運命の番と僕の出会いのお話。

はっぱ

文字の大きさ
21 / 28

イーゼルのギルドマスター

しおりを挟む
「どこから来たって……お前らには関係ないだろ」
「関係ないなんて酷いなぁ。俺らはこの街に来た新人さんを歓迎してるんだぜ?なぁ?」


真ん中に立っていた金髪の男が両隣の2人に同意を求める。3人とももちろん歓迎という雰囲気ではなく、嫌な感じの視線だ。

というかアルを新人だと思うなんて…僕から見てもすごく強そうだと思うのに。この人たちは本当に冒険者なんだろうか。
ギルドの中にいる人達は、遠巻きに僕たちを見ながらうんざりしたような、引いているような顔をしていた。このギルドではよくあることなのなのかもしれない。
 

「こっちはあんたの知り合いか?美人さんじゃねぇか。俺たちと遊ばないか?」


ニヤニヤとしながら僕の顔を覗き込んできて、思わず後ずさるとアルが僕にフードを被せて後ろに庇うように立ってくれた。アル……かなりイライラしてるかも?


「はぁ……歓迎はいらない。どこかに行ってくれ。邪魔だ」
「邪魔!?このっ……!Bランクの俺の事をバカにするのか!」


この街の冒険者はBランクが1番強いのだろうか。
眉を寄せてアルが断ると3人組は怒って殴りかかってくる。でも、SランクのアルがBランクの人達に簡単に殴られるわけがなく、アルは僕を抱えてスっと3人組の後ろに回った。


「舐めやがって…下級冒険者が!」
「あなた達、そろそろやめなさいな。みっともないわよ」
「っ!ギルドマスター!」


上から降りてきたのは、優しげなおばあさん。そういえば、ラスロでのリアさんの時もこんな感じだった気がする…
そしておばあさんはニコニコしているのに、少し威圧感がある。ラスロの街のギルドマスターは見るからに強そうなニコラスさんだったけれど、イーゼルの街はこの優しそうなおばあさんみたいだ。


「この人はSランク冒険者のアルさんよ。誰だって彼が強いことは分かると思っていたのだけど…アルさん、うちの冒険者がごめんなさい」
「エ、Sランクっ……!」
「マリーさん。俺は大丈夫だか、俺の番をいやらしい目で見たことは許せないな」
「あらまぁ、あなたがアルさんの番なの?」
「はい、こんにちは」
「可愛らしい子ねぇ、Sランク冒険者の番に手を出そうとしたなら私は守れないわね…自分達でどうにかなさいね」
「「「す、すみませんでした!」」」


おばあさんはふふっと笑って3人組の冒険者を見放してしまった。アルは謝ってもらってもまだ怒りが収まらないようで、頭を下げて謝っている3人を睨みつけていた。


「アル、僕も大丈夫だからもう怒らないで?」


ちょっとずるいかもしれないけど、アルの手を握って上目遣いで少し首を傾げながら頼めば、だいたいのお願いは聞いてくれることが最近分かってきた。まぁ最終手段だけど。


「ソラ、もう行こう」
「うん。あ、あの…もう怒ってないので気にしないでください」
「ありがとうございます…」


すっかり小さくなってしまった3人に声をかけて、おばあさんについて行く。


「本当にごめんなさいねぇ。怖かったでしょう?私はイーゼルの街のギルドマスターのマリーよ」
「あ、大丈夫です!僕はソラです。よろしくお願いします」
「あの人達、若い冒険者の子達と他の街から来た冒険者をいじめているっていう報告が来ていたのだけれど、なかなかタイミングが合わなくて注意が出来なかったのよね」
「ああいう奴らは色んな街にいるが、Sランクになってからやられたのは初めてだったな…」
「あの子たちには処罰を受けてもらうわ。まぁ、Sランク冒険者さえ見抜けないようならまだまだねぇ」


マリーさんは僕の頭を撫でて、困ったように笑いながら教えてくれた。


「この街の冒険者はBランクが1番上じゃないだろ?」
「そうね、Aランクの冒険者もいるんだけど…Aランク冒険者が依頼を受けているうちにやるからどうしようもないのよね…」
「はぁ…タチが悪いな」
「昔はあの子たちも純粋な冒険者だったんだけれど、まぁ、しょうがないわね…ところで、2人とも旅で来たんでしょう?海にはもう行った?」
「いいえ、まだです。明日行こうと思ってて…」
「そう、じゃあ1つ依頼を受けていかない?」
「依頼?」


依頼なら明後日行こうと思っていたんだけど、どうしたんだろう?


「ええ、海に魔物の目撃情報が沢山あって、それの調査をお願いしたいの。出来れば討伐もして欲しいのだけど、アルさんは番が一緒にいるなら危険なことは嫌でしょう?」
「そうだな…討伐しなくてもいいなら一応受けておくか。明日は他に予定も無いからな」
「助かるわ。依頼の手配はこっちでしておくから。よろしくね」


マリーさんに頼まれて、明日の予定に海の魔物の調査も追加された。そっか、考えていなかったけど海にも魔物が居るんだ。どんな魔物がいるのかな?


「じゃあ俺らはそろそろ帰ろうか」
「色々と引き止めてしまったわね、調査で何か分かったら教えに来てちょうだい」
「ああ、また明日来る」
「マリーさん、また明日」
「ふふ、ソラくん気を付けてね。アルさんが居れば大丈夫だとは思うけど、海の魔物は気づかないうちに近づいてくるから」
「はい、わかりました!」


マリーさんにお別れをして、すっかり暗くなってしまったので宿に帰る。ヒルダさんが出迎えてくれて、すぐに夜ご飯をもらって早めにベッドに入った。


「アル……?」


今日はお昼近くまで寝ていたからか、なかなか眠れない。アルの方を見ると、もう寝てしまっているようだ。
いつもは僕が先に寝て、アルが先に起きてしまうからアルが寝ているところを見るのは珍しい。
なんだかイタズラをしたくなって、指でつんつんと耳を触ってみると、狼の耳がぴくりと反応する。
ほっぺを突っつくと眉を寄せて「ん…」と顔を逸らされる。


「ふふっ………ん、ふわぁ…」


そんなことをしているうちに眠くなってきて、アルに抱きついて目を閉じた。





「はぁ……俺の番、可愛すぎるだろ……ソラ、おやすみ…」






しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん
BL
親から愛されることなく育った不憫な三兄弟が異世界で番に待ち焦がれた獣たちから愛を注がれ、一途な愛に戸惑いながらも幸せになる物語。 *触れ合いシーンは★マークをつけます。

【本編完結】転生したら、チートな僕が世界の男たちに溺愛される件

表示されませんでした
BL
ごく普通のサラリーマンだった織田悠真は、不慮の事故で命を落とし、ファンタジー世界の男爵家の三男ユウマとして生まれ変わる。 病弱だった前世のユウマとは違い、転生した彼は「創造魔法」というチート能力を手にしていた。 この魔法は、ありとあらゆるものを生み出す究極の力。 しかし、その力を使うたび、ユウマの体からは、男たちを狂おしいほどに惹きつける特殊なフェロモンが放出されるようになる。 ユウマの前に現れるのは、冷酷な魔王、忠実な騎士団長、天才魔法使い、ミステリアスな獣人族の王子、そして実の兄と弟。 強大な力と魅惑のフェロモンに翻弄されるユウマは、彼らの熱い視線と独占欲に囲まれ、愛と欲望が渦巻くハーレムの中心に立つことになる。 これは、転生した少年が、最強のチート能力と最強の愛を手に入れるまでの物語。 甘く、激しく、そして少しだけ危険な、ユウマのハーレム生活が今、始まる――。 本編完結しました。 続いて閑話などを書いているので良かったら引き続きお読みください

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

処理中です...