刃先に触れる恋 —君が短くなるたび、僕は惹かれていく—

S.H.L

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第2部

10

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1|夜明け前、二人はまだ手を繋いだままだった

 気づけば、
 店の窓の外が淡く青く染まり始めていた。

 深夜を越え、
 夜明けが静かに訪れようとしていた。

 澪と圭介は、
 椅子に向かい合って座りながら——

 まだ手を繋いでいた。

 指先同士が絡み合ったまま、
 どちらからも離そうとしない。

 圭介がゆっくり言った。

 「……澪。
  ずっと手、温かいままだな」

 澪は小さく笑う。

 「圭介さんが離してくれないから……」

 圭介は少し照れながら、
 けれどその手をさらに握り返した。



2|照明ではなく、朝日が二人を照らした

 店の照明は落ちたまま。
 代わりに——

 東の窓から差し込む薄い光 が、
 ゆっくり店内を満たし始めた。

 朝日の下で見る澪の姿は、
 夜より柔らかく、
 どこか守りたくなる強さを持っていた。

 圭介はつぶやく。

 「……綺麗だな、澪」

 澪は思わず顔を背ける。

 「そんな……朝なのに……
  髪も……ないのに……」

 圭介は首を振った。

 「髪があるとかないとかじゃない。
  澪は澪だよ。
  どんな澪も……好きだ。」

 澪の胸がぎゅっと熱くなる。



**3|圭介がそっと澪の頭に触れる

 “もう官能ではない、愛の触れ方”**

 圭介は手を伸ばし、
 澪の1mmの頭にそっと触れた。

 昨夜とは違う。
 官能の熱でも、衝動でもない。

 まるで宝物に触れるような、
  優しい触れ方だった。

 澪は目を閉じた。

 「……それ……好きです……」

 圭介は言う。

 「俺も。
  澪に触れると……安心する」



**4|“今日から恋人でいいか?”

 圭介が初めて“言葉にした”瞬間**

 しばらく触れていたあと、
 圭介は手を離し、
 まっすぐ澪の目を見る。

 そして、
 言葉を選ぶようにゆっくりと言った。

 「澪……
  俺と……
  今日から恋人でいいか?」

 澪は息を呑む。

 最初に髪を切った日の自分。
 後悔した日も、
 涙した夜もあった。

 でも、
 すべてが今日へ続いていた。

 澪は強く頷いた。

 「……はい。
  圭介さんとなら……
  恋人になりたいです」

 圭介の表情が、
 ゆっくり崩れた。

 安堵と喜びと、
 やっとたどり着いた時間の温度。



5|二人は手を繋いだまま、朝を迎えた

 圭介がそっと澪を抱き寄せ、
 額に軽く口づける。

 ちゅ……

 夜の熱でもなく、
 欲望の続きでもなく、
 愛を確認するキス。

 圭介は囁く。

 「澪……
  これからは……
  隣にいてほしい」

 澪は目を閉じて答えた。

 「はい……
  私も……圭介さんの隣に……」

 朝日の中で、
 二人は静かに抱き合った。

 この抱擁こそ、
 夜より深く、
 官能より広く、
 確かな未来の始まりだった。
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