討伐師〜ハンター〜

夏目 涼

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第6話

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なんとか全員魔力のコントロールを1日で習得した。

次の日の特訓は実践・・・というより手合わせ。
これも格闘家の特訓だ。

武良久が特訓の内容を言うと、みんなチラリと美衣奈に視線を送る。
美衣奈はブスッと不機嫌そうな顔をしているが何も言わなかった。
昨日の武良久のストレートパンチの寸止めが効いているのだろう。


「では昨日の部屋に行く。ついて来い」

また、武良久の後に続いて教室のドアを通ると昨日の部屋に出る。魔法を使って独自の訓練室へと転送されるがなんだか通る瞬間にフワッと浮いた感じがするのがまだ慣れない。
昨日あったサンドバッグは綺麗になくなっていた。
その代わりに白い線で書いてある正方形のマークが3つあった。


「では、この線の中で手合わせしてもらう。二人一組になってくれ」

とりあえず、蘭と美衣奈・俺と瑠衣・潤が一人になる。

「あの・・・俺は?」
「小倉は私と手合わせだ」
「えぇ?!」

うわっ。
あの武良久と手合わせか。きっと手加減とかしないんだろうな。
命がいくつあっても足りない・・・。


でも、一番上達する相手でもある。
明らかに自分よりも経験を積んでいるし、強い。



俺はそう考え、手を上げた。

「はい。俺、武良久先生と手合わせお願いしたいです」

潤はどこかホッとした顔で俺を見た。

「・・・・・わかった。じゃ、小倉は甲斐田と。増田は私とに変更だな」

それぞれペアで白の枠の中へ入る。

「では、ルールを説明する。まず、武器の使用は無しだ。素手で戦ってもらう。そして、昨日練習した魔力を込めるパンチ。それは許可する」

その言葉でみんなざわつく。
あの魔力のこもったパンチでの手合わせとなると怪我をしてしまうのは目に見えている。

「人間とは弱い生き物だ。どんな攻撃を受けても怪我をする。魔力がこもっているいない関係なくだ。攻撃を受けるときも魔力を一点もしくは全身に集中させればそれは最大の防御になる。今回は防御の特訓だ」
「あの・・・防御の特訓だったらまず防御の練習をした方がいいんじゃないでしょうか?」

潤がおずおずと言う。
武良久の視線が潤に向く。ビクっと潤の身体が強張る。

かなり恐れてるな・・・。

「練習してからでもいいが、私は付き合わんぞ。2度手間だからな。それに実際に使うのはあくまで実践でだ。それを先に身に付けたほうがいいに決まっている。先に練習してしまうと変な癖も付いてしまうからな」
「そうなんですか・・・。分かりました」

潤は納得したようだ。
武良久はもう一回全員を見渡した。

「他に質問はないな?では、始めっ!」


武良久の掛け声でお互いの相手を見る。


「はぁ!」

一番に仕掛けたのは美衣奈だ。
蘭に勢い良く殴りかかる。
しかし、蘭は軽やかに美衣奈の攻撃をかわす。
それを何度も繰り返している。


「感心して見ている暇はないぞ!」

武良久の声に俺はハッと意識を集中させる。
武良久の拳が勢い良く向かってくる。

「うわぁ!」

俺は間一髪で避ける。

「避けてばかりだと特訓にならん!一か八か魔力を集中させて攻撃を受けてみろ!」

そんなこと言われてもっ!
全然拳に手加減してますっていう気持ちがないんですけど?!

一生懸命に武良久の攻撃を避ける。
昨日した魔力の集中をこの闘いの中でしないといけないのだ。

「どうした?!みんなに置いていかれたくないんだろう?」

攻撃をしながら武良久が俺に向かって言う。

確かに、昨日そう言った。
俺と瑠衣だけが残って全然出来なかった。
それがすごく悔しかった。


「くっそぉ!」

俺は心に決め、手に魔力を集中させて武良久の攻撃を受けた。
バチッと音を立てて武良久の魔力と俺の魔力がぶつかる。
思いっきり魔力を集中させているのだがギリギリ防いでいるといった状態だ。

「くっ・・・」
「・・・・・・出来たじゃねーか」

フッと笑いながら武良久は拳を俺から離した。

「だが、気をつけろよ。自分の防御に使う魔力が攻撃してくる相手の魔力よりも少なかったら怪我してしまうからな。それだけは頭に入れて置くように」
「は・・・・はい」


俺は力が抜け、その場に座り込んでしまった。

武良久は他の組の手合わせも見ているようだ。

「小倉!お前攻撃することにためらってるんじゃねぇ!目の前にいるのは敵だと思え!」
「は・・・はいっ!」
「甲斐田!お前もだ!ちゃんと攻撃を仕掛けてやらねぇと小倉の為にもならんぞ!」
「う~・・・・はぁい」

二人はお互い優しすぎるからどちらも攻撃をしかけていないみたいだ。
瑠衣も潤もらしいな。

「はぁっ!」
「・・・・」

相変わらず、女性2人は攻撃を出し合っているがどちらも攻撃をかわし続けている。

なんていう身体能力だ。
疲れないのかね?

「・・・・くっ!」

美衣奈が蘭の攻撃をかわしたときに少しよろめいた。
その瞬間を蘭は見逃さなかった。

「っ!」

即座に蘭は拳に魔力を込め、美衣奈に殴りかかる。
美衣奈は焦った顔を見せるが流れが見えているのだろう、腕を自分の前にクロスさせ魔力をその部分に集中させる。

バチッっと魔力のぶつかる音が部屋に響いた。

「はい!それまで!」

武良久が二人の手合いを止める。

「なんで止めるのよ!まだ終わってないわ!」

美衣奈が蘭を指して言う。

「いいんだ。それでは相手を変える」

美衣奈は全然納得していない顔だったがそれ以上は何も言わなかった。

「西園寺と増田、小倉と蘭、甲斐田と私だ。始めっ!」

え?!マジかよ・・・
このお嬢様、こっち凄い目つきで見てるよ。
絶対さっきの鬱憤うっぷん、俺で晴らそうとしてる。

「はぁ!」

容赦なく美衣奈は俺に向かって殴りかかってくる。

「くっ!」

俺は魔力を手に集め、防御する。

バチッっと部屋中に響き渡る。

「くっ!」

美衣奈は身体を弾かれるように俺から離れた。
着地の時に少し隙が出来る。
その瞬間、俺は魔力のこもった拳で美衣奈に攻撃を仕掛ける。

「くっ!」

美衣奈は魔力を腕に集中させた。
俺はそのまま美衣奈に向かって拳を向かわせる。
バチッという音の瞬間、美衣奈の身体が大きく飛んだ。

「え?」

俺は唖然とした。
バタッと大きい音を立てて倒れる美衣奈。
その音でみんなこちらに目を向ける。

「美衣奈!」

一番に潤は美衣奈に駆け寄った。
潤は美衣奈の名前を呼びながら身体を揺さぶっている。

とにかく俺も美衣奈へと駆け寄る。
そこにはぐったりと倒れている美衣奈がいた。
潤の呼びかけに反応していない。


「・・・・潤、俺・・・・」

俺は体中から血の気が引いていくのが分かった。
自分の心臓がバクバクといってうるさい。

突っ立ってるだけの俺を通り過ぎて武良久が美衣奈に近寄る。

「・・・・大丈夫だ。少し頭を打って軽い脳震盪を起こしているだけだ」
「よかった・・・」

ホッとみんな胸を撫で下ろす。

「とりあえず、今日の特訓はここまで!戻るぞ」

そう言って、武良久は美衣奈を抱き上げ部屋のドアに向かって歩い行く。

「・・・・お前には特別講習をする必要があるな」

俺の横を通り過ぎる時にボソッと言い残して部屋を出て行った。






俺は武良久に呼ばれて教室に残っていた。

「今日は、なんともなく軽症でよかったが・・・・。お前の魔力は強い、それをしっかり自覚して特訓しないといつか人を殺すぞ?」
「・・・・・はい」

確かに、やらないとやられると思って思いっきり魔力を込めた拳で美衣奈を殴ってしまった。

「今日はお前のその魔力をコントロールする特別講習をする」

ギロリと武良久の視線が向けられる。
俺はビクビクしながら武良久の言葉を待つ。

「本当は私が講師に就きたいのだが、討伐隊の仕事もある。だから、別の奴が講師だ。本当はあの変態には頼みたくないんだが・・・」
「変態?」
「アースベルだよ、魔法専門教師の」
「あ・・・・・あの人ですか・・・」

俺は前に出会ったアースベルを思い出す。
しかし、変態って・・・・。
確かに、必要以上に近かったりしたけど・・・・俺男だし。


「まぁ、変態だが腕は確かだから。そういうことだから今から行って来い」

武良久はそう言って俺を教室のドアから放り出した。




「うわぁっ?!」

放り出された先はあの、アースベルがいた部屋だった。
俺は突き飛ばされた勢いでバタリと部屋に倒れた。

「わぁ?!びっくりしたぁ・・・・あれ、君は確かブラークのとこのカイト?」
「あたた・・・・え?」

あの教室の扉どうなってるんだよ。
何箇所につながってるんだ?

そう考えていると、目の前にアースベルの顔があった。

「うわぁ?!」

俺はアースベルの顔の近さに驚き、飛び上がった。

「どうしたの?僕に会いたくて来ちゃったとか?」

フフフと笑いながら俺の顎を持ち上げる。
ゾゾッと俺の背中に悪寒が走る。

武良久の『変態』というワードが頭をよぎる。

「やっ・・・・あの、武良久先生からアースベル先生に魔力のコントロールを学んで来いと言われてきました」

一歩下がってアースベルに向かって言う。
アースベルはそんな俺の言葉に頬を赤らめる。

「あの・・・?」

俺は不安になりアースベルにの顔を見る。

「あ・・・あぁ、ごめん。うれしくて、つい」
「え・・・・?」
「ブラークが僕に頼ることなんて滅多に無いしね」
「はぁ・・」

俺は半信半疑でアースベルを見る。
本当にこの先生で大丈夫なんだろうか。
鬼で悪魔だけど、武良久の方がいいんじゃないだろうか。
そう思っていると、アースベルは部屋を出ようとする。

「え?どこいくんですか?」
「どこって・・・・特訓出来るところ。ここじゃ、大事な実験結果とか道具があるからね。壊されたくないし」

そう言って部屋のドアを開けて出て行った。
俺は慌ててアースベルに続いて部屋を出た。








「は・・・・?」

俺は自分の目の前の光景に唖然としていた。
部屋を出ると、目の前には草原が広がっていた。
このいきなりの状況を飲み込めないでいた。
学園内にこんな広い庭が?!いや、向こうには山も見えるしそれはない。
日本にこんな草原がある場所ってあるんですか?
いや・・・その前に学園内以外で能力使ったら駄目じゃなかったっけ?

いろんな疑問が駆け巡るが混乱するだけだった。


「あの、アースベル先生・・・」
「ん?」
「ここって・・・・」

そう聞こうとすると、目の前に大きなトラのような動物がノッソリと出てきた。

「は・・・・え?」

ますます状況をつかめなくなる。
え?トラ?ここは動物園の中ですか?
それともアフリカのジャングルとか?!

「ん~・・・このクラスの魔物じゃ君の特訓にはちょーっと辛いかな?」


はい?マモノって・・・・あの魔物?

アースベルは俺が理解していないことをちっとも気にせずに右手の人差し指と中指をクロスさせて魔物に向ける。

「ガァッ!グゥゥ・・・」

魔物が勢い良くアースベルに向かって突進してきた。

「ファイアーストーム」

カッとアースベルの身体から光が放たれたかと思うと、魔物に向かって火風が向かって行く。

なんだこれ・・・・。
これが・・・魔法?

魔物はアースベルの攻撃を受け、黒焦げになりばったりと倒れて消えてしまった。


い・・・・一撃。


「あーあ・・・ここにはこのレベルの魔物ばっかりみたいだなぁ・・・・」

キョロキョロと見渡したアースベルはスタスタと歩いていく。

「ちょ・・・待ってくださいよ」

俺は慌てて後について行く。

「さっきの魔物は?!っていうかここどこですか?学園の外では能力使っちゃ駄目なんじゃないんですか?!」

俺は思った事を一気に言う。
アースベルはそんな俺を振り返って見て、ハァっとため息をついた。

「質問が多いねぇ・・・・。えーっと、まずさっきの魔物はタイガーキングと言って魔物の中でも結構強い魔物。ちなみに火属性に弱いんだよ」
「タイガーキング・・・?」

なんか映画のタイトルみたいだな。

「あと、ここはベアリスの『バウス地方』の草原だ」
「ベ・・・・ベアリスってどこですか?」
「は?・・・・・あぁ、君たちは裏世界って呼んでるんだったね」
「え?!ここって裏世界なんですか?」
「そうだよ。魔力のコントロールを人間でしてたら練習にならないしね。もし、死なせちゃったら大変なことになるし・・・だから魔物でするのさ。討伐にもなるし。一石二鳥だよ」
「あ・・・・・はぁ」

裏世界と学園内は能力を使用してもいいからここでも大丈夫ってことか。ってかこんな簡単に裏世界に来てしまったけどいいのか?

「最弱のベアリーを探しているんだが、このあたりに大量生殖してるはずなんだけどね・・・」
「ベアリー・・・随分可愛い名前ですね」
「そう?そーでもないよ。あ、いた」

アースベルが指差した方には凄い強面のお面がフヨフヨ浮いていた。

「え?!名前とのギャップが凄いんですけど・・・」
「あぁ、ベアリーは最後に倒した人間の顔をそのままコピーするらしいからね。最後にあのベアリーと戦ったのがあの顔の人なんだろうね」

めちゃくちゃ怖い事をサラッと言ったよ、この人。
それに最弱とか言って結構エグイじゃん。

「そう・・・なんですか」
「さ、いっちょ腕試しだ。自分の思う魔力で戦ってみろ」
「えっ!」
「やばそうになったら・・・・」
「やばそうになったら・・・?」
「骨は拾ってやるから安心しろ」

~~~~~っ!
なんだよ!あの学園の教師はみんなこんな奴らばっかりなのか?!

ニコニコしながら手を振っているアースベルを残し、俺はベアリーに向かう。


ベアリーは特に向こうから攻撃してくる気配はなく、ただフヨフヨ浮いているだけだった。

だから最弱なんだろうか?

とりあえず、俺は魔力を込めた拳で強面のベアリーを殴った。

バンッ!と音をたてて姿がなくなった。

これが倒したことになるんだろうか?


「おぉ!最弱のベアリーとはいえ、拳一発とは・・・・初心者とは思えないね」

パチパチと拍手をしながらアースベルが近づいてきた。

「今のは自分の魔力を100%中の何%くらいの魔力を込めてたのかな?」
「え・・・っと・・・・倒せるか分からなかったので80%くらいで」
「80%ねぇ・・・じゃ、次は50%でしてみて」
「50%・・・」

しばらく歩くと、またベアリーがいた。
今度は小さな女の子のような顔だ。

「さ、次は50%だよ」
「はい」


ベアリーの顔を見ないように50%の魔力を込めて殴る。
いくら魔物でも小さい女の子の顔だと殴る事にためらってしまう。

「はっ!」

ベアリーに向かって殴った。
すると、バチっと光りベアリーは無傷のようだ。

「え?」
「50%のパンチでベアリーの防御魔力と一緒か。なるほどね」

離れたところでアースベルがフンフンと一人で納得している。

ベアリーはフヨフヨ浮いていたかと思うといきなりお面の裏側から魂のような白い物体を俺に向かって飛ばしてきた。

「なんだこれ?」

ゆっくりと近づいてくるので俺はそれをジッと見ていた。
何だろう、これ?
手を伸ばして白い物体に手をかけようとしたとき、

「触っちゃ駄目です!」

バンっと俺はアースベルに思いっきり飛ばされた。
ものすごく飛んだ。10mくらい飛んだ。
めちゃくちゃ痛い。
とっさに魔力でガードしたが・・・・。
めっちゃ痛い。


「この白いものに触ると魂を吸い取らちゃいます。そしてベアリーの仮面の顔になりそのまま死にます」

俺は触ろうとした自分を思い出し、ゾッとした。
あのまま触っていたら・・・。
アースベルに感謝しなくてはならない。いくら痛くても。今もまだ痛かったとしても。泣きそうなくらい痛かったとしてもっ!


「・・・・何か文句あります?あのままベアリーの顔になりたかったのなら次は止めませんが」

アースベルの顔が無表情になる。
俺のこの心の叫びが聞こえたのだろうか。
いつもニコニコ笑っている人が無表情になるとマジで怖い。

「・・・・っ!いーえっ!感謝しています」

俺は思いっきり強打した腰をさすりながら立ち上がる。

「では、次は55%の魔力で殴ってみて」
「はい・・・」

細かいな・・・と思ったが何も言わない。
俺は55%の魔力を手に集中させてベアリーを殴った。
すると、ベアリーは倒れなかったがダメージを少し受けたみたいだった。

「ふむふむ」

その様子をみてまたアースベルはうなずく。

「よし!じゃ、もう一回それで殴ってみて」
「は・・・・はぁ」

もう一回55%で殴るとベアリーは消えた。
ベアリーを倒してアースベルの方に戻る。

「先生。なにかベアリーが落としたみたいなんですが・・」

俺は消えたベアリーの所から、丸い薄緑色の玉を拾った。
その玉をアースベルに見せる。

「ほぉ、アイテムを落としたか」
「アイテム・・・・これが?」
「この玉の中にいろんなアイテムが入っているんだ。緑だったら回復系、青だったら防具系、赤だったら武器系、紫だったらアクセサリー系、黄色だったらその他の道具っていう感じだ」
「その他の道具って・・・・」
「たとえば、木の魔物を倒したとしよう。それで黄色のアイテムを落として中を見たら丸太だったとかな」
「なるほど・・・それでこの玉の中身を見るためにはどうしたら?」
「この玉に魔力を込めるんだ。やってみるか?」

俺は手に持っていた玉に魔力を込める。

するとパァッと光り、緑の一口サイズの固体が俺の手に残った。

「おっ、トリートか!」

俺の手から緑の物体を手にとってアースベルはニコニコと上機嫌だ。

「え?これなんですか?」
「ん?あぁ、トリートと言ってな、これを食べると体力を少し回復してくれるんだ。あ、言っとくが向こうの君の世界には持っていけないから注意しておけよ」
「え?そうなんですか?」
「なぜか向こうの世界に行くとアイテムが全部消えるんだ。武器もな。まぁ、向こうの世界じゃ必要の無いものだからだと思うのだが・・・」

不思議なことがあるもんだ。
ジッとトリートとを見る。緑色グミみたいな見た目だ。

「食べてみるか?」
「え・・・・大丈夫なんですか?」
「大丈夫ってなんだよ」
「いや・・・なんとなく・・・」

食べたこと無いものって勇気がいるじゃん?

俺はアースベルからトリートを貰い、思い切って口に含む。

「ぐっ!」

俺はその固体を噛んだ瞬間、吐きそうになった。

「あはははは!苦いだろ?」
「・・・っ!?・・・ゴクリ。はぁ、はぁ!早く・・・言ってください・・・よっ!!!!」

俺は吐きそうになるのを我慢してトリートを飲み込んだ。


マジで苦い。
たとえるなら向こうで言うめっちゃ濃いコーヒーを固体にしたとか、ゴーヤを固体にした感じだ。とにかく苦い。
俺は苦手だな。出来ればお世話になりたくない。

「はははっ!まぁ、良薬口に苦しっていうことわざが君の世界にはあるだろう?まさにそれだな。死にそうになっている時にそんなの気にしてられないから大丈夫だよ!」

いくら死にそうになっててもこの味を経験しないといけないなら少し迷うかも・・・。

俺はまだ口の中に残っている苦さを我慢しながら思った。







それから何回かベアリーを倒さずに殴る特訓をした。
これで、自分の50%の力で魔力を込める感覚を覚えた。

「よし!じゃ、今日はこれで終了。その感覚を基本に置いて普段の特訓に励むように。それだったら大抵の奴は大丈夫だ」
「・・・はい」

俺はその感覚を感じでため息をついた。

よかった。
特訓中に誰かに怪我されても嫌だし。

俺の手の中にはベアリーを倒してゲットしたアイテムも何個かあった。

異常状態を回復する『リーカ』
体力を小回復する『トリート』
魔力を小回復する『マハート』
武器で『ナイフ』

計四つだ。

「このアイテムはどうしましょう?向こうに戻っては消えてなくなてしまうんですよね?」
「そうだな・・・近くに村があるはずだ。そこの道具屋に預けていこう」
「預かってくれるんですか?」
「あぁ、向こうで言う銀行もあるしこうやって道具を預かってくれる倉庫屋もある。だいたい倉庫屋は道具屋が兼用していることが多い」
「へぇ~」

そう言って村があるという方向に歩いていると、何やらドロドロとした緑の物体が現れた。

「っ!先生、こいつは?!」
「スライムだな。さっきのベアリーより少し強いくらいだ」
「じゃ、65%ぐらいで」

俺は少し力を込めて殴る。
一発でスライムを倒した。

「うん!よく倒せるギリギリの魔力で倒したね」

ニッコリとアースベルは微笑んで褒めてくれた。

ベアリーは60%ぐらいで一発で倒せた。
その少し強いと言っていたから65%でと思い出来たが・・・。
これを本当は自分で判断しないといけないんだな。

そう考えながら歩いていると、村に着いた。

「ここはバーシャ村。農作物が特産の村だ」

村に入ると商店がたくさん連なっている道があり、たくさんの人で賑わっている。
村人たちの髪の毛は異様だ。青やら緑やらピンク・・・俺の黒髪がういて見える。

「いらっしゃーい。今日はいいジュゴが入ってるよ!」
「こっちはフォルムの肉が入ったよ~」

お店の人が行く人行く人にお勧めを言っている。

すっげぇ~
こんな風にモノを売ってるなんてなんか新鮮だ。
日本じゃ、ほとんど見かけないからな。

目当ての道具屋に行くために人ごみを掻き分けて通る。
俺は好奇心で露店に並んでいる商品を見ながら歩く。
どのお店にも見たこともない食べ物が並んでいる。

ドンっと人にぶつかってしまった。

「あ、すみません!」

ぶつかった人を見ると、緑の髪をした男の人だった。

「×××××」

何を言ったのか分からないがペコリと頭を下げて男は人ごみに紛れていった。

え?今なんて言ったんだろう。
全然聞き取れなかった。

ハッっと気がつくと目の前には人ごみしかなくアースベルの姿は無かった。

やばい。
離れてしまった。
この土地勘のない村で。
しかもこの人ごみの中で・・・。

しばらく人ごみを掻き分けて前に進んで歩いていると人だかりが出来ている場所があった。
しかも全員女の人だ。
なにがあるのだろうか不思議に思って掻き分けて覗いてみるとアースベルの姿があった。
何やら店の人と話をしている。
女性たちは黄色い声を出して何か叫んでいる。
言葉は分からないが女性たちの目当ては言わずともアースベルだろう。
こんな好青年、男の俺でも嫉妬するくらいにイケメンだ。

見つけやすくて助かったと心の中で思いながらアースベルのところに向かう。

「先生!」

俺は人ごみを「すいません!すいません!」といいながら、掻き分けアースベルのところへ辿り着いた。

「あ、迷子さん。やっと来ましたね」
「迷子さんって・・・・」

あの人ごみで気を使わずにズカズカと前に行く人がおかしいんじゃないんですか?
まぁ、好奇心でアースベルを見失ったのは否定しないけど。

「今、アイテムを預かってもらってました。倉庫名は君の名前にしておきましたよ」
「え?」
「これ借用証です。サインは私がしておきましたので」
「はぁ・・・・」

アースベルに渡されたのは名刺サイズの紙だ。
見慣れない文字が並んでいる。

「なんて書いてあるんですか?全然読めないんですが」
「そりゃそうでしょ。まだベアリス語習ってないんだから。こっちはそれが基本の言葉になるからしっかり勉強するんだよ」
「ベアリス語???」

裏世界に来てから驚くことが山ほどある。
どれだけ俺の知らないことがまだあるのかワクワクしている自分がいる。

道具屋を後にし、アースベルと村を出る。

アースベルは元の世界へ繋がる輪を作り出し、中に入って行った。

俺もアースベルに続いて輪に入ろうとした。
フッと俺はもう一度振り向いて裏世界を見た。

絶対に自分で自由にここに来れるようになる。そしてこの世界を自由に回ってみたい。

そう決意し、輪の中に入った。
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