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1・言葉よりも口づけで
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「マリーツァ、起きているか」
(リェフだわ!)
起きてはいたが、答えることは出来ない。黒い髪は無造作に下ろしたまま、夜着であることも忘れて、マリーツァは慌ててドアへ駆け寄った。
峠で行列を襲ったリェフは怖かったが、きっと少しは落ち着いてくれているだろう。大事な用件をどうにか伝えなければ。
鍵の開く音の後、ゆっくりとリェフは姿を現した。
緊張しながら迎えた彼のどこか暗い目に、嫌な予感がよぎる。
(まだ怒っているのかしら……)
「マリーツァ……」
名を呼ばれただけなのに、すっと背筋に冷たいものが走った。
「答えてくれ。君は、私をずっと恐れていたのか? だから私を捨てて逃げたのか」
(え?)
何を言っているのだろう。
ある日突然に、父に許嫁が変わったと告げられたのだから、リェフにも婚約破棄の知らせが一方的に届いたのだろうと想像はつく。それに怒っているのだろうともわかる。でも、
(わたしがリェフを恐れていたですって? そんな馬鹿なことあるわけないじゃない)
物心ついた頃には、ただの幼馴染ではなく彼は大切な存在だった。ラードゥガラーとルニエダリーナの二国の国境にある離宮で、夏の間を共に過ごすのがどれだけ楽しみだったことか。リェフだって知っているはずだ。だからこそリェフから秘密を打ち明けてくれたのではないのか。異能があるのだと打ち明けてくれたのは七歳の頃だった。ひどく驚きはしたが、そのことでリェフに恐れを抱いた事なんてない。
「これは君の筆跡だろう」
困惑するマリーツァに、苦りきった顔のリェフが手紙を突きつけてくる。
その内容は、リェフを酷く痛罵したものだ。人の心を読むなんて醜悪な化け物め、ずっと怖かったし気持ち悪かった、だから私は遠く離れたところに逃げる、等とつらつらと。――マリーツァの筆跡で。
「私達が今までにどれだけ手紙を送り合ったか、忘れた訳じゃないだろう? 君の手跡を私が間違えることはない。これは君の字だ」
(ち、ちがう、ちがうわ。私じゃない。こんな手紙送ってないわ!)
マリーツァ自身が見ても、自分の手跡のように思えるが、そんな手紙を書いた覚えはない。必死に首を振って否定しても、リェフの紫水晶の瞳に浮かぶ不信は揺らがない。
「――化け物の私に嫁ぐくらいなら、相手は誰でもいいのか。レオフルスの王は側室を三十も抱える色狂いだっていうのに」
(何を言っているの! ちがうったら!)
マリーツァの訴えはリェフに届かない。
これまでに、リェフとの間にこんなにすれ違いを感じたことはなかった。
だって、素直に心のままに話せば、そのまま心が伝わっていたのだ。
好きだと言えば、それが本心なのだと伝わることの奇跡を今ほどに欲したことはない。
(そんな手紙知らないったら!)
幼い時からリェフの能力に晒されていたのだ、マリーツァが恐れていなかったことなんて誰よりリェフが一番知っているはずなのに。どうして、そんな手紙を信じるのだろう。
一体何があったというのか。マリーツァのはわけもわからず、混乱するばかりだ。
たがが外れたかのように、リェフは怨嗟を吐き出していく。
「結局、だれもかれも、そう、親でさえ私を化け物だと言ったのだから――他人の君に期待するのがそもそもの間違いだったんだろうな……」
落ちつかせたくてもマリーツァには宥める声をかけられない。それになによりリェフが怖かった。無意識にマリーツァはリェフから距離をとってしまうくらいに。
「私が怖いかマリーツァ。……それほどに」
大きな手で両腕を掴まれ、マリーツァは体を固くする。
「……」
違うと声を出すことが出来ない。
祈るような気持ちでリェフの瞳を見つめた。
「そうだな。……答えられないのだったか。喋れないというなら――その身体に聞いてみようか?」
(え!?)
リェフは体を強張らせるマリーツァを逃げられぬように抱きしめ、その口を塞いだ。出てくることなどない反論を封じるように。
「んぅ……!?」
噛みつくように口づけられ、マリーツァは息苦しさに喘ぐ。
額や頬、それに啄ばむような口づけなら今までにもされたことはある。
けれど、こんな深い口づけは受けたことがない。口腔を執拗に舐られ、おかしな気分になってくる。
舌の熱さと流れ込む唾液に、毒で喉を焼かれた日のことを思い出してしまいそうになる。
「ふ……は」
マリーツァの喉から漏れるのは、吐息で作られる頼りない声だけ。それがリェフの劣情を煽っているとはわからない。
一旦顔を離したリェフは眉を切なげに歪めて、唇が触れるかどうかの距離で囁いた。
「その昔には、触れると相手の思考を読める異能の持ち主もいたらしい。なあマリーツァ、君の奥に触れたら、声が出なくとも君の心が分かるかもしれないな」
「!」
これから起こることを察していやいやと首を振るマリーツァを、リェフは軽く抱え上げ寝台へ運んだ。
「嫌がっても君は私のものだ」
(止めて、お願い)
そう言いたいのに、声は出ない。逃げ出したいけれど、危うげな今のリェフを強く拒絶もしきれない。戸惑うマリーツァの夜着を、リェフは器用に剥いでいく。
「っ!」
肌をさらした頼りなさに、涙が浮かんでくるのを止められない。
涙を拒絶と受け取ったのか、リェフは一瞬傷ついたような表情を浮かべ、それを皮肉気な笑みで塗りつぶした。
「嫌がる声が聞けないのは残念だな」
酷いことを言われているのに、辛い顔をしているのはリェフの方だった。今まで見たことないような、痛々しい眼差しを向けられて、マリーツァは困惑するばかりだ。
(リェフ、やっ、どうしたのっ……!?)
首筋から胸へときつく吸いつかれ、所有の証のように肌に印をつけられていく。めちゃめちゃに乳房を揉まれ、強く噛みつかれ、マリーツァの体がびくんと跳ねた。
痛いだけではない、なにか、自分の中に生まれた未知の感覚が恐ろしくてたまらない。
(やあっ……こわいの! リェフ! 乱暴にしないで)
弄られている内に立ってきた胸の頂きをリェフに強く吸われ、知らなかった感覚は快感なのだと気づいてマリーツァは羞恥で顔を染めた。
足を掴まれ下肢を開かれ、自分でも触ったことのない場所にリェフが指を這わせて来る。
「んんっ!」
身をよじって逃げようとしても、がっしりと脚を掴まれ動けない。
入り口を撫でられているだけで、マリーツァは恥ずかしさで泣きたくなった。
「……やはり嫌か」
熱を帯びているのに冷たいリェフの言葉に、マリーツァは必死に首を振る。
(ちがう、そうじゃない。リェフのことは嫌じゃないけれど……こんなのは…あ!)
粘膜を擦られ、徐々に濡れていく自分の体をマリーツァは持て余した。
狂気を孕んだリェフが何度も耳元で繰り返す。
「逃がさない。マリーツァ! 絶対に逃がさない……!」
(こわい……、やめてぇ……っ。おかしくなっちゃう!)
声が出ないのも忘れて、必死に訴えるマリーツァを見下ろすリェフの顔には嗜虐的な笑みが浮かんでいる。
「嫌ならそう言えばいい」
「んうっ!?」
陰核を撫でられ、マリーツァの背筋に強烈な快感が走った。
「体は嫌がってないようだ、な、マリーツァ……?」
リェフは笑うと、くちゅりと指をマリーツァの中へ押し込んだ。
「…んぅ!!」
マリーツァは異物感に怯えた。
羞恥でおかしくなってしまいそうだ。嫌でも中へと入ってきたリェフの指に意識が集中してしまう。内部をかきまわされ、蜜壺から蜜があふれてくる。
「ほら、体は喜んでいるようだな、マリーツァ」
(ち、ちがっ)「んぅう……んっ!」
指を抜かれて一息ついたのもつかの間、大きく足を割り開かれた。秘所に熱いものがあてがわれ、ずぶずぶと押し入られる。
声が出ていたなら悲鳴を上げていただろう。指とは違う圧倒的な質量。
あまりの衝撃に、目の前が真っ白になる。
「んんん――!! うぅっ……」(痛い、痛い、いたい! やあ……んっ、あ)
ずいと腰を進められ、最奥にまでリェフが侵入してくる。
全てをマリーツァに収めたリェフは、思わず口から零れたというように呟いた。
「なあマリーツァ……、私の力から逃げるために、自分で喉を焼いたのか……?」
考えてもみなかったことを言われ、場違いにもマリーツァはぽかんと口を開けた。傷みも羞恥も何もかもが吹っ飛んだ。よりによって、リェフにそんな風に疑われるなんて、想像したこともない。
遅れて悲しみが湧きあがる。体は繋がっているというのに、まるで心を斬りつけられたように苦しい。
「マリーツァ……」
苦しげに顔を歪めたリェフに、眦に優しく口づけを落とされ、それで初めてマリーツァは気がついた。
――ああ、泣いてしまったのだと。
舌で何度も涙を拭われた。
それから何度も唇を食まれ、耳を舐られ、慰められる。
「すまない。すまない……すまないっ……」
涙が引く頃には、破瓜の痛みにも慣れた。
「すまない、マリーツァ……」
繰り返すリェフが叱られた子供のようで、今晩初めて肯定の意味でマリーツァは首を振った。
(もう、いいわ)
苦しむリェフを慰めてあげたい。今のマリーツァには愛を囁くことはできないのだ。代わりに、体を繋げて安心させてあげたい。
「……すまない」
もう一度囁いて、リェフはゆっくりと動き始めた。
ゆるゆるとした律動は、やがてマリーツァに蕩けるような快感を連れてくる。
「はあっ……はあ、あ、あっ」
ぼうっとして、何も考えられなくなった頭で、もっと奥を突いてほしいと自分から腰を擦りつけマリーツァはねだった。
けれど、伝わらない。もっとリェフが欲しいのに、言葉を作れない。
室内に響くのは、互いの熱い吐息と淫らな水音だけ。
「頼む、マリーツァ、愛していると言ってくれ…っ」
激しくなった突き上げはマリーツァを絶頂へと導く。最奥を突き上げるリェフの欲望をきゅうっと思わず締め付けた。
「――っ!」
声もなく達したマリーツァの内壁に熱い飛沫が吐き出される。
疲れ果てたマリーツァは薄れていく意識を手放し、そのまま眠りへ落ちていった。
(リェフだわ!)
起きてはいたが、答えることは出来ない。黒い髪は無造作に下ろしたまま、夜着であることも忘れて、マリーツァは慌ててドアへ駆け寄った。
峠で行列を襲ったリェフは怖かったが、きっと少しは落ち着いてくれているだろう。大事な用件をどうにか伝えなければ。
鍵の開く音の後、ゆっくりとリェフは姿を現した。
緊張しながら迎えた彼のどこか暗い目に、嫌な予感がよぎる。
(まだ怒っているのかしら……)
「マリーツァ……」
名を呼ばれただけなのに、すっと背筋に冷たいものが走った。
「答えてくれ。君は、私をずっと恐れていたのか? だから私を捨てて逃げたのか」
(え?)
何を言っているのだろう。
ある日突然に、父に許嫁が変わったと告げられたのだから、リェフにも婚約破棄の知らせが一方的に届いたのだろうと想像はつく。それに怒っているのだろうともわかる。でも、
(わたしがリェフを恐れていたですって? そんな馬鹿なことあるわけないじゃない)
物心ついた頃には、ただの幼馴染ではなく彼は大切な存在だった。ラードゥガラーとルニエダリーナの二国の国境にある離宮で、夏の間を共に過ごすのがどれだけ楽しみだったことか。リェフだって知っているはずだ。だからこそリェフから秘密を打ち明けてくれたのではないのか。異能があるのだと打ち明けてくれたのは七歳の頃だった。ひどく驚きはしたが、そのことでリェフに恐れを抱いた事なんてない。
「これは君の筆跡だろう」
困惑するマリーツァに、苦りきった顔のリェフが手紙を突きつけてくる。
その内容は、リェフを酷く痛罵したものだ。人の心を読むなんて醜悪な化け物め、ずっと怖かったし気持ち悪かった、だから私は遠く離れたところに逃げる、等とつらつらと。――マリーツァの筆跡で。
「私達が今までにどれだけ手紙を送り合ったか、忘れた訳じゃないだろう? 君の手跡を私が間違えることはない。これは君の字だ」
(ち、ちがう、ちがうわ。私じゃない。こんな手紙送ってないわ!)
マリーツァ自身が見ても、自分の手跡のように思えるが、そんな手紙を書いた覚えはない。必死に首を振って否定しても、リェフの紫水晶の瞳に浮かぶ不信は揺らがない。
「――化け物の私に嫁ぐくらいなら、相手は誰でもいいのか。レオフルスの王は側室を三十も抱える色狂いだっていうのに」
(何を言っているの! ちがうったら!)
マリーツァの訴えはリェフに届かない。
これまでに、リェフとの間にこんなにすれ違いを感じたことはなかった。
だって、素直に心のままに話せば、そのまま心が伝わっていたのだ。
好きだと言えば、それが本心なのだと伝わることの奇跡を今ほどに欲したことはない。
(そんな手紙知らないったら!)
幼い時からリェフの能力に晒されていたのだ、マリーツァが恐れていなかったことなんて誰よりリェフが一番知っているはずなのに。どうして、そんな手紙を信じるのだろう。
一体何があったというのか。マリーツァのはわけもわからず、混乱するばかりだ。
たがが外れたかのように、リェフは怨嗟を吐き出していく。
「結局、だれもかれも、そう、親でさえ私を化け物だと言ったのだから――他人の君に期待するのがそもそもの間違いだったんだろうな……」
落ちつかせたくてもマリーツァには宥める声をかけられない。それになによりリェフが怖かった。無意識にマリーツァはリェフから距離をとってしまうくらいに。
「私が怖いかマリーツァ。……それほどに」
大きな手で両腕を掴まれ、マリーツァは体を固くする。
「……」
違うと声を出すことが出来ない。
祈るような気持ちでリェフの瞳を見つめた。
「そうだな。……答えられないのだったか。喋れないというなら――その身体に聞いてみようか?」
(え!?)
リェフは体を強張らせるマリーツァを逃げられぬように抱きしめ、その口を塞いだ。出てくることなどない反論を封じるように。
「んぅ……!?」
噛みつくように口づけられ、マリーツァは息苦しさに喘ぐ。
額や頬、それに啄ばむような口づけなら今までにもされたことはある。
けれど、こんな深い口づけは受けたことがない。口腔を執拗に舐られ、おかしな気分になってくる。
舌の熱さと流れ込む唾液に、毒で喉を焼かれた日のことを思い出してしまいそうになる。
「ふ……は」
マリーツァの喉から漏れるのは、吐息で作られる頼りない声だけ。それがリェフの劣情を煽っているとはわからない。
一旦顔を離したリェフは眉を切なげに歪めて、唇が触れるかどうかの距離で囁いた。
「その昔には、触れると相手の思考を読める異能の持ち主もいたらしい。なあマリーツァ、君の奥に触れたら、声が出なくとも君の心が分かるかもしれないな」
「!」
これから起こることを察していやいやと首を振るマリーツァを、リェフは軽く抱え上げ寝台へ運んだ。
「嫌がっても君は私のものだ」
(止めて、お願い)
そう言いたいのに、声は出ない。逃げ出したいけれど、危うげな今のリェフを強く拒絶もしきれない。戸惑うマリーツァの夜着を、リェフは器用に剥いでいく。
「っ!」
肌をさらした頼りなさに、涙が浮かんでくるのを止められない。
涙を拒絶と受け取ったのか、リェフは一瞬傷ついたような表情を浮かべ、それを皮肉気な笑みで塗りつぶした。
「嫌がる声が聞けないのは残念だな」
酷いことを言われているのに、辛い顔をしているのはリェフの方だった。今まで見たことないような、痛々しい眼差しを向けられて、マリーツァは困惑するばかりだ。
(リェフ、やっ、どうしたのっ……!?)
首筋から胸へときつく吸いつかれ、所有の証のように肌に印をつけられていく。めちゃめちゃに乳房を揉まれ、強く噛みつかれ、マリーツァの体がびくんと跳ねた。
痛いだけではない、なにか、自分の中に生まれた未知の感覚が恐ろしくてたまらない。
(やあっ……こわいの! リェフ! 乱暴にしないで)
弄られている内に立ってきた胸の頂きをリェフに強く吸われ、知らなかった感覚は快感なのだと気づいてマリーツァは羞恥で顔を染めた。
足を掴まれ下肢を開かれ、自分でも触ったことのない場所にリェフが指を這わせて来る。
「んんっ!」
身をよじって逃げようとしても、がっしりと脚を掴まれ動けない。
入り口を撫でられているだけで、マリーツァは恥ずかしさで泣きたくなった。
「……やはり嫌か」
熱を帯びているのに冷たいリェフの言葉に、マリーツァは必死に首を振る。
(ちがう、そうじゃない。リェフのことは嫌じゃないけれど……こんなのは…あ!)
粘膜を擦られ、徐々に濡れていく自分の体をマリーツァは持て余した。
狂気を孕んだリェフが何度も耳元で繰り返す。
「逃がさない。マリーツァ! 絶対に逃がさない……!」
(こわい……、やめてぇ……っ。おかしくなっちゃう!)
声が出ないのも忘れて、必死に訴えるマリーツァを見下ろすリェフの顔には嗜虐的な笑みが浮かんでいる。
「嫌ならそう言えばいい」
「んうっ!?」
陰核を撫でられ、マリーツァの背筋に強烈な快感が走った。
「体は嫌がってないようだ、な、マリーツァ……?」
リェフは笑うと、くちゅりと指をマリーツァの中へ押し込んだ。
「…んぅ!!」
マリーツァは異物感に怯えた。
羞恥でおかしくなってしまいそうだ。嫌でも中へと入ってきたリェフの指に意識が集中してしまう。内部をかきまわされ、蜜壺から蜜があふれてくる。
「ほら、体は喜んでいるようだな、マリーツァ」
(ち、ちがっ)「んぅう……んっ!」
指を抜かれて一息ついたのもつかの間、大きく足を割り開かれた。秘所に熱いものがあてがわれ、ずぶずぶと押し入られる。
声が出ていたなら悲鳴を上げていただろう。指とは違う圧倒的な質量。
あまりの衝撃に、目の前が真っ白になる。
「んんん――!! うぅっ……」(痛い、痛い、いたい! やあ……んっ、あ)
ずいと腰を進められ、最奥にまでリェフが侵入してくる。
全てをマリーツァに収めたリェフは、思わず口から零れたというように呟いた。
「なあマリーツァ……、私の力から逃げるために、自分で喉を焼いたのか……?」
考えてもみなかったことを言われ、場違いにもマリーツァはぽかんと口を開けた。傷みも羞恥も何もかもが吹っ飛んだ。よりによって、リェフにそんな風に疑われるなんて、想像したこともない。
遅れて悲しみが湧きあがる。体は繋がっているというのに、まるで心を斬りつけられたように苦しい。
「マリーツァ……」
苦しげに顔を歪めたリェフに、眦に優しく口づけを落とされ、それで初めてマリーツァは気がついた。
――ああ、泣いてしまったのだと。
舌で何度も涙を拭われた。
それから何度も唇を食まれ、耳を舐られ、慰められる。
「すまない。すまない……すまないっ……」
涙が引く頃には、破瓜の痛みにも慣れた。
「すまない、マリーツァ……」
繰り返すリェフが叱られた子供のようで、今晩初めて肯定の意味でマリーツァは首を振った。
(もう、いいわ)
苦しむリェフを慰めてあげたい。今のマリーツァには愛を囁くことはできないのだ。代わりに、体を繋げて安心させてあげたい。
「……すまない」
もう一度囁いて、リェフはゆっくりと動き始めた。
ゆるゆるとした律動は、やがてマリーツァに蕩けるような快感を連れてくる。
「はあっ……はあ、あ、あっ」
ぼうっとして、何も考えられなくなった頭で、もっと奥を突いてほしいと自分から腰を擦りつけマリーツァはねだった。
けれど、伝わらない。もっとリェフが欲しいのに、言葉を作れない。
室内に響くのは、互いの熱い吐息と淫らな水音だけ。
「頼む、マリーツァ、愛していると言ってくれ…っ」
激しくなった突き上げはマリーツァを絶頂へと導く。最奥を突き上げるリェフの欲望をきゅうっと思わず締め付けた。
「――っ!」
声もなく達したマリーツァの内壁に熱い飛沫が吐き出される。
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