【完結】従順な俺を壊して

川崎葵

文字の大きさ
38 / 261
第三章 出会い

38

しおりを挟む
少しでも柿原がこの場所から遠ざかる時間が欲しかった。
最後の客があいつでなければ、きっとお言葉に甘えて少し早めに帰宅して休んでいたことだろう。

多田が冗談で言っていた話が、今になって変に思い出されてしまう。
そんなまさかとは思うが、好意を寄せてストーカーまがいのことをしているんじゃないかとそんな考えに至ってしまう。

粗方の業務を閉店前に行っていた俺は、全ての業務を終えるまでそんなに時間は掛からず、22時15分にはタイムカードを切っていた。
裏口から出て店長に別れを告げ、俺は店長の言う通り雨が降り出してしまった中を傘を差した状態で自転車を押して歩いた。

柿原が出てもう20分以上は経っている。
それだけの時間があればそれなりに遠くにいけるし、家の場所によってはもう帰宅している頃だろう。

そのはずなのに、何かを不安に感じてしまうのは何故だろうか。
俺は少しだけその場に立ち止まり、周りに意識を向けた。

雨が降っている中、この時間この辺を歩いている人は少なく、車が時折横を過ぎていくだけで、雨音ばかりが響く静かな状態だった。
俺は杞憂きゆうかと思い歩き出そうとした時、俺の傘に雨が当たる音とは違う、他の傘に雨が当たる様な音が聞こえた気がした。

俺は咄嗟とっさに背後を振り返った。
そこには外灯が等間隔に下を淡く照らしているだけで、人も通っていなければ、車も通っていない。

聞こえた気がした傘の音さえも、するようなものは目に入らない。
気のせいかと歩き始めたが、俺はどうにも怖くなってしまい、京介に電話をかけ始めた。

『もし?どした?』

京介は直ぐに電話に出てくれ、俺は恐怖から携帯を少し強く握りこむ。

「京介今どうしてる?」

『今?雨降ってきたから多田と別れて家だけど?』

「家か。出てこれたり、しない?」

『今から?雨なのに?どうしたんだよ?』

「俺今バイト帰りなんだけど、閉店前に柿原がバイト先に来て。何か変なんだよ。俺誰にも言ってないはずなのに、何か知ってる風で、一緒に帰ろうとか言うから、ちょっと怖くなっちゃって。」

『は?お前それ大丈夫かよ。今一人?』

「一人。俺京介と遊ぶ予定があるから無理って断ったんだ。店出てから20分以上経ってるしさ、いないとは思うんだけど、何か不気味な感じして。」

『そういうことなら今すぐ出るわ。大通り歩いてんだろ?』

「うん。陸橋渡った先。」

『直ぐ向かうわ。電話切っても大丈夫か?』

「大丈夫。ごめんね、ありがと。」

『気にすんな。もし怖かったら多田に電話かけろ。あいつも直ぐ出るはずだから。』

「分かった。」

そう言ってる間にも京介は家の階段を駆け下りているようで、ばたばたという音が聞こえていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~

みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。 成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪ イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)

相性最高な最悪の男 ~ラブホで会った大嫌いな同僚に執着されて逃げられない~

柊 千鶴
BL
【執着攻め×強気受け】 人付き合いを好まず、常に周囲と一定の距離を置いてきた篠崎には、唯一激しく口論を交わす男がいた。 その仲の悪さから「天敵」と称される同期の男だ。 完璧人間と名高い男とは性格も意見も合わず、顔を合わせればいがみ合う日々を送っていた。 ところがある日。 篠崎が人肌恋しさを慰めるため、出会い系サイトで男を見繕いホテルに向かうと、部屋の中では件の「天敵」月島亮介が待っていた。 「ど、どうしてお前がここにいる⁉」「それはこちらの台詞だ…!」 一夜の過ちとして終わるかと思われた関係は、徐々にふたりの間に変化をもたらし、月島の秘められた執着心が明らかになっていく。 いつも嫌味を言い合っているライバルとマッチングしてしまい、一晩だけの関係で終わるには惜しいほど身体の相性は良く、抜け出せないまま囲われ執着され溺愛されていく話。小説家になろうに投稿した小説の改訂版です。 合わせて漫画もよろしくお願いします。(https://www.alphapolis.co.jp/manga/763604729/304424900)

処理中です...