オタクですがなにか?

夏目 涼

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第8話

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私はベッドに横になり今日の出来事を振り返る。

なんか怒涛の一日だった・・・。
モリスがこの世界に来て、家に来て居候することになって、うちの学校に転校して来て、なんか知らんけどギャルに囲まれ、尊敬する一色先生に会って・・・。

今思い出しても興奮する。
私はスマホを取り出し電話帳を開いた。
そこには、如月先生(一色先生)との文字。

そう、連絡先を交換したのだ!!!!!!!!!
今後モリスのことが相談できるようにと、あと一週間で実習も終わるのでその後の連絡手段としてだった。

まさか尊敬する一色先生と連絡先交換出来るなんて!!!!!
やばいやばいやばい~~~~~。

私はゴロゴロとベッドを転げ回る。

あ!この記念すべき出来事をイブにも伝えておこう!

私は、メッセージアプリを起動させる。

イブはコミックマーケット、通称コミケで知り合ったコスプレイヤーだ。
私の2個上(高校2年生)でコスプレネームはイブ。本名は高橋たかはし 伊吹いぶきだ。
2年前に初めて参加したコミケで当時そんなに注目されていなかったモリスのコスプレをしていたイブを見て私は一瞬でファンになってしまったのだ。当時、まだ駆け出しのコスプレイヤーだったイブはファンになった私をすごく喜んで、友達になろうと言ってくれて今の状況に至る。
コミュ障の私が学校以外で作った初めての友達だ。

『今日、凄いことが起きた!本物のモリスが目の前に現れた!』

ざっくりとした文章で送る。
すると、すぐに返信が返ってきた。

『本物のモリス殿ですと?!それは見たい』
『今、家にいるよ。居候してるの』
『何?!それは夢のようだな。写真送ってほしい』
『むむむ・・・それは無理ゲーに近いよ。推しが眩しすぎてちゃんと見れないんだから』
『そこをなんとか~。今度のコミケに千代殿のリクエストコスプレして行くから~』

なななな、まじか!
それは・・・嬉しすぎる!!!!今や有名なコスプレイヤーになってしまったイブにコスプレをリクエスト出来るなんて!!!!なんて贅沢!

『わかった!頑張ってみる!ちょっと待って』

私は、イブとのメッセージのやり取りを中断させて、勉強道具を持ってリビングに向かった。

確かモリスはリビングで勉強してるはず。お兄ちゃん、部活でほとんどいないから使っていいよと言っているけど気をつかっているのかリビングでするって朝言っていたし。
一緒に勉強して、途中タイミング見て写真頼んでみよう。

リビングに行くと、夜ご飯の準備をしているお母さんと、ソファーのテーブルで勉強しているモリスがいた。

「あら、あんたもここで勉強するの?」
「う、うん。護澄くん頭いいし、教えてもらおうと思って」
「ふーん・・・勉強嫌いのあんたがねぇ」
「もう!いいでしょ!」

お母さんの小言を聞き流し、モリスが座っている向かい側に座った。

「私も一緒に勉強していい?」
「ん?お前の家なんだから俺の許可なんていらないだろ」
「そ、そうだけど・・・一緒に勉強されると気が散るとかあるかなって・・・」
「大丈夫だ。そんなに気を使わなくてもいい」

そう言って、モリスは受験対策問題集に目線を落とす。

あ~・・・目の前で推しが勉強してる・・・ずっと見ていられるわ・・・じゃ、なくて!
私も勉強しよ・・・。

黙々と問題を解いていくモリスとは対照的に私は全然問題集が進まなかった。

どうしよう・・・一緒に勉強とか言っときながら全然問題解けない。
なんでモリスはあんなにスラスラと解いてるの!?今日、少し裕樹に教えてもらっただけなのに。

私はジッとモリスを見る。
全く考え込んでいる様子もない。

私の視線に気づいたのか、モリスと視線が合う。

「どうした?」
「スラスラと問題解いてるけど、勉強の内容って向こうの世界と一緒なのかなーって・・・」
「いや、一緒ではないが教科書読めば大体理解できた。裕樹にも教えてもらったしな」

ま、まじかー。頭のつくりどうなってらっしゃるのよ。

私はがっくりと肩を落とす。

「そういう千代は進んでないようだが・・・」
「うっ!・・・実は勉強苦手で・・・」

私が正直に話すとモリスはクスッと笑って

「そういうところも向こうのチヨと一緒なんだな」
「え?」
「向こうでもチヨに勉強と魔法教えてたからなんだか安心する」

モリスの爽やか笑顔!眩しい!!
ありがとう!向こうの私!!!

「え・・・じゃ、勉強教えてくれる?邪魔になるならすぐ消えるから言って!!!」
「え?消える?・・・じゃ、まず何からがいい?」
「う、うーん・・・じゃ、数学で」

モリスが私の隣に移動して座る。

モリスの顔を見なくて緊張しないかと思ったけど・・・思ったより距離が近い!
モリスにも聞こえるんじゃないかと不安になるくらい自分の心臓の音がうるさい。
勉強に集中できるかな・・・。

















勉強もひと段落し、夜ご飯の時間になった。
部活で忙しい兄も今日は早めに帰って来ていた。

モリスが来て、うちの家族はなんだか機嫌がいい。
普段あんまり会話がない食事も会話が弾む。

「そういえば、隆太郎りゅうたろう。野球の試合はいつなんだ?」
「今週の土曜日」
「土曜日だったらみんなで応援に行けるわね」
「え?!来なくていいよ。家族みんなで来るとか恥ずかしいわ」
「兄ちゃんが照れてるw」
「おい!千代!お前は絶対来るな」
「え~・・・兄ちゃんの勇姿を見に行こうと思ったのに」
「そんなこと思ってないだろ」
「それ、俺も見に行っていいですか?」
「護澄、野球に興味あるのか??」

兄はモリスの一言に歓喜する。

「興味はわからないですけど・・・野球って見たことなくて」
「おぉ!それなら見にこい!もしかしたら野球したくなるかもしれないしな!そしたら俺と同じ高校に入って一緒に野球やろうぜ」
「モリスは頭いいから工業高校には行かないでしょ」
「んだと。頭よくても野球したくて入ってる奴もいるんだよ」
「それはずっとしてきてる人でしょ・・・モリスはまだやったことも見たこともないのに」
「もしかしたら興味が出るかもしれんだろ!夢がねぇな。お前は!オタクのくせに」
「オタク関係ないだろ!」

モリスを間に挟みながら私と兄は兄弟喧嘩を始めてしまった。
両親はいつものことなので放っている。

「兄弟仲いいんだな」
「「仲良くない!」」

2人同時に言って顔を見合わせる。
モリスはその私たちの姿を見て笑った。

今週の土曜日は絶対モリスに着いて行こう。
お兄ちゃんの野球の試合はどうでもいいけどモリスが初めて野球見る瞬間は見逃せない!

私はテーブルの下で小さくガッツポーズをした。







夕ご飯を食べ終えて、部屋に戻る。
なんとか家族の隙を見て、モリスに頼んで写真を撮らせてもらった。
不思議そうな顔をされたけど、思い出にとか適当なことを言って誤魔化した。

「ふぅ~・・・緊張した」

自分の部屋に戻り、ベッドに座りながらスマホを取り出し再びメッセージアプリを開いた。
イブにモリスの写真を貼り付け送信する。

ビックリするだろうなぁ。イブのモリスのコスプレも似てたけど、これは本物で本人だもんな。

電話の着信音が鳴る。イブからだ。いつもメールのやり取りなのに電話なんて珍しいな。

「千代殿~~~~~~~~~~!!!!」

電話に出ると、イブの大きな声がスマホから聞こえた。
耳がキーンとする。

「イブ・・・声の音量考えて・・・」
「あ!すまん!つい、興奮して!!!!!それよりあの写真はなんだ!!!」
「え?本物のモリスだよ?」
「本当か???本当にモリス殿なのか???いや・・・確かにクオリティがめちゃくちゃ高いが、本人って・・・漫画のキャラだぞ??しかし、こんなクオリティのコスプレイヤーの人は私も知らんし・・・。いたらかなり有名になってるはず・・・・」

イブはモリスの写真を見てかなりテンパっているみたいだ。そりゃ、漫画のキャラクターがこの現実世界にいるって信じられないよね。

「まぁまぁ・・・その気持ちはわかるよ。あ、イブさ、今度の土曜日って暇?モリスと兄ちゃんの野球の試合見に行くんだけど一緒に行かない?信じられないならその時にモリスに会って確かめてよ」
「おぉぉぉぉ!なんだそのイベは!もちろん参加するよ!私も行っていいのか?千代殿の推しとのデートを邪魔するようで気がひけるのだが・・・」
「何言ってんの!イブも私の推しだよ?」
「おぉぉ・・・千代殿は女神だ」
「それじゃ、詳細はまた連絡するね」
「おう!ありがとう」

電話を切って一呼吸つく。

イブと会うのも久しぶりだな。コミケでは毎回会うけど、プライベートで会うのは久しぶりだ。
受験前は一緒にアニメイトに行ったりしていた。
イブはカッコいいし美人。コスプレは女性も男性もする。そしてどっちも似合う。名前も中性的なので本当のところの性別は知らない。でもそんなの関係ないくらいイブという人が好きなのだ。

私は自分の部屋に飾っているイブのコミケコスプレ写真のコーナを見る。

今度のコミケには私のリクエストのキャラクターのコスプレをしてくれる!!何頼もうかなぁ。
今から考えてもワクワクする。

「千代~。風呂空いたから入れよ~」

兄ちゃんの声が聞こえる。
お風呂に入ってスッキリして、今日はゆっくり寝よう。

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