【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
251 / 261
最終章 人生最大の反抗

251

しおりを挟む
父さんは視線を少し泳がせながら、意を決したように俺と目をあわせ、口を開いた。

「正直、そんな風に思っているとは知らなかった。きちんとした教養といい大学に行かせることが親の使命だと思っていた。柚希は何も言わないし、常にはいしか言わなかったから、柚希も納得しているものだと思っていた。

虐めのことも、強姦未遂のことも気づいてやれなくてすまない。私は、知らない間に警視総監って言う肩書きに胡坐をかいていたんだな。人をきちんと見れていなかった。犯人の嘘を見抜いて真実を暴く仕事なのに情けない。柚希が家出をするはずがないと思っていたんだ。だから誘拐だと言って、探させた。

君の話は昔からよく聞いていたから、何かを企んでいるんじゃないかと思ったが、この1ヶ月、姿をくらますだけで何の要望もないから変だとは感じていた。私が原因だとは露知らず、色々すまなかった。柚希の好きにしたらいい。君の令状も取り下げよう。少し待っていなさい。話をしてくる。」

そう言って父さんは奥へと消えていった。
俺は颯斗と見つめあい、この結果に互いに頬をほころばす。

「柚希、ごめんなさいね。」

その場に残された母さんが謝罪をしたことによって、俺は再びそちらに視線を向ける。

「私もあなたに押し付けすぎたわ。柚希も知ってると思うけど、私の家父親が第一で育ってきたから、子供が父親を目指すのは当たり前だと思ってたの。私自身、それにおかしいって思ってた時期もあったのにね、忘れてたわ。こんな風になるまで気づいてあげられなくてごめんね。体裁ばかり気にしてあなたのことが見えていなかったわ。」

「いいよ、もう。何も言わなかった俺が悪いところもあるから。」

「親に反抗できない環境があるのは、私が身に染みてわかってるわ。まさか私がそれを繰り返すとは思っていなかったの。ごめんね。柚希のしたいようにしたらいいわ。だから、もう敬語で話すのはやめてね。あれで壁はずっと感じてたんだけどね、どうしたら小さい頃みたいに話してくれるようになるか分からなくて。」

「うん。もう敬語でしゃべらないよ。壁を作る必要はもうなさそうだから。」

「そう。良かったわ。」

母さんはそう言って胸を撫で下ろすように笑みを浮かべた。
俺の両親は、別に人の心を持っていないわけではなかったのだ。
互いが互いにずっと壁を作り、壁が分厚すぎて近寄れなかっただけに過ぎなかったんだ。

でも、それをぶち壊すほどの勇気も行動力も歩み寄りも、誰も出来なかった。
だからこういう極端な行動で助走をつけ、体当たりしないと壊せなかった。
俺が鷹山に行って、颯斗に出会ったからこそ、俺たち家族は再生することが出来た。
颯斗がいなければ、きっとこのような結末は迎えていなかっただろう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...