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第13話:ウォルトン家のメイド5
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買い出しを進めていくと、王城から来ているメイドということもあり、どこに行っても声をかけられた。
街の噂になっている婚約破棄騒動について、誰もが興味津々なのだ。
当然、雇用される際に守秘義務が発生するし、メイドが言いふらすはずもない。素直に答えることはできないので、何も知らされていないと答えるしかなかった。
噂の出所が特定され、ロジリーの拷問が始まると思うと……、とても言おうとは思わないだろう。そういった意味でも、ロジリーの存在は大きい。
私が当事者のシャルロットだとバレないと思うけれど、買い出しは早く済ませよう。
グレースの部屋の模様替えを行うため、ソフィアを中心にして買い物を進めていく。
メイド二人だけで持ち運ぶのは難しいので、代金だけ先払いして、明日の朝に王城へ届けてもらう予定だ。
大量に購入したこともあって、店主もホクホク顔になっている。
「今日は話のわかるメイドが来てくれてありがてえな。毎晩冷やかしで来る連中にも見習ってほしいもんだぜ」
不穏な話を聞かされ、ソフィアと顔を合わせて、互いに首を傾げた。
夜会でも開かれない限り、メイドが夜間に出歩くことはない。王城では、貴族令嬢がメイドや女官として働く者が多いので、誘拐事件に巻き込まれるように控える決まりがあるのだ。
どうしても出歩かなければならない時は、執事や騎士に頼むだろう。メイドが毎晩店に来るというのは、明らかに不自然だった。
「失礼ですが、そのメイドが何かされましたか?」
「何もしねえから問題なんだ。詰まらねえ話をペチャクチャしゃべって帰るだけで、邪魔にしかならん。聖女の方が王妃の器だの、ローズレイ家は落ちぶれただの、好き放題言いやがって。もっと世間を見てから言えって話だ」
まさか街に広がる噂を流しているのは、王城で働くメイドなの……? そこまで露骨な行動を取るとは思えないけれど、店主が嘘をつくとも思えない。
ウォルトン家が事前に準備していたとはいえ、婚約破棄の情報が広がるのは異様に早かった。王都中を騒がす内容でも、ここまで正確には広がらなかったはず。
そういった意味では、王城に勤務するメイドが内部情報を広めていた可能性は十分に考えられる。そして、それが可能なのはウォルトン家のメイドだけだった。
原則として、王城で雇用されているメイドは寮で寝泊まりする。今は私もソフィアと同じ部屋で過ごしているが、ウォルトン家のメイドは違う。
ウォルトン家が持つ王都の屋敷から通い、王城と屋敷の兼任業務という形になっているのだ。毎晩誰にも知られずに抜け出すことができるとすれば、彼女たちしかいない。
なりふり構わず噂を流すことに集中しすぎたみたいね。いつでも切れる捨て駒なのかもしれないけれど、このチャンスを見過ごすわけにはいかないわ。
「その迷惑なメイドですが、一週間ほど前から来店されていませんか?」
「んー……確かにちょうどそれくらいだな」
目を合わせたソフィアが頷いてくれたので、同じことを考えているだろう。
ちょうど時系列が一致するし、ウォルトン家のメイドで間違いない。それなら、やることは一つだ。
「なんだ? 嬢ちゃんたちの知り合いか?」
「王都には貴族の屋敷が多いので、王城に勤務するメイドと断定することはできません。でも、一度上の者に相談してみます」
「頼むぜ。最初はコソコソしてばかりで、万引きしようとしているのかと思っていたからな」
「いけませんね。メイドの嗜みを持ってもらいたいものです」
ウォルトン家のメイドたちも、守秘義務違反という認識はあるのだろう。悪事を働いていると思うため、コソコソと行動を取っているのだ。
もしかしたら、彼女たちが主君に不信感を抱いている可能性もある。付け入る隙が大きいほど、罠に引っ掛かりやすくなるし、思った以上にチャンスかもしれない。
良い情報が入り、思わず頬を緩めると、店主の目が細くなった。
「一つだけ言っておくが、嬢ちゃんたちは正しく生きるんだぞ。ローズレイ家が上に立つ年っていうのはな、絶対に悪事は許されねえんだ。これからは真面目に生きた奴が評価される世の中になるぜ」
「……そうですね。肝に命じておきます」
想定外の激励を受けた私は、身が引き締まるような思いでいっぱいだった。
この国に長く住む人ほど、三大貴族というものをよく理解している。悪を断罪することがローズレイ家に与えられた役割であり、誰であっても容赦はしない。
ゆえに、黒い噂が流れるウォルトン家は受け入れられていないのだ。ローズレイ家を陥れた事実を肌で感じ、真面目に生きることを誓う国民がいるのは、それだけ大きな影響力があるという証拠になる。
そんな人たちの声に応えるためにも、ローズレイ家は立ち上がらなければならなかった。しかし、今の私だけではできないこともある。
「ソフィアさん。少しお願いを聞いてもらってもいいですか?」
街の噂になっている婚約破棄騒動について、誰もが興味津々なのだ。
当然、雇用される際に守秘義務が発生するし、メイドが言いふらすはずもない。素直に答えることはできないので、何も知らされていないと答えるしかなかった。
噂の出所が特定され、ロジリーの拷問が始まると思うと……、とても言おうとは思わないだろう。そういった意味でも、ロジリーの存在は大きい。
私が当事者のシャルロットだとバレないと思うけれど、買い出しは早く済ませよう。
グレースの部屋の模様替えを行うため、ソフィアを中心にして買い物を進めていく。
メイド二人だけで持ち運ぶのは難しいので、代金だけ先払いして、明日の朝に王城へ届けてもらう予定だ。
大量に購入したこともあって、店主もホクホク顔になっている。
「今日は話のわかるメイドが来てくれてありがてえな。毎晩冷やかしで来る連中にも見習ってほしいもんだぜ」
不穏な話を聞かされ、ソフィアと顔を合わせて、互いに首を傾げた。
夜会でも開かれない限り、メイドが夜間に出歩くことはない。王城では、貴族令嬢がメイドや女官として働く者が多いので、誘拐事件に巻き込まれるように控える決まりがあるのだ。
どうしても出歩かなければならない時は、執事や騎士に頼むだろう。メイドが毎晩店に来るというのは、明らかに不自然だった。
「失礼ですが、そのメイドが何かされましたか?」
「何もしねえから問題なんだ。詰まらねえ話をペチャクチャしゃべって帰るだけで、邪魔にしかならん。聖女の方が王妃の器だの、ローズレイ家は落ちぶれただの、好き放題言いやがって。もっと世間を見てから言えって話だ」
まさか街に広がる噂を流しているのは、王城で働くメイドなの……? そこまで露骨な行動を取るとは思えないけれど、店主が嘘をつくとも思えない。
ウォルトン家が事前に準備していたとはいえ、婚約破棄の情報が広がるのは異様に早かった。王都中を騒がす内容でも、ここまで正確には広がらなかったはず。
そういった意味では、王城に勤務するメイドが内部情報を広めていた可能性は十分に考えられる。そして、それが可能なのはウォルトン家のメイドだけだった。
原則として、王城で雇用されているメイドは寮で寝泊まりする。今は私もソフィアと同じ部屋で過ごしているが、ウォルトン家のメイドは違う。
ウォルトン家が持つ王都の屋敷から通い、王城と屋敷の兼任業務という形になっているのだ。毎晩誰にも知られずに抜け出すことができるとすれば、彼女たちしかいない。
なりふり構わず噂を流すことに集中しすぎたみたいね。いつでも切れる捨て駒なのかもしれないけれど、このチャンスを見過ごすわけにはいかないわ。
「その迷惑なメイドですが、一週間ほど前から来店されていませんか?」
「んー……確かにちょうどそれくらいだな」
目を合わせたソフィアが頷いてくれたので、同じことを考えているだろう。
ちょうど時系列が一致するし、ウォルトン家のメイドで間違いない。それなら、やることは一つだ。
「なんだ? 嬢ちゃんたちの知り合いか?」
「王都には貴族の屋敷が多いので、王城に勤務するメイドと断定することはできません。でも、一度上の者に相談してみます」
「頼むぜ。最初はコソコソしてばかりで、万引きしようとしているのかと思っていたからな」
「いけませんね。メイドの嗜みを持ってもらいたいものです」
ウォルトン家のメイドたちも、守秘義務違反という認識はあるのだろう。悪事を働いていると思うため、コソコソと行動を取っているのだ。
もしかしたら、彼女たちが主君に不信感を抱いている可能性もある。付け入る隙が大きいほど、罠に引っ掛かりやすくなるし、思った以上にチャンスかもしれない。
良い情報が入り、思わず頬を緩めると、店主の目が細くなった。
「一つだけ言っておくが、嬢ちゃんたちは正しく生きるんだぞ。ローズレイ家が上に立つ年っていうのはな、絶対に悪事は許されねえんだ。これからは真面目に生きた奴が評価される世の中になるぜ」
「……そうですね。肝に命じておきます」
想定外の激励を受けた私は、身が引き締まるような思いでいっぱいだった。
この国に長く住む人ほど、三大貴族というものをよく理解している。悪を断罪することがローズレイ家に与えられた役割であり、誰であっても容赦はしない。
ゆえに、黒い噂が流れるウォルトン家は受け入れられていないのだ。ローズレイ家を陥れた事実を肌で感じ、真面目に生きることを誓う国民がいるのは、それだけ大きな影響力があるという証拠になる。
そんな人たちの声に応えるためにも、ローズレイ家は立ち上がらなければならなかった。しかし、今の私だけではできないこともある。
「ソフィアさん。少しお願いを聞いてもらってもいいですか?」
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