刃先に触れる恋 —君が短くなるたび、僕は惹かれていく—

S.H.L

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第2部

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1|抱きしめられたまま、澪の胸元に圭介の息が落ちる

 圭介に抱き締められたまま、
 澪は動けなかった。

 胸が圧迫されるほど強い、
 けれど苦しくない抱擁。

 圭介の額が澪のこめかみに触れていて、
 そこから伝わる体温がじんわり広がっていく。

 圭介の呼吸が、
 澪の胸元に落ちる。

 ふ……

 その息の温度だけで背中が震えた。



2|“離したくない”という圭介の腕の力の誠実さ

 圭介の腕は硬い。
 でも、その硬さは力の誇示ではなく、
 “離したくない”という気持ちが
 そのまま形になったような抱き方だった。

 圭介が澪の背中に手を置いたまま、
 ゆっくりと指先を動かす。

 背骨に沿って
 す……
 と触れるだけで、
 澪の呼吸が乱れる。

 澪は囁くように言った。

 「……圭介さんの手、こんなに……」

 圭介が少し顔を寄せた。

 「こんなに、なんだ?」

 「……あったかい……」

 圭介はそれを聞いて、
 抱きしめる力を少しだけ強くする。



3|肩に落ちる指の熱。逃げられない距離。

 圭介の手が、
 澪の肩にゆっくり滑ってくる。

 肩の丸みを包むように触れ、
 軽く押すように引き寄せる。

 その動きは、
 抱きしめるための動きというより、
 触れた感触を確かめるための動き だった。

 澪はとっさに圭介のシャツを掴んだ。

 「っ……」

 圭介が小さく息を吸う。

 「澪……そんなふうに掴まれたら……
  もっと抱きたくなる」

 澪の頬が熱くなる。



4|1mmの頭を、優しく、深く撫で続ける手

 抱きしめたまま、
 圭介は澪の1mmの頭に手を回し、
 ゆっくり、深く撫でた。

 ざら……ざら……

 1mmは敏感だ。
 指の温度や動きが、
 そのまま皮膚へ届く。

 澪は首をすくめるように震えた。

 「……っ……」

 圭介は囁いた。

 「頭、ほんとに好きだわ。
  触るたび、澪が反応するのが……たまらない」

 澪は堪えきれずに言った。

 「そんな……言わないで……
  余計……」

 圭介が優しく笑う。

 「余計……どうするんだ?」

 澪の声が震える。

 「……苦しく……なります……」



5|額が触れ合い、指先が頬のラインをなぞる

 圭介は抱擁を解かず、
 澪の額と自分の額をそっと重ねた。

 澪は目を閉じる。
 触れあう部分から熱が広がる。

 圭介の指が、
 澪の頬のラインを
 ゆっくりなぞった。

 す……

 それだけで、
 全身の力が抜けてしまいそう。

 圭介が囁く。

 「澪……今、どんな気持ちなんだ」

 澪は震える声で答えた。

 「……嬉しい……
  でも、怖いくらい……ドキドキしてます……」

 圭介は目を閉じたまま、
 額をわずかに押し当てた。

 「俺もだよ」



6|唇が触れない距離――意地悪なほど甘い間

 圭介は澪の唇へ
 ゆっくり顔を近づけた。

 しかし、触れない。

 ほんの数ミリ。

 その距離は、
 触れられるより苦しい。

 澪の呼吸が乱れる。

 「……圭介さん……
  意地悪……」

 圭介は笑う気配を見せた。

 「この距離の澪が……一番可愛い」

 澪は羞恥と熱で息が詰まりそうになる。



7|そっと触れるだけで深くなるキス

 触れない距離で焦らし続け、
 圭介はようやく
 軽く唇を重ねた。

 ほんの一瞬、
 触れただけ。

 なのに深い。

 澪は声にならない呼吸を漏らした。

 圭介は額を寄せたまま言う。

 「澪……
  今日、俺がどれだけ我慢してたか……
  わかるか?」

 澪は小さく首を振る。

 「……わかりません……」

 圭介は澪の腰を引き寄せ、
 もう一度キスをした。

 今度は少し長く。

 離れたあと、
 圭介は耳元に唇を寄せた。

 ふ……

 「これが……俺の答えだよ、澪」



8|二人の影が溶け合うように寄り添う

 抱きしめたまま、
 二人はしばらく動かなかった。

 圭介の腕。
 澪の指。
 互いの息づかい。

 すべてが一つになっていく。

 理容店の静かな夜に、
 二人の影だけがゆっくり揺れていた。

 触れ合いの熱は消えず、
 むしろ深まっていく。

 澪は圭介の胸に顔を埋めた。

 圭介はその頭を撫で続けた。

 「……澪。
  ずっと側にいてくれ」

 澪は小さく頷いた。

 「はい……
  ずっと……」
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