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第41話:シャルとルチア4
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街を巡回していた騎士を捕まえ、ルチアと一緒に王城に帰ってきたまではよかったのだが……。
「夜分に出歩いた新人メイドは、シャルさんが初めてです」
和解したはずのロジリーに厳しい視線を向けられ、私は怒られていた。
まさか外壁清掃の責任者がロジリーだったとは。城門前に仁王立ちして立っていたため、避けることができなかった。
その影響もあってか、ルチアの遅刻は見逃されている。長い食事に付き合わせたのは私なので、一緒に怒られることにならなくて、正直ホッとしていた。
バイトの人たちに、ペコペコと頭を下げて謝罪する姿を見られるのは、何とも言えない気持ちになるが。
いざ外壁清掃の仕事が始まると、周りには人がいなくなり、ロジリーと二人きりになった。外ということもあり、大声でなければ普通に話せるだろう。
「随分と夜遊びがお好きなようですね」
ロジリーも同じ考えだったみたいで、周囲を警戒しながら声をかけてきた。
「色々と事情があるの。遊ぶ余裕なんてないわ」
「こちらも本気で言ってませんよ。反省文は書いていただきますが」
「……どうにかならない? 得意じゃないのよ」
「特別扱いは致しません」
レオン殿下の手紙の件で打ち解けたと思っていただけに、何とも言えない気分だ。ロジリーとの距離が縮まっているのか遠くなっているのかはわからなかった。
ただ、信頼できる情報筋が近くにいてくれるのはありがたい。
「ちょっと気になる子がいるの。ルチアのことを聞いてもいいかしら」
唐突に質問されたロジリーは、眉間にシワを寄せた後、ひときわ元気に働く一人の女の子を見た。
外壁掃除の紅一点、器用に魔法を使いながら掃除するルチアが目に映る。
デッキブラシを片手に外壁を磨き、魔法で作り出した水で綺麗に汚れを落としていく。土魔法で足場を作り、高い場所まで平然とした顔で掃除する姿を見れば、とても魔力暴走するとは思えない。
肉体自慢の男や駆け出し冒険者たちよりもルチアは作業が早く、活発に動いていた。
「彼女はがんばり屋で真面目な子ですよ。しっかりと礼儀作法を覚える気があるのなら、メイドとして雇いたいくらいです」
「ロジリーがそんなことを言うなんて珍しいわね」
「ただの正当な評価です。王城は甘やかされた貴族令嬢がメイドになるケースが多く、浮かれた気持ちでやってきますが、彼女にはそれがありません」
浮かれる状況ではないと思うが、ルチアにとっては、誰かの役に立てることが嬉しいのだろう。社会貢献によって、少しでも罪の意識を消し去りたいから。
「働く姿勢を見ただけでなんとなくわかるわ。肉体労働なのに、女の子のルチアが一番頑張っているんだもの」
「どこかの公爵令嬢よりも体力がありますし、即戦力になりそうですね。彼女ほど真面目に仕事をするのなら、わざわざ厳しくしなくてもいいでしょう」
どうせ私は体力がないわよ。特別扱いはしない、と言っていたくせに、人によって扱い方を変えているみたいね。
王城のメイドが厳しいのも、あくまで甘やかされた貴族令嬢を叩き直す気持ちが大きいのだろう。ロジリーなりの親心みたいなものかな。
「実際にメイドとして働かせるのはどうかしら。まだ人手不足でしょ?」
「シャルロット様こそ珍しくご執心ですね」
ローズレイ家の人間が執着するのは、悪事に手を染めた真っ暗な子ばかりだ。ルチアみたいな真面目な子に関わるケースは少ない。
しかし、彼女の話をしている時点で、ロジリーも薄々気づいているとは思う。
「自分なりに罪を償おうとしている人を裁くのは、苦手なのよね」
「そういう子には見えませんが」
「だからよ。変に法律を引っ張り出してくるより、勝手に和解してもらった方が楽なの。どっかの馬鹿みたいに噛みついてくれるとありがたいのだけれど」
「城内でグレース様の悪口は言わないでください」
「グレースとは言っていないわ」
グレースのことだけれど。
そして、ローズレイ家の人間として、罪のある者を放っておくわけにはいかない。
法の下で人は平等なのだから。
「ウォルトン家には知られたくないの。仕事が終わったら、別室で彼女を拘束してちょうだい。学園には私が連絡を入れておくわ」
ただし、必ず裁かなければならない、というわけでもない。罪の償い方を教えるのもまた、ローズレイ家の仕事である。
「わかりました。ですが、あまり仕事に集中しすぎないでくださいね。いよいよ来週は本会議。国の命運を左右する大事な議会がありますので」
ロジリーの言葉を聞いて、時間の流れの早さに戸惑いを隠せなかった。
婚約破棄されてから、そんなにも経ってしまうのね。色々環境が変わりすぎて、ついていくだけで精一杯だった部分が大きいわ。
でも、あまり呑気なことも言ってはいられない。レオン殿下を助けるチャンスなのだから。
「心配しなくても、必ず婚約者の座から悪女を引きずり下ろすわよ」
「夜分に出歩いた新人メイドは、シャルさんが初めてです」
和解したはずのロジリーに厳しい視線を向けられ、私は怒られていた。
まさか外壁清掃の責任者がロジリーだったとは。城門前に仁王立ちして立っていたため、避けることができなかった。
その影響もあってか、ルチアの遅刻は見逃されている。長い食事に付き合わせたのは私なので、一緒に怒られることにならなくて、正直ホッとしていた。
バイトの人たちに、ペコペコと頭を下げて謝罪する姿を見られるのは、何とも言えない気持ちになるが。
いざ外壁清掃の仕事が始まると、周りには人がいなくなり、ロジリーと二人きりになった。外ということもあり、大声でなければ普通に話せるだろう。
「随分と夜遊びがお好きなようですね」
ロジリーも同じ考えだったみたいで、周囲を警戒しながら声をかけてきた。
「色々と事情があるの。遊ぶ余裕なんてないわ」
「こちらも本気で言ってませんよ。反省文は書いていただきますが」
「……どうにかならない? 得意じゃないのよ」
「特別扱いは致しません」
レオン殿下の手紙の件で打ち解けたと思っていただけに、何とも言えない気分だ。ロジリーとの距離が縮まっているのか遠くなっているのかはわからなかった。
ただ、信頼できる情報筋が近くにいてくれるのはありがたい。
「ちょっと気になる子がいるの。ルチアのことを聞いてもいいかしら」
唐突に質問されたロジリーは、眉間にシワを寄せた後、ひときわ元気に働く一人の女の子を見た。
外壁掃除の紅一点、器用に魔法を使いながら掃除するルチアが目に映る。
デッキブラシを片手に外壁を磨き、魔法で作り出した水で綺麗に汚れを落としていく。土魔法で足場を作り、高い場所まで平然とした顔で掃除する姿を見れば、とても魔力暴走するとは思えない。
肉体自慢の男や駆け出し冒険者たちよりもルチアは作業が早く、活発に動いていた。
「彼女はがんばり屋で真面目な子ですよ。しっかりと礼儀作法を覚える気があるのなら、メイドとして雇いたいくらいです」
「ロジリーがそんなことを言うなんて珍しいわね」
「ただの正当な評価です。王城は甘やかされた貴族令嬢がメイドになるケースが多く、浮かれた気持ちでやってきますが、彼女にはそれがありません」
浮かれる状況ではないと思うが、ルチアにとっては、誰かの役に立てることが嬉しいのだろう。社会貢献によって、少しでも罪の意識を消し去りたいから。
「働く姿勢を見ただけでなんとなくわかるわ。肉体労働なのに、女の子のルチアが一番頑張っているんだもの」
「どこかの公爵令嬢よりも体力がありますし、即戦力になりそうですね。彼女ほど真面目に仕事をするのなら、わざわざ厳しくしなくてもいいでしょう」
どうせ私は体力がないわよ。特別扱いはしない、と言っていたくせに、人によって扱い方を変えているみたいね。
王城のメイドが厳しいのも、あくまで甘やかされた貴族令嬢を叩き直す気持ちが大きいのだろう。ロジリーなりの親心みたいなものかな。
「実際にメイドとして働かせるのはどうかしら。まだ人手不足でしょ?」
「シャルロット様こそ珍しくご執心ですね」
ローズレイ家の人間が執着するのは、悪事に手を染めた真っ暗な子ばかりだ。ルチアみたいな真面目な子に関わるケースは少ない。
しかし、彼女の話をしている時点で、ロジリーも薄々気づいているとは思う。
「自分なりに罪を償おうとしている人を裁くのは、苦手なのよね」
「そういう子には見えませんが」
「だからよ。変に法律を引っ張り出してくるより、勝手に和解してもらった方が楽なの。どっかの馬鹿みたいに噛みついてくれるとありがたいのだけれど」
「城内でグレース様の悪口は言わないでください」
「グレースとは言っていないわ」
グレースのことだけれど。
そして、ローズレイ家の人間として、罪のある者を放っておくわけにはいかない。
法の下で人は平等なのだから。
「ウォルトン家には知られたくないの。仕事が終わったら、別室で彼女を拘束してちょうだい。学園には私が連絡を入れておくわ」
ただし、必ず裁かなければならない、というわけでもない。罪の償い方を教えるのもまた、ローズレイ家の仕事である。
「わかりました。ですが、あまり仕事に集中しすぎないでくださいね。いよいよ来週は本会議。国の命運を左右する大事な議会がありますので」
ロジリーの言葉を聞いて、時間の流れの早さに戸惑いを隠せなかった。
婚約破棄されてから、そんなにも経ってしまうのね。色々環境が変わりすぎて、ついていくだけで精一杯だった部分が大きいわ。
でも、あまり呑気なことも言ってはいられない。レオン殿下を助けるチャンスなのだから。
「心配しなくても、必ず婚約者の座から悪女を引きずり下ろすわよ」
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