーナは目を丸くして、慌てて自身のローブのフードを深く被った。
ラスの部屋の前で待っている姿を見られたら、ルーナとラスは一体どんな関係なんだと疑問に思われるどころの騒ぎじゃない。
それはもう、二人は特別な関係ですと言っているようなもので、ルーナがどんなに必死に違うと言っても、もはや言い逃れ出来ないほどに決定的な証拠となるだろう。
アワアワと慌てるルーナの様子を見ていたラスが、咄嗟に彼女の腕を掴み部屋の中へと引き込む。
パタン。
ラスの部屋の扉は閉まり、その前を数人の男達がお喋りしながら通り過ぎていった。
「……あ、の……ラスさん…」
ルーナは顔を真っ赤にして、か細い声で彼を呼んだ。
「抱きしめる必要、あります…?」
自分の背に回された逞しい腕。肩と腰をしっかり掴むラスの手が大きくて温かい。
腕を引かれて飛び込むようにラスの部屋の中へと入ったルーナは、そのままの勢いで彼の胸の中へと飛び込んでしまった。そして、そんな彼女をラスはしっかりと抱き止めたのだった。
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