【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
223 / 261
第七章 従順な俺

223

しおりを挟む
そう思い始め、明日から夏休みに突入しようかという夜。
俺はバイトを終えて帰路についていた。
夜になっても汗ばむほど暑くなり、汗をかくのが嫌いな俺にとって苦痛の季節が来た。

明日は朝から京介たちと遊ぶ約束をしている。
帰ったら直ぐにお風呂に入って早く眠りにつこう。
そう考えながら自宅前の真っ直ぐな道に差し掛かったとき、俺の家の前にハザードを焚いた車が止まっていた。
遠目からではどのような車か分からず、俺は他の家の知り合いか誰かが路駐でもしているのだろうと、深く考えずに自宅の駐輪場へと入って自転車に鍵をかける。

明日は服を買いに行こうと言っていたなと、明日の楽しみに胸を躍らせながら自宅へ戻ろうと顔を上げた時、先ほどハザードを焚いて止まっていた車から降りてきた人物が目に入り、俺は思いがけない人物に体が硬直する。

「どう、なさったんですか?」

あまりの不意打ちに俺は動揺の表情を隠せないまま、その人物へと声を投げかける。

「自分が一番分かっているんじゃないのか?」

そう言葉を返してきた人物は、俺の父親だった。
こんな時間に何故こんなところにいるのだろうか。

「すみません、思い当たる節がありません。」

「そうか。こんな時間に外出をしていて思い当たる節がないか。どこからの帰りだ?」

「ちょっと、コンビニに飲み物を。お茶を切らせていたので。」

「お茶を買いに行くのに1時間もかかるのか。コンビニはここから数分のはずなんだがな。それに、一番近いコンビニは反対方向じゃないのか?」

どこまで俺の周辺を把握しているのだろう。
1時間という時間が出たのは、父親が実際ここで待っていた時間だろう。
俺の家の前は駐禁ではないため、心置きなく待っていたに違いない。

「ちょっと、運動がてら遠回りをして帰ってきたので。勉強ばかりしていると、体が固まってしまいますから。」

「お前は今が何時か分かっていて言っているのか?22時を過ぎた外出は禁止だと言わなかったか?」

「すみません、息抜きに気を取られていて。」

「一体どこまで嘘をつくつもりだ。私が何も知らずにここまで来たと思っているのか?」

そんなはずはない。分かっていた。
それでも認めたくなかった。
これから起こるであろう事を、俺は受け入れたくなかった。

「すみません、何のことだか分かりません。」

「そうか。分からなくともどうでもいい。車に乗るんだ。帰るぞ。」

「すみません、家のことが残っているので、帰るわけにはいきません。」

「ここはもうお前の家じゃない。全て捨てる。気にする必要はない。」

「困ります。制服もありますし、教科書だって、」

「必要ない。お前の通う高校はもうあそこじゃない。この夏休みで編入する。早く車に乗りなさい。」

「何故ですか、勉強もしてますし遅刻も欠席もありません。」

「私を馬鹿にしているのか。私は、バイトを辞めろといったはずだ。それをコソコソと続けて。約束しただろう。1つでも従わなかった時は家に帰らせると。」

やはり、俺のことをきちんと観察していたのだ。
ずっと、静かに、自分たちではなく、周りの目を使って俺を監視していたのだ。

京介たちが補導されなくなったのは制服をやめて鷹山という目印を捨てたからではなく、父親が俺を泳がせて証拠を集めるためだったのだ。
この周辺の警察を使って、俺を監視し続けていたのだ。
俺を連れ帰るためにずっと。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...