討伐師〜ハンター〜

夏目 涼

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第19話

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「じゃ………私はこれで。本当にありがとう」

サクラはぺこりと頭を下げて俺とベースにお礼を言う。

「本当にもう行くのか…?」
「うん。これ以上迷惑かけれないし。それに大丈夫よ。これでも一人旅は結構長いから」

ドンと自分の胸を叩いてサクラは笑顔でそう言う。

「じゃが、最近は物騒じゃぞ。女独りで旅なんぞ何があるかわからんぞ」

ベースが珍しく心配そうに言うくらい確かに最近は物騒な知らせが多かった。
実際、ベースから受ける依頼にも討伐依頼が増えて危険度も増してきていた。

「でも…………私は………他人に頼るわけにはいかない………っ!」

サクラは顔を歪めて辛そうに言う。
その表情からは細い身体で何かとてつもないものを背負っているように見えた。

何を隠しているんだ。
そんな辛そうな表情して。
さっきまであんなに楽しそうに笑っていたのに…。

「サクラ……………………」
「………………………ちょっと待っとれ」


ベースはそう言い残し、宿屋へ入っていった。



「どこに向かってるんだ………?それだけは聞いても大丈夫だろ?」
「………………表の世界」
「へ……?」


表の世界って……………
俺らのあの世界だよな?


「なんで表世界に行きたいんだ?」
「それは…………………言えない」
「そっか…………だけど表世界に続く場所がこの世界にあるのか?」
「えぇ。パルスっていうずーっと南の海に孤島があるの。そこに表世界につながる移動転送機械があるからそこからいけるはず…………」
「行けるはずって………行った人はいないのか?」
「そこに行くまでに死ぬか……………転送されたら戻ってこれない片道切符たから…真実は分からないの」


なるほど。
あの転送魔法が使えるのは限られた人間だけってことか。武良久がいればすぐに連れて行ってあげれるんだが・・・。
しかし、過酷なところに行くみたいだし…サクラ独りじゃ不安だ。


「俺、着いていくよ。心配だし」
「え………………?いや、でもっ……………カイトは訓練があるからここから離れられないでしょう?」
「そうだけど・・・理由を話せば分かってくれるよ。やっぱり心配だし。俺に助けを求めたのはサクラだ。最後まで俺は協力するよ」
「……………」

本当はベースと武良久の許可が出て討伐師ハンターの資格を貰ってから、やっとこの宿屋を出て訓練が出来るのだ。今は、潤と美衣奈とラフィーヌが資格を貰っている。宿屋を出ているのは、美衣奈とラフィーヌの2人。潤はもう少しこの町でお金を貯めてから出発するつもりらしくまだこの宿屋にいるのだった。
俺と瑠衣がまたもや残り組だった。しかし、6年間のうち既に3年が過ぎている。俺は内心焦っていた。ベースからの依頼も難なくこなしているのに許可がなかなか出ないことに・・・。これはチャンスかも知れない。

俺は黙って考えるサクラを真っ直ぐ見た。

「大丈夫。何があろうと俺はサクラを恨まない。俺は俺の意志でついていくんだから」

笑顔でそう言って、サクラの頭をワシャワシャと力強く撫でた。

「カイト………………」

サクラは気を張っていた顔をフッと緩めた。

サクラがどんなことを背負っているのか分からない。でも、なんだかついて行ってやらないと行けない気がした。

「何やっとるんじゃ…………」

いつの間にか戻ってきたベースは怪訝な顔をしながら立っていた。

「爺さん!わりーけど俺、今日でこの宿出るわ。サクラ独りじゃ心配だし、もっと強くなるためにここから離れるのもいいかなーって」

ベースは俺の言葉を無言で聞き、バサッと紙の束をカイトに投げつけた。

「うわぁ?!…………………これは?」
「ひよっこのくせに一人前のこと言いおって。・・・まぁ、お前ならそう言うと思ったわ。それはワシからの餞別じゃ。それがあればなんとかなるじゃろ」

ベースから受け取ったものは、ブラークから宿を出る許可を貰ったという書類と討伐師ハンター資格許可証だった。これでどこのギルドでも依頼を受けれる。

「え?いいのか?爺さん…………ありがとう!」
「ふん!お前の口からお礼を聞くなんぞ、気持ち悪いわ!さっさと行け!せーせーするわい」
「本当に………本当に…………ありがとうございます」

俺は自分の部屋から最低限荷物をまとめて瑠衣と潤に軽く挨拶をし、一階のロビーへ降りた。瑠衣も潤も急に出ていくことに驚き、寂しがりながらも快く送り出してくれた。
3年後、自分たちの世界に戻った時にお互いに成長した姿を見せ合うことを約束して・・・。



俺は宿屋の玄関を出ると深々とベースに向かって頭を下げる。
今回の分と、今までお世話になったお礼を込めて。
俺の横で一緒にサクラも頭を下げる。


ベースはそんな二人の姿を見て「気をつけてな」と言い残し、宿に入っていった。


本当に…
不器用で
口が悪くて
愛想も悪かった……………



けど




本当は
人思いで
一人一人をよく見てて
料理がうまくて



何より



俺は知っている。






本当は情に厚い人だということを。




















「………………………っ!あのクソガキが…………また会ったらしっかりとワシが…………鍛え直してやるからな」



ベースは入り口のドアにもたれ掛けていた体を起こし、調理場に入っていった。
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