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参 二人きりの朝を迎えて
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しっとりとした男の体温を全身に感じて、ルーナの体も熱くなっていった。顔を上げれば、すぐそこにラスの顔がある…だから、ルーナは顔を上げられずに必死に目を伏せる。
静かな薄暗い部屋の中、ラスの低い声がルーナの無防備な耳元で囁かれた。
「…お前が俺の胸に飛び込んできたんだろ」
『ルーナの心臓がドキドキしている音が伝わってくる…』
ルーナは慌ててラスの胸を強く押し離れると、「それはラスさんが、急に腕を引っ張るから…!」と、真っ赤な顔で抗議する。
まるで狼に捕まった兎のように、ラスを見上げて縮こまるルーナの様子を見て、ラスはふっと笑った。
彼はそれ以上何も言わずに、ルーナから離れて必要な荷物を鞄に詰め込み始めた。ルーナはドキドキと、いつまでも鎮まらない心臓を押さえてその場に立ち尽くす。
時々ラスがこちらに視線を向けてくるので、ルーナはその視線と目を合わせると、その度に彼の喜ぶ声が聞こえてくる。
『俺の部屋にルーナがいるなんて…』
『本当にルーナは可愛いよなぁ』
『あ、また目が合った。…さっき、もう少し抱きしめておけば良かった』
(も、もうやめてぇ…!)
彼の心の声が聞こえるたびに、ルーナの方が恥ずかしくなってくる。
彼女は真っ赤な顔で頭を抱えたくなったが、気を紛らわせようと改めてラスの自室をぐるりと見渡した。
ラスの部屋は散らかっておらず、きちんと整理整頓された綺麗な部屋だった。
「へ…部屋の中、ちゃんと片付いてるね?」
雰囲気を変えようとルーナが話しかけると、ラスは「まぁな」と素っ気なく答えた。
『散らかっていると、落ち着かない性分だからな』
すぐにラスの本心が聞こえてくる。
「そうなんだ。私は、整理整頓が苦手で…」
と、ルーナの恥ずかしそうな言葉を聞きながら、ラスは彼女の家の地下室の事を思い出していた。
棚に乱雑に、適当に並べられていた魔法薬の材料たち。自分達が呪われた原因は、大蛇のゾンビのせいとは言え、もう少し棚の中を丁寧に整理整頓していれば、もしかしたら事態はもう少し良くなっていたんじゃないか…なんて事を、ラスはふと思ってしまった。
ラスの心の声が聞こえるルーナは、慌てた様子で話題を変えようと他に話のネタになるものはないかと周りを見渡した。
目に入ったのは壁一面を占拠する大きな本棚。備え付けの棚には、もう入りきれないほどの本が並んでおり、数冊の分厚い本が机の端に積み重ねられていた。
ルーナは彼がどんな本を読んでいるのか気になり、本棚の前に行く。そこには、聖書を初めとした神を賛美する書物が幾つかある他に、彼の趣味と思われる一般的に流通する詩集や書物がたくさんあった。
机の上に目を向けると、頁を広げたまま置かれている聖書と、そのすぐ隣には紙と羽ペンが置かれていた。どうやら、聖書の内容を書き写してあるみたいだ。
書き途中の写本されたラスの字を見ると、彼がいかに上品で教養があるのか現すように、とても繊細で美しい字だった。
(…綺麗な字…)
「心を落ち着けたい時や忍耐時、精神統一したい時はよく聖書を書き写して精神を鍛えているんだ」
ルーナが感心しながらラスの字に見惚れていると、突然後ろからラスの声がしたので驚いて後ろを振り返る。するとそこには、準備が整ったらしいラスが荷物を抱えてルーナを見つめていた。
やっとまともな服を着たラスがそっとルーナの隣に立ち、広げたままの聖書を丁寧な手付きで閉じた。
「…聖騎士としての修行? 大変だね…」
ルーナが取り敢えずそう答えると、ラスは不本意そうな表情で微笑を浮かべてルーナを見下ろす。
「……あぁ、本当にな」
『お前と出会ってからというもの…俺は毎晩、聖書を写本して心を落ち着かせている』
そう言って、ラスは閉じた聖書を掴み荷物が詰められた袋の中へと入れると、扉の方へと歩いて行った。
「行くぞ」
チラリとルーナに目配せして、ラスは先に部屋から出て行ってしまったのだった。
(私のせいで写本してるって、どういう意味…?)
ラスの心の声が聞こえているはずなのに、ルーナには彼の本心がよく分からない。何故、彼は自分のせいで毎晩に精神統一を行なっていたのだろう…。
静かな薄暗い部屋の中、ラスの低い声がルーナの無防備な耳元で囁かれた。
「…お前が俺の胸に飛び込んできたんだろ」
『ルーナの心臓がドキドキしている音が伝わってくる…』
ルーナは慌ててラスの胸を強く押し離れると、「それはラスさんが、急に腕を引っ張るから…!」と、真っ赤な顔で抗議する。
まるで狼に捕まった兎のように、ラスを見上げて縮こまるルーナの様子を見て、ラスはふっと笑った。
彼はそれ以上何も言わずに、ルーナから離れて必要な荷物を鞄に詰め込み始めた。ルーナはドキドキと、いつまでも鎮まらない心臓を押さえてその場に立ち尽くす。
時々ラスがこちらに視線を向けてくるので、ルーナはその視線と目を合わせると、その度に彼の喜ぶ声が聞こえてくる。
『俺の部屋にルーナがいるなんて…』
『本当にルーナは可愛いよなぁ』
『あ、また目が合った。…さっき、もう少し抱きしめておけば良かった』
(も、もうやめてぇ…!)
彼の心の声が聞こえるたびに、ルーナの方が恥ずかしくなってくる。
彼女は真っ赤な顔で頭を抱えたくなったが、気を紛らわせようと改めてラスの自室をぐるりと見渡した。
ラスの部屋は散らかっておらず、きちんと整理整頓された綺麗な部屋だった。
「へ…部屋の中、ちゃんと片付いてるね?」
雰囲気を変えようとルーナが話しかけると、ラスは「まぁな」と素っ気なく答えた。
『散らかっていると、落ち着かない性分だからな』
すぐにラスの本心が聞こえてくる。
「そうなんだ。私は、整理整頓が苦手で…」
と、ルーナの恥ずかしそうな言葉を聞きながら、ラスは彼女の家の地下室の事を思い出していた。
棚に乱雑に、適当に並べられていた魔法薬の材料たち。自分達が呪われた原因は、大蛇のゾンビのせいとは言え、もう少し棚の中を丁寧に整理整頓していれば、もしかしたら事態はもう少し良くなっていたんじゃないか…なんて事を、ラスはふと思ってしまった。
ラスの心の声が聞こえるルーナは、慌てた様子で話題を変えようと他に話のネタになるものはないかと周りを見渡した。
目に入ったのは壁一面を占拠する大きな本棚。備え付けの棚には、もう入りきれないほどの本が並んでおり、数冊の分厚い本が机の端に積み重ねられていた。
ルーナは彼がどんな本を読んでいるのか気になり、本棚の前に行く。そこには、聖書を初めとした神を賛美する書物が幾つかある他に、彼の趣味と思われる一般的に流通する詩集や書物がたくさんあった。
机の上に目を向けると、頁を広げたまま置かれている聖書と、そのすぐ隣には紙と羽ペンが置かれていた。どうやら、聖書の内容を書き写してあるみたいだ。
書き途中の写本されたラスの字を見ると、彼がいかに上品で教養があるのか現すように、とても繊細で美しい字だった。
(…綺麗な字…)
「心を落ち着けたい時や忍耐時、精神統一したい時はよく聖書を書き写して精神を鍛えているんだ」
ルーナが感心しながらラスの字に見惚れていると、突然後ろからラスの声がしたので驚いて後ろを振り返る。するとそこには、準備が整ったらしいラスが荷物を抱えてルーナを見つめていた。
やっとまともな服を着たラスがそっとルーナの隣に立ち、広げたままの聖書を丁寧な手付きで閉じた。
「…聖騎士としての修行? 大変だね…」
ルーナが取り敢えずそう答えると、ラスは不本意そうな表情で微笑を浮かべてルーナを見下ろす。
「……あぁ、本当にな」
『お前と出会ってからというもの…俺は毎晩、聖書を写本して心を落ち着かせている』
そう言って、ラスは閉じた聖書を掴み荷物が詰められた袋の中へと入れると、扉の方へと歩いて行った。
「行くぞ」
チラリとルーナに目配せして、ラスは先に部屋から出て行ってしまったのだった。
(私のせいで写本してるって、どういう意味…?)
ラスの心の声が聞こえているはずなのに、ルーナには彼の本心がよく分からない。何故、彼は自分のせいで毎晩に精神統一を行なっていたのだろう…。
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