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第七章 従順な俺
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そう思い始め、明日から夏休みに突入しようかという夜。
俺はバイトを終えて帰路についていた。
夜になっても汗ばむほど暑くなり、汗をかくのが嫌いな俺にとって苦痛の季節が来た。
明日は朝から京介たちと遊ぶ約束をしている。
帰ったら直ぐにお風呂に入って早く眠りにつこう。
そう考えながら自宅前の真っ直ぐな道に差し掛かったとき、俺の家の前にハザードを焚いた車が止まっていた。
遠目からではどのような車か分からず、俺は他の家の知り合いか誰かが路駐でもしているのだろうと、深く考えずに自宅の駐輪場へと入って自転車に鍵をかける。
明日は服を買いに行こうと言っていたなと、明日の楽しみに胸を躍らせながら自宅へ戻ろうと顔を上げた時、先ほどハザードを焚いて止まっていた車から降りてきた人物が目に入り、俺は思いがけない人物に体が硬直する。
「どう、なさったんですか?」
あまりの不意打ちに俺は動揺の表情を隠せないまま、その人物へと声を投げかける。
「自分が一番分かっているんじゃないのか?」
そう言葉を返してきた人物は、俺の父親だった。
こんな時間に何故こんなところにいるのだろうか。
「すみません、思い当たる節がありません。」
「そうか。こんな時間に外出をしていて思い当たる節がないか。どこからの帰りだ?」
「ちょっと、コンビニに飲み物を。お茶を切らせていたので。」
「お茶を買いに行くのに1時間もかかるのか。コンビニはここから数分のはずなんだがな。それに、一番近いコンビニは反対方向じゃないのか?」
どこまで俺の周辺を把握しているのだろう。
1時間という時間が出たのは、父親が実際ここで待っていた時間だろう。
俺の家の前は駐禁ではないため、心置きなく待っていたに違いない。
「ちょっと、運動がてら遠回りをして帰ってきたので。勉強ばかりしていると、体が固まってしまいますから。」
「お前は今が何時か分かっていて言っているのか?22時を過ぎた外出は禁止だと言わなかったか?」
「すみません、息抜きに気を取られていて。」
「一体どこまで嘘をつくつもりだ。私が何も知らずにここまで来たと思っているのか?」
そんなはずはない。分かっていた。
それでも認めたくなかった。
これから起こるであろう事を、俺は受け入れたくなかった。
「すみません、何のことだか分かりません。」
「そうか。分からなくともどうでもいい。車に乗るんだ。帰るぞ。」
「すみません、家のことが残っているので、帰るわけにはいきません。」
「ここはもうお前の家じゃない。全て捨てる。気にする必要はない。」
「困ります。制服もありますし、教科書だって、」
「必要ない。お前の通う高校はもうあそこじゃない。この夏休みで編入する。早く車に乗りなさい。」
「何故ですか、勉強もしてますし遅刻も欠席もありません。」
「私を馬鹿にしているのか。私は、バイトを辞めろといったはずだ。それをコソコソと続けて。約束しただろう。1つでも従わなかった時は家に帰らせると。」
やはり、俺のことをきちんと観察していたのだ。
ずっと、静かに、自分たちではなく、周りの目を使って俺を監視していたのだ。
京介たちが補導されなくなったのは制服をやめて鷹山という目印を捨てたからではなく、父親が俺を泳がせて証拠を集めるためだったのだ。
この周辺の警察を使って、俺を監視し続けていたのだ。
俺を連れ帰るためにずっと。
俺はバイトを終えて帰路についていた。
夜になっても汗ばむほど暑くなり、汗をかくのが嫌いな俺にとって苦痛の季節が来た。
明日は朝から京介たちと遊ぶ約束をしている。
帰ったら直ぐにお風呂に入って早く眠りにつこう。
そう考えながら自宅前の真っ直ぐな道に差し掛かったとき、俺の家の前にハザードを焚いた車が止まっていた。
遠目からではどのような車か分からず、俺は他の家の知り合いか誰かが路駐でもしているのだろうと、深く考えずに自宅の駐輪場へと入って自転車に鍵をかける。
明日は服を買いに行こうと言っていたなと、明日の楽しみに胸を躍らせながら自宅へ戻ろうと顔を上げた時、先ほどハザードを焚いて止まっていた車から降りてきた人物が目に入り、俺は思いがけない人物に体が硬直する。
「どう、なさったんですか?」
あまりの不意打ちに俺は動揺の表情を隠せないまま、その人物へと声を投げかける。
「自分が一番分かっているんじゃないのか?」
そう言葉を返してきた人物は、俺の父親だった。
こんな時間に何故こんなところにいるのだろうか。
「すみません、思い当たる節がありません。」
「そうか。こんな時間に外出をしていて思い当たる節がないか。どこからの帰りだ?」
「ちょっと、コンビニに飲み物を。お茶を切らせていたので。」
「お茶を買いに行くのに1時間もかかるのか。コンビニはここから数分のはずなんだがな。それに、一番近いコンビニは反対方向じゃないのか?」
どこまで俺の周辺を把握しているのだろう。
1時間という時間が出たのは、父親が実際ここで待っていた時間だろう。
俺の家の前は駐禁ではないため、心置きなく待っていたに違いない。
「ちょっと、運動がてら遠回りをして帰ってきたので。勉強ばかりしていると、体が固まってしまいますから。」
「お前は今が何時か分かっていて言っているのか?22時を過ぎた外出は禁止だと言わなかったか?」
「すみません、息抜きに気を取られていて。」
「一体どこまで嘘をつくつもりだ。私が何も知らずにここまで来たと思っているのか?」
そんなはずはない。分かっていた。
それでも認めたくなかった。
これから起こるであろう事を、俺は受け入れたくなかった。
「すみません、何のことだか分かりません。」
「そうか。分からなくともどうでもいい。車に乗るんだ。帰るぞ。」
「すみません、家のことが残っているので、帰るわけにはいきません。」
「ここはもうお前の家じゃない。全て捨てる。気にする必要はない。」
「困ります。制服もありますし、教科書だって、」
「必要ない。お前の通う高校はもうあそこじゃない。この夏休みで編入する。早く車に乗りなさい。」
「何故ですか、勉強もしてますし遅刻も欠席もありません。」
「私を馬鹿にしているのか。私は、バイトを辞めろといったはずだ。それをコソコソと続けて。約束しただろう。1つでも従わなかった時は家に帰らせると。」
やはり、俺のことをきちんと観察していたのだ。
ずっと、静かに、自分たちではなく、周りの目を使って俺を監視していたのだ。
京介たちが補導されなくなったのは制服をやめて鷹山という目印を捨てたからではなく、父親が俺を泳がせて証拠を集めるためだったのだ。
この周辺の警察を使って、俺を監視し続けていたのだ。
俺を連れ帰るためにずっと。
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