義兄様と庭の秘密

結城鹿島

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千代ちよは悪くないよ」
ひそりと義兄様にいさまが笑った。
「千代が居たから、今日まで暮らしてこれたんだよ。でも……他の男の嫁になる千代なんて見ていられないから――出て行こうと思ったんだ。千代に無体な真似をして嫌われてしまったみたいだし」

「嫌いになんてなってませんっ」
口づけのことなら嫌ではなかったのだ。驚きはしたけれど、嫌ではなかった。

「むしろ――、ん――ぅん……」
唇で封じられ、私はそれ以上言葉を続けられなかった。けして逃げることなど許さないというように、頬に添えられた手は力強い。

「ふ…はぁ……」
「僕のことが好きだと言ったね? なら、もう我慢しないよ? いいのかい?」

熱っぽい視線に顔が赤く染まる。今までも、義兄様はこんな風に私を見ていたのだろうか。義兄様を見つめていた私も、こんな風だったのだろうか。

「……私は義兄様のものですよ。最初に見つけてくれた時から」

私がそう言うと、折れるほど抱きしめられた。今度は深く口づけられ、息さえ奪われる。舌の絡み合う濃厚な口づけに背筋を快感が這い上がってくる。

「ずっと、お前を奪ってしまいたいと思っていた」

義兄様は、乱れた寝巻の襟元から覗く私の鎖骨に口づけを落とした。それから私の綿入れを剥ぎ取り、続いて寝巻の帯に手をかける。
「に、にいさま、ここは外ですよ?」
「こんな奥までは誰も来やしないよ。もう一秒も待てないんだ」
私から強引に寝巻を剥ぎ取った義兄様は、敷布のように枯葉の上に敷いた。手を引かれ、その上に倒される。
「千代は綺麗だ」
朝の冷たい空気に素肌を晒されて、乳首がつんと立つ。まじまじ見られると羞恥心でおかしくなりそうだ。
「あまり見ないで下さい……恥ずかしいです……」

いつの間にか空の端は白み始めている。万が一にも誰か人が来たら、ススキが衝立となって姿を隠してくれることを願うばかりだ。

「恥ずかしいことなんてないよ。こんなにたわわに実って、美味しそうだ、千代」
義兄様は私の乳房を鷲づかみにして、いたずらめいた笑みを浮かべた。いやらしいことを言われているのに、喜びが湧きあがってもくる。大人になんてなりたくなかったのに、大人になったから、こうして義兄様に愛してもらえる。そのことが堪らなく嬉しい。
乳房の柔らかさを堪能するように揉みしだく義兄様の手は熱く、触れた場所だけでなく体中が火照ってくる。

「あっ」
敏感な先端を刺激され、私は初めての感覚に身を捩った。
「ああ……あんっ……はぁ……」
尖った乳首を弄られていると、自分でも聞いたことのない嬌声が思わず漏れてくる。
「もっと味あわせておくれ」
言うと、義兄様は私の乳首に形のよい唇を寄せた。強く吸い上げられたかと思うと、繊細に舐られる。乳首を口に含んだ義兄様の姿の淫靡さに欲望が湧きあがってくる。

(あの、赤い舌が私の体を舐めているなんて……)

散々に弄られた乳首は快感を連れてきた。胸を愛撫されているだけなのに、下肢の付け根はいつのまにか濡れ、淫らに疼き始めている。
「あん、あ……はぁ…」

(屋外でこんなことをするなんて……なんていやらしいのかしら)
まるで獣のようだ。いや、義理とはいえ兄妹同士で交わっているのだ、私たちは獣そのものだ。

「はあ……甘いね、千代は。離せなくなる」
胸から臍、さらにその下へと義兄様の手が進む。秘所に伸ばされた指が入り口を優しく撫でる。私はもうされるがままだ。
「んっ…」
花びらを丹念に弄られていると奥から蜜が溢れてくる。
「ん、ふぁ……にい、さま」
割れ目に指が刺しこまれ、くちゅりと卑猥な音を立てた。
「あ、あっ……」

入れられたのはほんの僅かなのに、与えられた刺激に身体が仰け反る。
「こんなに蜜が溢れてきているよ。ほら、千代の蜜が」
溢れ出た蜜を義兄様が私に見せつけてくる。おまけにぺろりとその指を舐めるではないか。かっと顔に熱が昇る。

「だめです、そんな……! にいさま……」
「砂糖漬けより甘くて美味しいよ? もっとおくれ」
「あ、あっ……あっ、あ、ア……」

義兄様は少しずつ指を奥深くまで埋めていく。長い指を飲みこんだ蜜壺が物欲しげにひくついた。圧迫感はある。けれど、さらなる快感を求める欲望の方が強い。行為がわからなくても、本能が私を追い立てる。内壁を擦り上げられ、奥に差し込まれた指を無意識に締め付けてしまう。
「に、ぃさま…っ。あぁ……」
抜き差しされる指に合せて水音が鳴る。溢れた蜜で、内股もぐっしょり濡れてしまった。私は義兄様に腰を押し付け、さらなる快感をねだった。

「千代、今あげるからね」

義兄様は私の内部から指を抜き、ズボンと下着を下ろした。現れた逞しい男根に思わず息を呑む。初めてみる男性自身はあまりに凶悪で淫らだ。

「怖いかい?」
「に、義兄様なら、平気……」

足を持ち上げられ体を開かれる。そそりかえる熱を蜜壺に当てられ、ぐっと押し込まれた。
「!!」
その衝撃に私は悲鳴さえ上げることが出来なかった。地に落ちた果実のように身体が割れてしまうのではないか、不安を覚えるほどだ。
「ん、ふっ……く……ぅ」
破瓜の痛みに涙が零れてくる。身体の中が熱くてたまらない。

「痛い? 力を抜いて……」
「んっ、んん」

頷くと、優しく口づけられた。いつだって義兄様は優しい。痛みはあっても、自分の中に義兄様がいると思うと、喜びに胸が満たされる。体が私の想いに反応するかのように、ひくりと義兄様を締め付ける。
最奥にまで自身を収めた義兄様が、嬉しそうに顔を歪めた。
優しくあちこちを愛撫して、私の落ち着くのを待ってくれる。

「も……平気……だから、にいさまっ」
本当はまだ痛い。でも、義兄様に喜んでほしい。私を余すことなく味わってほしい。
義兄様はゆっくりと動き始めた。
初めての刺激なのに、攻め立てられている内に官能を刺激され、甘ったるい喘ぎ声が出てくるのに時間はかからなかった。

「あん、あっ、あ……」
「千代、ここが、いいの……?」

先ほどまでゆるゆると腰を揺さぶっていた義兄様が、私のいい場所を探して激しく奥を穿ってくる。
「あっ! あ、あん……あっ、あっ、あん……!」
熱棒に媚肉を擦り上げられる快感に私は溺れた。もう、どうなってもいい。
初めてなのに、こんなに感じるのはどうしてだろう。きっと、最初からこうなることは決まっていたに違いない。私と義兄様が結ばれることは必然だったのだ。
抽送の度に結合部から淫猥な水音が響く。激しさを増す律動に合せて、乳房が淫らに揺れている。

「本当に、千代は可愛い……、可愛いよっ」
義兄様の顔を快感に歪ませているのだが私なのだと思うと、湧き上がる愉悦におかしくなってしまいそうだ。互いに快感を追いながら高みに昇っていく。

「ああ、に、さま……、ああ――――!」

絶頂に達した私の中で、義兄様の欲望が肥大するのがわかった。
苦しげな吐息と共に私の内壁に熱いものが注がれる。びくびくと痙攣する体を抱きしめられ、口づけられた。
「んんぅ」
苦しい程の快感に私は完全に溺れた。
私の中は義兄様だけ。ずっとこうしていたい。義兄様と離れるなんて、考えられない。

「はっ……はあ……」
吐精の余韻に息を荒くする義兄様も美しい。
糸を引いて熱塊が引き抜かれ、浮いていた腰が落ちた。力なく伸びる足が枯葉にあたって、私はここが外だということを思い出した。


空はすっかり明るい。朝がやって来たのだ。
「このままじゃ風邪を引いてしまうね」
苦笑する義兄様が綿入れを肩にかけてくれたが、まだ私はとんでもない格好だ。
「山で作業するための小屋があるんだ。案内するから、千代はそこに隠れていておくれ」
「隠れる……?」
「これじゃ何をしてきたのか隠せないだろう? 屋敷に戻ってはきっと二度と外に出してもらえないだろうからね、逃げる算段をつけるまで待っててほしい」

義兄様の視線は敷布代わりにした寝巻に落ちている。土が付いて汚れているのは勿論、破瓜の印と愛液も残されている。
「そ、そうですね……」
明るい下で見ると、恥ずかしくて居た堪れない。

「結婚は破談になるかしら……」
「見せつけるつもりかい?」
「そ、そういうことじゃないわ。ただ……父さまは見逃してくれるかしら?と思って……」

義兄様と一緒にどこかへ逃げるのはいい。どんな困難が待ち受けていようとも、乗り越えられる。今ならその覚悟がある。
「僕と千代が家を出れば他に子供はいない事を思うと、追いかけられはするだろうし、捕まれば僕の方はタダじゃあ済まないだろうね。ひょっとしたら殺されるかも」
「そんな」
私は絶句した。否定が出来なかったから。父の顔が脳裏に浮かぶ。
「大丈夫だよ。僕は外に知り合いも居る。少しの間……そうだな、二、三日だけでいい。それだけあれば、カタをつけてここから出て行ける。心配しなくていいよ」
優しく私の頬に口づけを落として義兄様は微笑んだ。
「わかりました」

義兄様のシャツを借り、その上に綿入れを羽織った格好で山へと歩きだす。義兄様が手を引いてくれているからいいようなものの、なんとも心もとない。
歩くこと暫し、案内された先の小屋で、ようやく私は肩から力を抜いた。
小屋は山中に隠れるように立っていた。六畳一間の手狭なもので、小さな囲炉裏が真ん中にある。まるで昔話にでも出てくるような古い山小屋だ。

「僕のだけど単衣ひとえがあるから、とりあえずはこれを着て。千代の着替えは暗くなったら取りに行ってくる。それまで、心配だけどここで待っててくれるかい?」
「義兄様はどこへ?」
「ここにも食べるものは多少あるけど、離れから取ってくるよ。僕の荷物の整理もしなくちゃだしね」
いよいよ現実的になっていく話に、どうしても不安は湧きあがる。

「義兄様、大丈夫ですか……?」
「大丈夫、千代は何も心配しないで」
「ここまで誰か探しに来ないでしょうか?」

布団もそのままにして姿を消したのだ。遠くへ行ったとは思われないだろう。まず先に庭や裏山を捜索されそうなものだ。庭としては広大でも、人手を尽くせば探しきれない訳でもない。隠れていても平気だろうか。
「僕に任せて、千代は何も考えないでいいから」
義兄様は大丈夫と繰り返し、小屋を後にした。


義兄様を送り出し、単衣に着替えると私は身を横たえた。初めての情交の疲れで体が気だるい。義兄様が普段使っているのだという布団に潜り、山小屋の中を見回す。
小屋の中には収穫物が天井から干されたりしていて、なんだか賑やかだ。元々狭いのが、よけいに狭く感じるものの、離れよりも温かい生活感が漂っている。小屋中に義兄様の気配があるからかもしれない。

ふと、果実酒の瓶が押入れの隙間から覗くのに気がついた。
「義兄様、御酒を嗜まれるのね」
離れの方で見たことが無かったので、下戸なのか好きではないのかと思っていた。興味が湧いて一つきりの押入れを開けると、下の段の半分は様々な瓶が並んでいた。残り半分は布団を仕舞う場所だろう。上の段には桐箱や行李が重ねられている。
「怒られるかしら」
今まで知らなかった面を発見して、もっと義兄様のことを知りたいという気持ちが止められない。適当な箱をいくつか開けると、大小の薬研、乳鉢、ふるいや何かの型など薬の調合道具らしきものが納められていた。
そういえば、義兄様は庭の植物は薬にもなるといって、お腹を壊した私にしばしば薬をくれる。
「ここで調合していたのね……」

(義兄様のこと、まだ私の知らないことも沢山あるんだわ……)
でも、これから知って行けばいい。だって、これからはずっと一緒なのだから。

                 ◇

いつのまにか眠ってしまっていたのか、空腹を刺激する香りで私は目覚めた。
囲炉裏にかけられた鍋から良い香りが漂っている。

「起きたかい?」
「ん……義兄さま……。煮炊きをしても平気なの?」
煙で小屋の場所がばれたりしないだろうか。
「平気だよ。もう夜だから」
「え? わ、私そんなに寝てました?」
小屋に窓はないが、きゅうと鳴いた腹の虫のせいで、かなりの時間が経っていることは理解できた。くすくすと義兄様が笑い声を上げる。

「起こしてくれたって良かったんですよ。そうしたら、食事の用意を手伝えたのに……」
「千代の可愛い寝顔に見惚れてて、そんなこと考えもしなかったな」

自分の顔がかっと赤く染まるのがわかった。可愛いと、これまでも言われてきたけれど、今では艶めかしい意味を感じてしまう。狭い小屋だからどうしたって距離も近いし、なんだか落ち着かない。
「もう出来るから、待ってて。着替えはそこに持ってきた。全部を持ち出すわけにはいかなかったから、当面の分だけれどね。後で確認をして、足りないものがあれば言っておくれ」
「はい」
小屋の隅に大きな風呂敷が二つ置かれていた。私の部屋に忍びこんで持ち出してくるなんて、相当大変だった筈だ。母屋に居るのを見つかっただけでも、叱責されるのは間違いないのだから。
「大丈夫だって言っただろう? 千代は心配しなくていいんだ」
先回りするように義兄様は言った。何も聞いてくれるなというように。

「それでね、明後日、僕が家を出ることだけは義父さんに話すことにした。知り合いにも連絡がついたし、落ち着き先の心配はいらないよ。明後日、義父さんとの話が済んだら出て行く。わかった?」

碗に雑炊をよそいながら義兄様が告げた内容に私は驚いた。
「父さまと話って……大丈夫ですか? 以前、家出した時には連れ戻されたのでしょう?」
「僕はもう、小さな子供じゃないよ」
そうはいうものの、本当に大丈夫なのだろうか。例えば――激昂した父に暴力を振るわれたりしないだろうか。面と向かって嫌なことを言われたりしないだろうか。些細なことでも義兄様が傷つくのは嫌だ。

「そんなに心配してくれるなら、千代の勇気を分けておくれ。明日は時間があるしね」

「勇気、ですか?」
ああ、と艶のある笑みを浮かべた義兄様はぞっとするほど美しかった。

翌日、義兄様は一日中、私を貪った。

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