20 / 48
第20話:誕生日パーティー3
しおりを挟む
ロジリーの部屋のベッドにダミーを寝かせ、王城をコッソリと抜け出した私は、忙しい日々を過ごした。
サラサラの髪に戻すために入念なヘアケアをして、メイド生活で傷み始めた肌もケアを行い、お化粧もバッチリ決める。髪を切ったこともあり、エステに行けない分、お風呂で徹底的に汚れを落とした。
もちろん、ウィッグもバッチリ。違和感がないか、鏡でしっかりと確認している。
ウォルトン家のメイドを引き入れた時は、部屋を暗くして誤魔化したけれど、今回はレオン殿下に親しい貴族が集まる誕生日パーティーだ。少しでも違和感を残すわけにはいかない。
当然、ローズレイ家らしく、白と黒を基調にしたドレスを着用。馬車に揺られて王城に到着する頃には……、すでにパーティーが始まっていた。
受付で招待状を渡すと、真っ青になったメイドが急いで奥に走ろうとする。が、地獄のメイド長・ロジリーの前では、決してメイドは走ってはならないので、すぐに止められた。
おそらく、彼女はウォルトン家の屋敷で働くメイドだろう。赤いドレスの情報を持たせたウォルトン家のメイドたちは、すでにうちで保護しているのだから。
これでグレースに正しい情報が伝わることはない。わざわざ遅れてきて正解だったわ。
ロジリーに捕まって説教を受けるウォルトン家のメイドを横目に、私は誕生日パーティーが始まっているホールに足を踏み入れた。
元々レオン殿下と一緒に招待客を決めたこともあり、誰がパーティーに呼ばれているのかくらいは把握している。見渡す限りは知っている顔なので、婚約者が代わったにもかかわらず、大勢の人が参加を決意してくれたみたいだ。
それなのに、この場所に元婚約者の私が現れたら、ザワザワするのも当然のこと。
いち早く異変に気付いたのは、親友であるソフィアだ。王城でメイドとして働く姿とは異なり、青い素敵なドレスを纏い、急ぎ足で私に近づいてくる。
その不満そうな表情を見れば、何が言いたいのか大体理解できた。どうして赤いドレスを着てないの? という感じだろう。
決して彼女を騙したかったわけではない。赤いドレスを使う目的が違っただけの話であり、最初からこの場で着る目的ではなかったのだ。
あの赤いドレスは……この出来事が落ち着いた後、どっかの誰かさんを参考にして、レオン殿下に色目を使う時に着用する。……予定かな。
「シャルロットはいっつもそう。肝心なことは話さないんだから」
プンスカ! と怒るソフィアがデザインしてくれたものだし、ちゃんと着るわ。私だって、愛想をつかされたくはないもの。
恥ずかしくて着れないような気もするけれど……。いや、頑張るわよ。たぶん。
「ソフィには何でも話しているつもりよ。聞かれてないことは答えられないだけで」
「別にいいけどね。今に始まったことじゃないから。ほらっ、早くレオン殿下に挨拶してきなよ」
ソフィアがそっぽを向いた時、ホール内に今日一番ザワザワとした声が響き渡った。
元婚約者である私が来るのを待ち続けていた人物が、ようやく姿を現したからだ。
誕生日パーティーの主役であるレオン殿下よりも遥かに目立ち、女の子らしいピンク色のウェディングドレスに身を包むグレースは、まっすぐ前を見据えている。その勝ち誇った表情を見れば、誰と衣装対決しようとしていたのかは、一目瞭然だろう。
そんな彼女にかまってあげたいところだが、淑女である私がマナーを間違えるわけにはいかない。レオン殿下の元へ足を運び、ドレスをつまんで優雅に一礼した。
「レオン殿下、お誕生日おめでとうございます」
「シャルロット、来てくれたことには礼を言おう」
「とんでもございません。レオン殿下のお顔が見れるだけでも嬉しく思います」
普段ならば、私はもっと砕けた口調で話しかける。しかし、ここはあくまでレオン殿下の誕生日パーティー。婚約者でもないのだから、丁寧な口調で話しかけていた。
何気ない挨拶をレオン殿下と交わしていると、視界に入る目障りな人物が固まっていることに気づく。
「ところで、今日が何のパーティーなのか、グレースはご存知ないのですか? 仮装パーティーだと勘違いしているみたいですが」
信じられない……そんな表情を浮かべるグレースは、怒りが沸々とたぎるように、ワナワナと口を動かしていた。彼女がどんな気持ちでいるのか、手に取るようにわかってしまう。
騙しやがったわね、このクソ女! である。
「彼女が勝手にやったことだ」
「そうですね。このパーティーに招待してくれたのも、グレースでしたから」
レオン殿下と会話を進めていくと、会場の雰囲気が変わりつつあった。
元々ここには、私とレオン殿下に親しい人物が集められている。元婚約者である人物を呼びつけるというイジメみたいな行為で、良い気持ちになる人は少ないだろう。
つまり、グレースにとっては敵地なのだ。
うまくいけば弱らせることができるが、下手をすれば勢いづかせる。そういう諸刃の剣の場所だと知っていたから、私はここに足を運んでいる。
婚約破棄されたあの日、尻尾を巻いて帰った私は誓ったのだ。
彼女を断罪するその日まで、悪役令嬢になる、と。
サラサラの髪に戻すために入念なヘアケアをして、メイド生活で傷み始めた肌もケアを行い、お化粧もバッチリ決める。髪を切ったこともあり、エステに行けない分、お風呂で徹底的に汚れを落とした。
もちろん、ウィッグもバッチリ。違和感がないか、鏡でしっかりと確認している。
ウォルトン家のメイドを引き入れた時は、部屋を暗くして誤魔化したけれど、今回はレオン殿下に親しい貴族が集まる誕生日パーティーだ。少しでも違和感を残すわけにはいかない。
当然、ローズレイ家らしく、白と黒を基調にしたドレスを着用。馬車に揺られて王城に到着する頃には……、すでにパーティーが始まっていた。
受付で招待状を渡すと、真っ青になったメイドが急いで奥に走ろうとする。が、地獄のメイド長・ロジリーの前では、決してメイドは走ってはならないので、すぐに止められた。
おそらく、彼女はウォルトン家の屋敷で働くメイドだろう。赤いドレスの情報を持たせたウォルトン家のメイドたちは、すでにうちで保護しているのだから。
これでグレースに正しい情報が伝わることはない。わざわざ遅れてきて正解だったわ。
ロジリーに捕まって説教を受けるウォルトン家のメイドを横目に、私は誕生日パーティーが始まっているホールに足を踏み入れた。
元々レオン殿下と一緒に招待客を決めたこともあり、誰がパーティーに呼ばれているのかくらいは把握している。見渡す限りは知っている顔なので、婚約者が代わったにもかかわらず、大勢の人が参加を決意してくれたみたいだ。
それなのに、この場所に元婚約者の私が現れたら、ザワザワするのも当然のこと。
いち早く異変に気付いたのは、親友であるソフィアだ。王城でメイドとして働く姿とは異なり、青い素敵なドレスを纏い、急ぎ足で私に近づいてくる。
その不満そうな表情を見れば、何が言いたいのか大体理解できた。どうして赤いドレスを着てないの? という感じだろう。
決して彼女を騙したかったわけではない。赤いドレスを使う目的が違っただけの話であり、最初からこの場で着る目的ではなかったのだ。
あの赤いドレスは……この出来事が落ち着いた後、どっかの誰かさんを参考にして、レオン殿下に色目を使う時に着用する。……予定かな。
「シャルロットはいっつもそう。肝心なことは話さないんだから」
プンスカ! と怒るソフィアがデザインしてくれたものだし、ちゃんと着るわ。私だって、愛想をつかされたくはないもの。
恥ずかしくて着れないような気もするけれど……。いや、頑張るわよ。たぶん。
「ソフィには何でも話しているつもりよ。聞かれてないことは答えられないだけで」
「別にいいけどね。今に始まったことじゃないから。ほらっ、早くレオン殿下に挨拶してきなよ」
ソフィアがそっぽを向いた時、ホール内に今日一番ザワザワとした声が響き渡った。
元婚約者である私が来るのを待ち続けていた人物が、ようやく姿を現したからだ。
誕生日パーティーの主役であるレオン殿下よりも遥かに目立ち、女の子らしいピンク色のウェディングドレスに身を包むグレースは、まっすぐ前を見据えている。その勝ち誇った表情を見れば、誰と衣装対決しようとしていたのかは、一目瞭然だろう。
そんな彼女にかまってあげたいところだが、淑女である私がマナーを間違えるわけにはいかない。レオン殿下の元へ足を運び、ドレスをつまんで優雅に一礼した。
「レオン殿下、お誕生日おめでとうございます」
「シャルロット、来てくれたことには礼を言おう」
「とんでもございません。レオン殿下のお顔が見れるだけでも嬉しく思います」
普段ならば、私はもっと砕けた口調で話しかける。しかし、ここはあくまでレオン殿下の誕生日パーティー。婚約者でもないのだから、丁寧な口調で話しかけていた。
何気ない挨拶をレオン殿下と交わしていると、視界に入る目障りな人物が固まっていることに気づく。
「ところで、今日が何のパーティーなのか、グレースはご存知ないのですか? 仮装パーティーだと勘違いしているみたいですが」
信じられない……そんな表情を浮かべるグレースは、怒りが沸々とたぎるように、ワナワナと口を動かしていた。彼女がどんな気持ちでいるのか、手に取るようにわかってしまう。
騙しやがったわね、このクソ女! である。
「彼女が勝手にやったことだ」
「そうですね。このパーティーに招待してくれたのも、グレースでしたから」
レオン殿下と会話を進めていくと、会場の雰囲気が変わりつつあった。
元々ここには、私とレオン殿下に親しい人物が集められている。元婚約者である人物を呼びつけるというイジメみたいな行為で、良い気持ちになる人は少ないだろう。
つまり、グレースにとっては敵地なのだ。
うまくいけば弱らせることができるが、下手をすれば勢いづかせる。そういう諸刃の剣の場所だと知っていたから、私はここに足を運んでいる。
婚約破棄されたあの日、尻尾を巻いて帰った私は誓ったのだ。
彼女を断罪するその日まで、悪役令嬢になる、と。
1
あなたにおすすめの小説
十二回の死を繰り返した悪役令嬢、破滅回避は諦めました。世界のバグである司書と手を組み、女神の狂ったシナリオをぶっ壊します
黒崎隼人
ファンタジー
十二回の死を繰り返した公爵令嬢オフィーリア。十三回目の人生で彼女が選んだのは、破滅の回避ではなく、世界の破壊だった。
「この世界は、女神の描いた三文芝居に過ぎない」
ループする度に歪む日常、完璧な仮面の下に狂気を隠した婚約者や聖女。全てが残酷な神の「物語」の駒でしかないとしたら?
これは、筋書きを押し付けられた悪役令嬢が、同じく運命に抗う謎の司書と「共犯者」となり、狂った世界のシステムに反逆する物語。断罪の先に待つのは救済か、それとも完全な無か。真実が世界を壊すダークミステリーファンタジー、開幕。
捨てられた悪役はきっと幸せになる
ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。
強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。
その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。
それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。
「ヴィヴィア、あなたを愛してます」
ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。
そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは?
愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。
※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。
※表紙はAIです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。
ぽんぽこ狸
恋愛
気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。
その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。
だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。
しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。
五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。
王家を追放された落ちこぼれ聖女は、小さな村で鍛冶屋の妻候補になります
cotonoha garden
恋愛
「聖女失格です。王家にも国にも、あなたはもう必要ありません」——そう告げられた日、リーネは王女でいることさえ許されなくなりました。
聖女としても王女としても半人前。婚約者の王太子には冷たく切り捨てられ、居場所を失った彼女がたどり着いたのは、森と鉄の匂いが混ざる辺境の小さな村。
そこで出会ったのは、無骨で無口なくせに、さりげなく怪我の手当てをしてくれる鍛冶屋ユリウス。
村の事情から「書類上の仮妻」として迎えられたリーネは、鍛冶場の雑用や村人の看病をこなしながら、少しずつ「誰かに必要とされる感覚」を取り戻していきます。
かつては「落ちこぼれ聖女」とさげすまれた力が、今度は村の子どもたちの笑顔を守るために使われる。
そんな新しい日々の中で、ぶっきらぼうな鍛冶屋の優しさや、村人たちのさりげない気遣いが、冷え切っていたリーネの心をゆっくりと溶かしていきます。
やがて、国難を前に王都から使者が訪れ、「再び聖女として戻ってこい」と告げられたとき——
リーネが選ぶのは、きらびやかな王宮か、それとも鉄音の響く小さな家か。
理不尽な追放と婚約破棄から始まる物語は、
「大切にされなかった記憶」を持つ読者に寄り添いながら、
自分で選び取った居場所と、静かであたたかな愛へとたどり着く物語です。
〈完結〉【書籍化&コミカライズ・取り下げ予定】毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる