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第12話
しおりを挟む「いってきます」
俺は少し名残惜しく感じながら父さんと母さんに見送られ、自転車に乗って黒主学園へと向かった。
これでまた一年は家には帰れない。ましてや向こうの時間では6年だ。
俺は忘れないように周りの景色をしっかり目に焼き付けた。
「おはよう!」
自転車置き場に着くと、瑠衣が駆け寄ってきた。
「瑠衣、早いな」
「うん!今日から裏世界に行けるからね。楽しみで早く着いちゃった」
瑠衣は黒主学園のことをどこまで知っているのだろうか?
確か瑠衣の兄貴がこの学園の卒業生だと言っていたな。
「そういえば、瑠衣。武良久先生がこの学園の学園長だって知ってたか?」
「え?!嘘だ~。学園長が僕たちの担任なんてするはずないよ」
ですよね。
普通そんな反応ですよね。
瑠衣は笑いながら俺の背中をバシバシ叩く。
そして、ハッとしたように真面目な顔になった。
「でも、確かにずっと忙しそうにしてるのは事実だよね。討伐隊の仕事の以外にも色々飛び回ってるみたいだし」
「そうなのか」
知らなかった。
凄くめちゃくちゃな事をしているように見えて意外と仕事をテキパキこなしているのかもな。
「でもいきなりどうしたの?そんな話」
「実は・・・・」
俺は、実家に帰って両親から聞いた話を教室に向かう途中、瑠衣に簡単に話した。
瑠衣は最初は驚いていたようだが、俺の話を最後まで聞いてくれた。
とても辛そうな顔をしながら。
「そうだったんだ・・・」
「あぁ、自分でも驚いたよ。だって、昔にそんな決まりがあって俺がその禁忌の子っていうんだから」
「戒斗・・・・僕」
「ん?」
瑠衣が何か俺に言おうとした時。
「あら、戒斗と瑠衣じゃない」
「おはよ」
上級クラスの校舎に入ると潤と美衣奈にバッタリ会った。
「おはよ」
「・・・・・あ、おはよ~っ!みんな早いねぇ」
瑠衣はさっきまでの辛そうな顔は忘れてしまったかのように、いつものニコニコした顔に戻っていた。
「瑠衣・・・」
「ううん・・・気にしないで。行こう!」
瑠衣はさっさと潤と美衣奈に続いて歩いていった。
なんだったんだろうか?
また時間がある時に聞いてみよう。
俺はそう思い、俺は瑠衣たちに続いて教室へ向かった。
教室で待っていると、武良久が蘭を連れて教室に入ってきた。
「おう!全員揃ってるみたいだな。じゃ、早速しゅっぱーつ!」
なんとも遠足に行くように軽く言う武良久。
本当にこの人が、学園長なのか?
疑いの眼差しを武良久に向けていると、バチッと武良久と視線が合った。
ビクリと無意識に俺の身体は反応してしまう。
何だか蛇に睨まれた蛙の気分だ。
しかし、武良久は何も言わずに教室のドアを開けて出て行った。
あれ?
絶対何か言われると思ったんだが・・・・。
少し拍子抜けしたが、何も言われないのならそれで問題は無い。
武良久に続き俺たちも教室から出た。
武良久に続いてドアを通ると、そこに広がっていたのは町の裏路地だった。
「さ!ここが裏世界、ベアリスの『カスタ町』。しばらくお前らの生活主流になる町だな。ここには黒主学園専用の寮みたいな宿屋があるからとりあえずそこで寝泊りする」
武良久は一軒の大きな木造建物を指して言う。
「しかし!寮とは違い甘くない規則がある。働かざる者食うべからずだ!」
「え?どういうことですか?お金を払わないといけないってことですか?」
「ん~・・・まぁ、簡単に言ったらノルマだな。寮からの依頼を達成できなければたたき出されるってことだ」
なるほどね。
ノルマを達成することは同時に特訓にもなるってことか。
「じゃ、とりあえず宿屋に行くぞ」
武良久に続いて宿屋に向かった。
中に入ると、気難しそうな年配の男性がカウンターに新聞を読みながら座っていた。
「おう!久しぶりだな、ベース爺さん」
武良久はその老人にベアリス語で話しかける。
武良久にベースと呼ばれた男性は新聞から視線を武良久に移した。
しかし、ベースはすぐにまた新聞に視線を戻す。
「おいおい!久々にあったってのに相変わらずつれないな、爺さん」
ベースはギロリと武良久を睨む。
そしてチラリと武良久の後ろにいる俺たちを見る。
「・・・・また研修生か」
「おう、頼むよ。頼めるのここしかないんだよ」
パンっと手を合わせて頼み込む武良久。
話をつけてからここに来てるんじゃないのか?!
どこまで行き当たりバッタリなんだよ・・・・。
「しかし、お前が担当しているとは・・・・」
ベースは再び俺たちに視線を向ける。
「ふむ・・・・分かった。何やら面倒なクラスのようだが、お前がしっかり面倒見ろよ。部屋は3階だ」
「さすが!感謝する」
ベースが投げる部屋の鍵を受け取り、武良久はカウンター横の階段を上がっていく。
「何やっとる。さっさとあいつについていかんか」
早くここからいなくなってくれと言うように不機嫌な顔をしてベースは再び読みかけの新聞へと目を向けた。
俺たちはペコリととりあえず会釈だけして武良久の後を追った。
「んじゃ、この3つの部屋をお前ら5人で使ってくれ。あと、最初は特別に夕食が出る。7時に出るから1階の食堂に行け。7時過ぎるともらえないからそこのところ肝に銘じておけよ」
武良久はそういい残し、鍵だけを残してさっさと階段を下りていった。
「えっと・・・・じゃ、寮のときと一緒でいいんじゃない?」
「そうだな・・・潤は一人で使えよ」
「いいのか?」
「私一人がいい」
「美衣奈!わがまま言うな!そしたら蘭ちゃんが男と一緒の部屋になるんだぞ!」
「・・・・」
そんなやり取りをして、結局前の寮の時と同じ部屋割りになった。
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