【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
72 / 261
第三章 出会い

72

しおりを挟む
連絡通路を渡り終え、第一校舎の三階廊下を下校生徒を避けながら走っていると、窓の向こうに俺が渡った連絡通路ではない方の通路で2人の生徒が走っているのが見えた。
きっと、俺を追っている人たちだろう。
このままでは、この先の連絡通路を隔てる扉で鉢合わせをしてしまう。

それでも、俺は止まるわけには行かない。
背後は確認できていないが、同じように誰かが追ってきているはずだ。
俺は見えているそいつらの動向を伺っていたが、下駄箱でされたようにまた指をさされた。
向こうのやつらにも見つかってしまったらしい。

それでも俺は突き進む。
廊下の突き当りまでやってきた。
俺は壁スレスレで階段のコーナーを曲がり始めた直後、連絡通路から追ってきた奴らが開け放たれた扉から飛び出してくる。

相手の手が伸び、俺の手に触れた。しかし、俺は寸でのところで腕を振り払った。
相手の手は宙を霞め、俺は階段へと足をかける。
俺は一度も止まらず階段を駆け上がり、上がって直ぐの扉に手をかけた。
ちゃんと開いた。

「おねがいっ、助けてっ。」

俺は空き教室に飛び込みながら助けを求めた。
そこには、火神だけでなく市瀬も久我もいた。
俺は勢いのままに火神の座っているソファーに飛び込む。

「お前ら、行け。」

火神の短い命令が飛んだ。
2人が直ぐに動く。

「やばいっ、逃げろ!」

バタバタと駆け上がってくる足音が聞こえた後、直ぐに慌てた声が聞こえてきた。

「逃がすわけないのねーん。」

語尾に音符でも付きそうな陽気な声がしたと思えば、二つの駆け出した足音が遠ざかり始めた足音を追って遠ざかっていく。

「お前相当走ってきたんだな。ひっでぇ汗。」

全力疾走で何分も走り続けた挙句、階段も駆け上がり続けた俺はかなり息が上がり、あまり汗を掻く方ではないがまだ残暑がひどい今、首筋には汗が伝っている。
そしてそんな俺の汗を、火神は何故か自分の服の長袖で拭い始める。

「やめてよっ、汚いでしょっ。」

俺はびっくりして敬語も忘れて腕を引き剥がす。

「だって鬱陶しそうだったから。」

「ハンカチあるから、いいよ。」

俺は呼吸を上ずらせたまま、ハンカチで汗を拭う。

「今回は何があったんだよ?」

「知らないです。急に追っかけられて、逃げてきただけなんで。」

俺は敬語を忘れていたことを今思い出し敬語で喋りつつ、苦しさから咄嗟に飛び込んだソファーに深く身を預けた。
関わるなと言われたことはわかっているのだが、動く気力も残っていなかった。

一旦身を預けてしまえば寝不足も相まって疲労が一気に押し寄せ、瞼が重くなるのを感じた。
こんな所で寝てはいけないと分かっていても、隣に座っている火神の甘い匂いが、まるで睡眠薬のように俺の眠気を誘ってくる。

どうしてこの人からはこんなに甘く、安心する匂いが出ているのだろうか。
特に何も言わない火神の静かさと甘い安心感のある匂いに誘われるまま、俺は事切れるように眠りに落ちた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...