5 / 8
第5章
しおりを挟む
第五章 高校、風の軌道
高校に上がると、部の規模も競争の密度も増した。
女子でスポーツ刈りは相変わらず少数派だったが、結衣はもう気にしなかった。
クラスでヒソヒソと「男子みたい」と囁く声もあった。だが、トラックでタイムを出すたび、囁きは消えていった。
「結衣、今日も切ってきた?」
「うん。試合前は落ち着かなくて」
「触っていい?」
「どうぞ」
指先が頭皮をなぞる。「わ、サラサラ……いや、サラサラじゃない、ザラザラ? 何この気持ちよさ」
笑い声が弾ける。髪型が、いつのまにか「話しかけられる入口」になっていた。髪が短いことで遠ざかる人もいたけれど、近づいてくる人もいた。
あるとき、同じ短距離の男子がこっそり言った。
「俺、ずっと坊主だったんだけど、最近伸ばしてた。でもさ、君見てたら、短いのに戻したくなった」
結衣は笑って答えた。
「自分が強くなれる髪型が、一番だよ」
床屋でも変化があった。
「最近、女子のスポーツ刈り、ちらほら増えたよ。皆、君みたいな競技者だ」
「ほんとですか」
「“誰かの最初の一歩”は、いつも誰かの背中を見て始まる」
その一言が、胸のどこかに長く残った。
⸻
高校に上がると、部の規模も競争の密度も増した。
女子でスポーツ刈りは相変わらず少数派だったが、結衣はもう気にしなかった。
クラスでヒソヒソと「男子みたい」と囁く声もあった。だが、トラックでタイムを出すたび、囁きは消えていった。
「結衣、今日も切ってきた?」
「うん。試合前は落ち着かなくて」
「触っていい?」
「どうぞ」
指先が頭皮をなぞる。「わ、サラサラ……いや、サラサラじゃない、ザラザラ? 何この気持ちよさ」
笑い声が弾ける。髪型が、いつのまにか「話しかけられる入口」になっていた。髪が短いことで遠ざかる人もいたけれど、近づいてくる人もいた。
あるとき、同じ短距離の男子がこっそり言った。
「俺、ずっと坊主だったんだけど、最近伸ばしてた。でもさ、君見てたら、短いのに戻したくなった」
結衣は笑って答えた。
「自分が強くなれる髪型が、一番だよ」
床屋でも変化があった。
「最近、女子のスポーツ刈り、ちらほら増えたよ。皆、君みたいな競技者だ」
「ほんとですか」
「“誰かの最初の一歩”は、いつも誰かの背中を見て始まる」
その一言が、胸のどこかに長く残った。
⸻
1
あなたにおすすめの小説
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる