従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
上 下
6 / 40
第一章 鷹山高校

6

しおりを挟む
自転車で20分ほど移動すればそこには大きな複合施設があり、映画館やボウリング、ゲームセンターにカラオケもある場所だった。

この周辺にどれだけ遊べる場所があるのか分からないが、この辺りの学生のたまり場であることは駐輪場に止めてある自転車の量で何となく想像はついた。

「お、あんなとこに多田いんじゃん。おーい!多田!」

自転車を隙間に突っ込むように止め、施設内に足を踏み入れると、京介が誰かを見つけたらしく施設内の集団に向かって大きく手を振っている。
多田と思わしき人物は京介の声に反応して軽く手を振り返した。

その人物はその集団から頭1つ飛び出すほどの高身長であり、手足も長くすらりとした体型をしていた。
一緒にいた人たちに手を合わせて何やら断りを入れ、ニコニコという表現が似合う笑みをたたえてこちらに歩み寄る。

こちらに来ればその身長に驚かされる。
俺自身そんなに高いほうではないのもあるが、目線は肩までしかなく必然的に見上げなければならなくなる。

「京介じゃん、どうしたの?」

「今日入学式で仲良くなった奴と遊びに来た。こいつは多田和親かずちかな。俺の連れ。んでこいつは亀城柚希。あだ名は亀で、朝比奈から来たらしいぜ。」

京介が間に入って軽い自己紹介をしてくれ、俺は軽く会釈をする。

「朝比奈ってまた遠い進学校から来たんだね。どうして?」

「まぁ、色々。てか俺の中学ってそんなに有名なの?こんなに離れてるのに?」

「そりゃ都内屈指の進学校だからな。トップ5には入るだろ。お前そんなことも知らずに行ってたのかよ。」

「知らないよ。親に行けって言われて受験しただけだし。」

「それで受かるんだから俺らとは頭の出来がちげぇわ。つか呼んどいてあれだけどお前あっちのグループ抜けてきて大丈夫なのかよ?」

「いいよ。同じクラスの子達だし。京介とはクラス離れちゃったからね。」

そう言われて初めて俺と同じ制服を着ていることに気づく。
あまりの大人びたスタイルに気をとられて気づいていなかった。

「お前クラスどこ?」

「Eだよ。二つ隣。遊びに行くよ。」

態々わざわざ来なくていいわ。どうせ行き帰りは一緒だろ。てかあっちと合流しねぇなら一緒に遊ぶか?こいつこの辺何もしらねぇから案内すっけど。」

「いいよ。亀は電車通学?」

「いや、一人暮らしなんだ。学校の直ぐ近くに住んでる。」

俺は多田と軽い自己紹介のような会話をしつつ2人の動きに流されるようにゲーセンへと入店する。
前の学校では基本的に習い事をさせられていたこともあり、このような場所に遊びに来た記憶はあまりない。

勝手も分からない俺に2人は手本を見せながら教えてくれ、初めて友達と遊んでいるという感覚をまともに味わう。
俺の行動を制限するものは何もなく、時間や回りの目も気にせず遊びほうけた。
しおりを挟む

処理中です...