討伐師〜ハンター〜

夏目 涼

文字の大きさ
12 / 60

第12話

しおりを挟む

「いってきます」

俺は少し名残惜しく感じながら父さんと母さんに見送られ、自転車に乗って黒主学園へと向かった。
これでまた一年は家には帰れない。ましてや向こうの時間では6年だ。
俺は忘れないように周りの景色をしっかり目に焼き付けた。











「おはよう!」

自転車置き場に着くと、瑠衣が駆け寄ってきた。

「瑠衣、早いな」
「うん!今日から裏世界に行けるからね。楽しみで早く着いちゃった」

瑠衣は黒主学園のことをどこまで知っているのだろうか?
確か瑠衣の兄貴がこの学園の卒業生だと言っていたな。

「そういえば、瑠衣。武良久先生がこの学園の学園長だって知ってたか?」
「え?!嘘だ~。学園長が僕たちの担任なんてするはずないよ」

ですよね。
普通そんな反応ですよね。

瑠衣は笑いながら俺の背中をバシバシ叩く。
そして、ハッとしたように真面目な顔になった。

「でも、確かにずっと忙しそうにしてるのは事実だよね。討伐隊の仕事の以外にも色々飛び回ってるみたいだし」
「そうなのか」

知らなかった。
凄くめちゃくちゃな事をしているように見えて意外と仕事をテキパキこなしているのかもな。

「でもいきなりどうしたの?そんな話」
「実は・・・・」


俺は、実家に帰って両親から聞いた話を教室に向かう途中、瑠衣に簡単に話した。
瑠衣は最初は驚いていたようだが、俺の話を最後まで聞いてくれた。
とても辛そうな顔をしながら。

「そうだったんだ・・・」
「あぁ、自分でも驚いたよ。だって、昔にそんな決まりがあって俺がその禁忌の子っていうんだから」
「戒斗・・・・僕」
「ん?」

瑠衣が何か俺に言おうとした時。

「あら、戒斗と瑠衣じゃない」
「おはよ」

上級クラスの校舎に入ると潤と美衣奈にバッタリ会った。

「おはよ」
「・・・・・あ、おはよ~っ!みんな早いねぇ」

瑠衣はさっきまでの辛そうな顔は忘れてしまったかのように、いつものニコニコした顔に戻っていた。

「瑠衣・・・」
「ううん・・・気にしないで。行こう!」

瑠衣はさっさと潤と美衣奈に続いて歩いていった。
なんだったんだろうか?
また時間がある時に聞いてみよう。

俺はそう思い、俺は瑠衣たちに続いて教室へ向かった。




教室で待っていると、武良久が蘭を連れて教室に入ってきた。

「おう!全員揃ってるみたいだな。じゃ、早速しゅっぱーつ!」

なんとも遠足に行くように軽く言う武良久。

本当にこの人が、学園長なのか?

疑いの眼差しを武良久に向けていると、バチッと武良久と視線が合った。
ビクリと無意識に俺の身体は反応してしまう。
何だか蛇に睨まれた蛙の気分だ。
しかし、武良久は何も言わずに教室のドアを開けて出て行った。

あれ?
絶対何か言われると思ったんだが・・・・。

少し拍子抜けしたが、何も言われないのならそれで問題は無い。
武良久に続き俺たちも教室から出た。






武良久に続いてドアを通ると、そこに広がっていたのは町の裏路地だった。

「さ!ここが裏世界、ベアリスの『カスタ町』。しばらくお前らの生活主流になる町だな。ここには黒主学園専用の寮みたいな宿屋があるからとりあえずそこで寝泊りする」

武良久は一軒の大きな木造建物を指して言う。

「しかし!寮とは違い甘くない規則がある。働かざる者食うべからずだ!」
「え?どういうことですか?お金を払わないといけないってことですか?」
「ん~・・・まぁ、簡単に言ったらノルマだな。寮からの依頼を達成できなければたたき出されるってことだ」

なるほどね。
ノルマを達成することは同時に特訓にもなるってことか。

「じゃ、とりあえず宿屋に行くぞ」

武良久に続いて宿屋に向かった。


中に入ると、気難しそうな年配の男性がカウンターに新聞を読みながら座っていた。

「おう!久しぶりだな、ベース爺さん」

武良久はその老人にベアリス語で話しかける。
武良久にベースと呼ばれた男性は新聞から視線を武良久に移した。
しかし、ベースはすぐにまた新聞に視線を戻す。

「おいおい!久々にあったってのに相変わらずつれないな、爺さん」

ベースはギロリと武良久を睨む。
そしてチラリと武良久の後ろにいる俺たちを見る。

「・・・・また研修生か」
「おう、頼むよ。頼めるのここしかないんだよ」

パンっと手を合わせて頼み込む武良久。

話をつけてからここに来てるんじゃないのか?!
どこまで行き当たりバッタリなんだよ・・・・。

「しかし、お前が担当しているとは・・・・」

ベースは再び俺たちに視線を向ける。

「ふむ・・・・分かった。何やら面倒なクラスのようだが、お前がしっかり面倒見ろよ。部屋は3階だ」
「さすが!感謝する」

ベースが投げる部屋の鍵を受け取り、武良久はカウンター横の階段を上がっていく。

「何やっとる。さっさとあいつについていかんか」

早くここからいなくなってくれと言うように不機嫌な顔をしてベースは再び読みかけの新聞へと目を向けた。
俺たちはペコリととりあえず会釈だけして武良久の後を追った。



「んじゃ、この3つの部屋をお前ら5人で使ってくれ。あと、最初は特別に夕食が出る。7時に出るから1階の食堂に行け。7時過ぎるともらえないからそこのところ肝に銘じておけよ」

武良久はそういい残し、鍵だけを残してさっさと階段を下りていった。

「えっと・・・・じゃ、寮のときと一緒でいいんじゃない?」
「そうだな・・・潤は一人で使えよ」
「いいのか?」
「私一人がいい」
「美衣奈!わがまま言うな!そしたら蘭ちゃんが男と一緒の部屋になるんだぞ!」
「・・・・」

そんなやり取りをして、結局前の寮の時と同じ部屋割りになった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拾った年上侯爵が甘え上手すぎて、よしよししてたら婚約することになりました

星乃和花
恋愛
⭐︎火木土21:00更新ー本編8話・後日談8話⭐︎ 王都の市場で花屋をしているリナは、ある朝―― 路地裏で倒れている“美形の年上男性”を拾ってしまう。 熱で弱っているだけ……のはずが、彼はなぜか距離が近い。 「行かないで」「撫でて」「君がいると回復する」 甘えが上手すぎるうえに、褒め方までずるい。 よしよし看病してあげていたら、いつの間にか毎日市場に現れるようになり、 気づけば花屋は貴族の面会所(?)になっていて―― しかも彼の正体は、王都を支える侯爵家の当主だった!? 「君は国のために必要だ(※僕が倒れるから)」 年上当主の“甘え策略”に、花屋の心臓は今日ももたない。 ほのぼの王都日常コメディ×甘やかし捕獲ラブ、開幕です。

追放料理人とJKの異世界グルメ無双珍道中〜ネットスーパーは最強です〜

音無響一
ファンタジー
わーい、異世界来ちゃった! スキルスキル〜何かな何かな〜 ネットスーパー……? これチートでしょ!? 当たりだよね!? なになに…… 注文できるのは、食材と調味料だけ? 完成品は? カップ麺は? え、私料理できないんだけど。 ──詰みじゃん。 と思ったら、追放された料理人に拾われました。 素材しか買えない転移JK 追放された料理人 完成品ゼロ 便利アイテムなし あるのは、調味料。 焼くだけなのに泣く。 塩で革命。 ソースで敗北。 そしてなぜかペンギンもいる。 今日も異世界で、 調味料無双しちゃいます!

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...