従順な俺を壊して

川崎葵

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第三章 出会い

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そして俺は水をテーブルに置き、決まっていたら注文でもとろうかとメモを出す。

「何か頼む?」

「じゃあ、亀城くんのおススメで。今日は裏方もするの?」

「まぁ、俺と店長しかいないしね。食べ物だけ?飲み物は?」

「両方とも。」

「コーヒー飲める?」

「甘いのなら。」

「分かった。」 

俺は出来るだけやり取りを短くし、カウンターに入って店長に飲み物のオーダーをし、俺は裏で食べ物のオーダーに取り掛かる。
俺のおススメだと言われたが、実際にメニューには本日のおススメというものが表記されているのでそれを出しておけばいいだろう。

「亀城君会計お願いできる?」

カウンターのほうから声をかけられ、俺は返事をして調理を途中やめにしながらレジ業務をこなし、きりのいいタイミングで店長のコーヒーが仕上がったので先にそれを提供することにした。

「カプチーノのアイスね。料理はもうちょっとで出来るから待ってて。」

「あ、ねぇ。」

俺はそれだけ告げて業務に戻ろうとしたが、呼び止められ嫌な顔になりそうなのをこらえて振り向く。

「何?」

「今日の上がりは22時?一緒に帰らない?」

「いや、ごめん。この後予定があるから。」

「こんな時間から?」

「京介たちと遊ぶ約束してるから。俺仕事中だからもういい?」

「あ、ごめん。」

実際、京介たちと遊ぶ約束などしていなかった。
しかし、そうでも言わなければ何かにつけて誘われそうな気がしたのだ。

裏で料理の火加減を見ながら片付けを並行してやり、盛り付け終えれば柿原の元へと運ぶ。
業務の多さと忙しさは好きなのだが、相手がこいつでなければと思わずにはいられない。

「ロコモコ丼ね。じゃ、ごゆっくり。」

俺は伝票をテーブルにおいてある筒に刺し、さっさと席を離れる。
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