心を惑わす紅い華、気持ちを静める蒼い華

niyuta

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第2章 女性の悩み

密かな恋心

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石原翔子は悩んでいた。年齢は21歳、大学3年生だ。彼女の悩みというのはその年齢の女性に似つかわしい恋の悩みである。

そしてもちろん悩みの種は朴念仁、田上勇太のことであった。

ちょっと性格がおとなしめの翔子は同じテニスサークル内の一年先輩にあたる田上に「密かに」恋心を寄せていた。

根が素直な翔子の態度は周りから見ると、田上のことを好きなのが明らかで、そういう意味では全く「密か」では無いのだが、翔子本人だけは自分の恋心を「密か」だと思っていた……

思えば、この2年間、田上を思い続けてきた翔子である。相手は色恋沙汰にはかなり不慣れな田上だ。

それだけでも悩みは絶えなかったのだが、しかし今日の悩みはいつも以上であった。

もとをただせば30分前にかけた一本の電話が原因である。

電話の相手は同じサークルで田上の親友の室町友也だ。翔子は大学の友人との会話で今日、田上がコンパに行くことを知っていた。

本当はそのコンパに自分自身が潜り込みたいぐらいの翔子だったが、コンパ出席者の女の子側グループとなんのつながりもない翔子にそれは出来なかった。

夕方から悶々とする時間を過ごした翔子はとうとう30分前に我慢しきれず、様子を聞く為に室町に電話をかけて#探_さぐ_#りをいれてみたのだ。

室町はかなり酔っぱらっていたようだがコンパの内容を色々と教えてくれたのだ。

そして翔子はコンパの席で田上が「別に俺は石原のことをどうも思って無いよ。石原のことを思うと俺のことは諦めて早く違ういい人を見付けた方がいいのにと思うくらいだよ」と言っていたのを知ってしまったのだ……

翔子にとって、これは悲しいことであった。正直、相手にされて無いのは分かっていたが、それを通り越して自分の好意は迷惑に思われているのかもしれないと思い始めたのだ。

翔子は泣きたい気分になってきた。つらくてたまらなかった。

いつもいつも田上は優しく接してくれたが内心は疎ましく思われていたのかもしれない。

そう思うと今までの田上の気を引こうとした自分の色々な言動が恥ずかしくて堪らなかった。

そして翔子はベッドの中で咽び泣いた。泣くという行為は体力がいるのだろう、充分に泣いた翔子はそのまま眠りについてしまった……

「……」

「……」

悪魔である。あの頭の先に二本の角のような物を持つ、マンガにでも出てくるような悪魔が目の前にいる。

「翔子さん、こんにちは。私は悪魔です」

「!?」

翔子は自分の耳を疑った。今、目の前にいるソレが自分を悪魔と名乗った。

「どうです。びっくりしましたか?」

「……はい」

訳が分からないまま翔子は返事をした。翔子の呆然とした様子を楽しそうに見ていた悪魔は言う。

「願い事はありませんか?」

悪魔の言葉は短刀直入であった。

「願い事?」

まだ自分の置かれている立場をよく理解していない翔子は、ただただオウム返しに聞き返す。

悪魔は翔子の思考が働くようになるまで待とうというのか、ゆっくりと言った。

「そうです。願い事です。あなたは運がいい。実は今はキャンペーン期間中なのですよ」

「キャンペーン……?」

「あなたの願い事をかなえてさしあげたいと思い参上しました」

やっと翔子も話の内容が理解出来てきた。悪魔からキャンペーン期間という言葉を聞くのは多少違和感を感じたが、まあこれは夢だから仕方がない。

翔子自身は変わった夢だなぁ、と思いながら返事をする。

「悪魔が私の願い事をかなえてくれるんですか?何でもですか?」

「はい、何でもですよ」

翔子はこれを完全に夢と知っている。だから逆に何も不信には思わない。

「私は今、何も悪魔にかなえて欲しい願い事はありません」

翔子は悪魔にいう。

すると悪魔は待ってましたとばかりに言った。

「それは嘘です。あなたは今、恋で悩んでいる。かなえて欲しいと思う願い事の一つや二つあるはずです」

「……」

「別にこれで見返りにあなたの命を取ろうという訳ではないのですよ。ただのボランティアなのです」

「はあ」

「願わなければ損ではないですか?何でも願い事が叶うのですよ」

こうまくしたてられても翔子としては戸惑うばかりだろう。しかし悪魔は構わず続ける。

「薬で人の心を自由に変えてしまうこともできますよ。そう、例えば『惚れ薬』とかね。くっくっくっ……」
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