刃先に触れる恋 —君が短くなるたび、僕は惹かれていく—

S.H.L

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第2部

6

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1|圭介のシャツを掴んだまま、澪は動けなかった

 圭介に抱きしめられたまま、
 澪は気づけば
 圭介のシャツを指で握りしめていた。

 力を入れたつもりはないのに、
 離したくない気持ちが
 勝手に指先に滲み出ていた。

 圭介はそれに気づくと、
 腕の力を少しだけ強くした。

 「……澪。
  そんなふうに掴まれたら……」

 澪は顔が熱くなって視線を逸らす。

 「ち、違うんです……
  気づいたら勝手に……」

 圭介は微笑んだ。

 「勝手でいい。
  俺も勝手に……お前を抱いてる」

 その言葉が、
 まるで肌の上に直接落ちてくるような温度だった。



2|指先が、昨夜触れた場所を“思い出すように”なぞる

 圭介は澪の背中を
 ゆっくりと撫ではじめた。

 背骨の横を指先でなぞり、
 肩甲骨のラインを確かめるように触れる。

 軽く、そして深く。

 澪の呼吸がまた乱れ始める。

 「……っ……」

 圭介は耳元で囁く。

 「昨日、ここ…震えてた」

 指先が“そこ”に触れる。

 澪は膝がふわっと抜けるような感覚に襲われ、
 圭介にしがみつくようして言った。

 「……覚えてたんですか……?」

 「全部覚えてる。
  澪の反応、全部」

 昨夜の残り火が、
 朝の光の中でまた熱を帯びていく。



3|1mmの頭に日光が落ち、それをなぞる圭介の指

 窓から差し込む光が、
 澪の1mmの髪を淡く照らしていた。

 圭介はそれに気づくと、
 澪の頭へ手を伸ばし――

 陽に染まった頭皮を指でそっと撫でた。

 ざら……

 太陽の熱と、
 圭介の指の熱が混ざる。

 澪は息を詰まらせる。

 「……っ……あ……」

 圭介は微笑んだ。

 「朝の光で見る坊主、綺麗だな。
  手が止まらなくなる」

 その言葉が、
 胸の奥までじんわり響く。



4|耳の後ろを撫でられ、声にならない息が漏れる

 圭介の指が
 澪の耳の後ろへ移動していく。

 耳の後ろは弱い。
 澪はそれを自覚しているが、
 何も言えない。

 圭介の指先が
 そっと触れた。

 す……

 「……っ……!」

 漏れた息に、
 圭介の呼吸が止まる。

 「澪……
  そんな声出されたら……」

 圭介は深く息を吸った。

 「……触るの、やめられなくなる」

 澪は圭介の胸に額を押しつけるしかなかった。



5|澪の頬をなぞりながら、圭介の声が低くなる

 圭介は澪の頬に触れ、
 指先でゆっくりと輪郭をなぞった。

 顎のライン。
 頬の丸み。
 唇のきわ。

 触れ方は優しいのに、
 熱が指先に宿っている。

 「澪……
  昨日も、今日も……綺麗だ」

 「そ、そんな……」

 「嘘じゃない。
  こうして触れたくなるのが証拠だろ」

 指先が唇の近くに触れた瞬間、
 澪の心臓が跳ねた。



6|唇には触れない。だからこそ濃密な“余白”

 圭介は唇のすぐ近くまで指を寄せて、
 しかし触れなかった。

 ほんの2cm。
 その距離が、
 触れるより官能的だった。

 澪が小さく囁く。

 「……ふぇ……
  圭介さん……近い……」

 圭介は囁き返した。

 「朝だぞ。
  キスしたら……止まらなくなる」

 距離はそのまま。
 触れそうで触れないまま。

 その“未完成の距離”こそ、
 夜の余韻を深めていく。



7|抱きしめ直される。音も光も、二人のためだけにある

 圭介はゆっくり腕を回し直し、
 澪を改めて抱きしめた。

 背中を包む圭介の手のひらの大きさ。
 胸を満たす呼吸の音。
 1mmを撫でる指先の熱。

 二人以外の世界は
 もうどこにもなかった。

 澪は目を閉じ、
 圭介の胸元で囁いた。

 「……こんな朝……
  初めてです……」

 圭介は澪の頭に軽くキスを落とした。

 ちゅ……

 「澪。
  これから毎日だ」

 その言葉が、
 どんな官能より胸に響いた。
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