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第14章
第14章
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第14章:カウンセリングルームへの扉(詳細版)
翌週の土曜日、莉子(りこ)と麻衣(まい)は緊張の面持ちで駅へ向かっていた。スマートフォンの地図アプリには、北川(きたがわ)のカウンセリング事務所の住所がセットされている。
彼女たちが初めて床屋で髪を剃ってから、どれほどの時間と苦しみが流れただろう。剃髪という手段を繰り返しながらも抜け出せなかった閉塞感に、今こそ何らかの光を見いだすため、二人は意を決してカウンセリングを受けることにしたのだ。
路地裏の一軒家
約束の時間は午前十時。駅から少し離れた住宅街の奥まったところに、北川の事務所はあるらしい。周囲は閑静な住宅街で、ところどころに小さな公園や古い家屋が残るレトロな街並みだ。
表通りから一本入った路地を曲がると、写真で見たとおりの看板が目に入ってきた。「北川メンタルケア・オフィス」と小さく書かれたプレートが、木の門柱に掛けられている。こぢんまりとした一軒家のようで、表には小さな花壇が彩りを添えていた。
「……ここ、かな」
「うん、たぶん。なんか緊張するね」
二人は顔を見合わせ、小さく息をつく。思わず手を伸ばしてインターホンを押すと、ややあってドアがゆっくりと開いた。そこには前回の喫茶店で対面した北川が、柔らかな笑顔で立っている。
「いらっしゃい。よく来てくれたわね。さあ、中へどうぞ」
玄関をくぐると、古いながらも手入れの行き届いた木の床と、温かみのある照明が出迎える。カウンセリングルームと名乗るだけあって、リビングのような空間が事務所のメインスペースになっているらしい。壁の一面には心理学やカウンセリング関連の書籍が並び、テーブルには落ち着いた色合いのソファが配置されていた。
初めてのカウンセリング
北川は二人を迎えると、まず「今日は二人一緒に話す形でいいかしら?」と尋ねる。カウンセリングは通常、個人で受けることが多いが、事前の連絡で「できれば二人一緒に話したい」と伝えてあったのだ。
「グループカウンセリングに近い形になるけど、あなたたちがそれで良ければ、そうしましょう」と北川は快諾し、部屋のテーブルで向かい合うように座らせてくれた。
大きな窓から柔らかな朝の光が差し込み、風通しのいい室内は清潔感にあふれている。どことなく学校や病院とは違う安心感があるように感じられた。
「じゃあ、まず軽く自己紹介から……って言いたいところだけど、私のことはすでに知ってるわよね。北川メンタルケア・オフィスの北川です。今日はよろしくね」
そう前置きしながら、北川は書類の入ったファイルを開く。そこには簡単なヒアリングシートが挟まっていて、名前や連絡先、気になっている悩みなどを記入する欄があった。
莉子と麻衣は少し戸惑いながらも、それぞれ書き込む。職業欄や「相談内容」の欄に何を書くべきか迷ったが、「看護学生。国家試験に不合格」「剃髪を繰り返し、メンタル面で不安がある」など、思いつくままに書いてみた。
打ち明ける現状
ファイルに記入を終え、北川は二人の表情をそっと見つめる。彼女のまなざしはあくまでも優しく、興味や関心を示しながらも、押しつけがましさは一切ない。
最初に口を開いたのは麻衣だった。学校へ通ううちに追い詰められ、国家試験で不合格になり、髪を剃ることで気合を入れようとしたが、結果的には何度も剃刀に走ってしまい、ますます自分を追い込む形になっていること――端的にかいつまんで説明する。
続けて莉子も、同じように剃髪を経た経緯を語りながら、「もう諦めかけていたけれど、看護師への夢を捨てきれない」と本音を漏らす。言葉に詰まり、途中で声が震えてしまう場面もあったが、北川は黙って耳を傾けていた。
「そっか……大変だったね。剃髪って、普通はなかなか選ばない手段だと思うけど、それだけ追い詰められたんだよね」
そう言って、北川は二人の様子をうかがいながら質問を重ねる。「髪を剃っている最中に何を感じたか」「その後、どんな気持ちになったか」――誰にも話せなかった感覚を言葉にするとき、二人は顔を見合わせ、戸惑いながらも少しずつ解きほぐされていくのを感じた。
剃髪の“快感”をどう捉えるか
やがて話題は、剃髪中に感じた恐怖や痛み、あるいは官能的な興奮にまで及んだ。そこは二人ともかなり抵抗があったが、「実は、ちょっとおかしな感覚があって……」と麻衣が切り出すと、莉子も頷きながら「私も……」と続く。
北川は特に驚く様子もなく、うんうんと相槌を打ちながら耳を傾ける。
「痛みと快感は、脳の反応として近い部分があるのよ。特に、気持ちが不安定な状態だと、極端な刺激を求めてしまうことがある。髪を切るっていう行為は一種の『イメージ的なリセット』にもなるから……それを繰り返したくなる気持ちは分かるわ」
その説明を聞いて、二人は少し救われたような気分になる。誰にも理解されないと思っていた“奇妙な感覚”が、専門家の言葉によってある程度整理されるからだ。
「自分たちはおかしくなってしまったのではないか」という恐怖が、少しだけ和らぐ。北川のまっすぐな瞳が、判断せずに受け止めてくれているのを感じ取る。
試験と将来
話は次第に看護師を目指したきっかけや、国家試験への再挑戦をどうするかという具体的な将来計画へと移っていく。
北川は二人に「いま、試験勉強はどれくらい進んでいるのか」「何が一番の障害になっていると感じるのか」を尋ねた。莉子は正直に「不安が大きすぎて、勉強する気持ちを保てない」と打ち明け、麻衣も同様の状況であると付け加える。
「勉強のコツやスケジュール管理の話よりも、まずはメンタル面を整えることが大事かもしれないわね。医療現場に出る前に、心が壊れてしまったら本末転倒だもの」
北川の言葉に、二人は思わず苦笑する。医療従事者を目指すはずが、心を病んでいては笑い話にならない。
それでも「まだ遅くない」と北川は強調する。具体的なカウンセリング・プランや、必要に応じた医療機関の受診など、本人たちの意欲と状況を見ながら進めていけばいいという。
「今日は初回だから、あまり詰め込まなくていいわ。もし、次も来たいと思うなら、また連絡してね。私としては週一くらいで通ってもらえれば、変化が感じられるかもしれない。もちろん無理のない範囲で」
そう言われて、二人は顔を見合わせる。週一でこの場所に通い、己の内面と向き合う――それは大変なことかもしれないが、逆に言えば「まだ頑張れるんじゃないの?」とメッセージで言われたように、何かを諦めずに挑戦するチャンスなのかもしれない。
差出人不明メッセージの補足
最後に莉子は、ずっと気になっていた「差出人不明のメッセージ」について直接聞いてみた。北川は苦笑しつつ、言いにくそうに口を開く。
「あれは私の軽率な行動だったかもしれないわ。あなたたちが危険な方向へ行ってしまわないように、どうにか気を引きたいと思って……でも、やり方が拙かったわね。本当にごめんなさい」
改めて深く頭を下げる北川を見て、莉子は胸の奥が少しだけ暖かくなる。誰かが自分たちを気にかけて、心配してくれた結果なのだと実感すると、責める気持ちは薄れていった。
「ただ、あのメッセージを送るようアドバイスしてくれた人がいるの」と北川は続ける。具体的な名前は出さないが、学校関係者であることは間違いなさそうだ。その人物は「彼女たちは助けを必要としているけれど、下手に正面から関わると逃げてしまうかもしれない」と懸念していたらしい。
「その人も、あなたたちがここに来てくれることを願ってると思うわ。いつか、そのうちお話しできるといいわね」
それを聞いて、二人の表情にかすかな感謝が浮かぶ。自分たちの知らないところで、ずっと気にかけてくれていた人がいる――その事実だけで、孤独感が少しだけ和らぐのを感じた。
新たな一歩
初回のカウンセリングは予定より少し長引き、気がつけば昼下がりになっていた。北川がそっと部屋の時計を見やりながら「今日はここまでにしましょうか」と微笑みかける。
見慣れない空間に緊張していたはずなのに、二人は不思議と心が少し軽くなった気がした。あれほど隠したかった剃髪の経緯や、心の悩みを誰かに打ち明けることが、ここまで安堵感をもたらすとは予想していなかった。
「ありがとう。なんか、楽になった気がする……」
「また来ます。週一くらいで頑張りたい、かも」
その言葉に、北川は満面の笑みを浮かべる。彼女は差し出す手のひらを軽く重ねるようにして「焦らなくていいから。いつでもおいで」と優しく返す。
玄関のドアを開けたとき、春めいた風が二人の坊主頭を吹き抜けた。まだ少し冷たさは残っているものの、先ほどまでの灰色の雲はどこかへ流れていったようだ。
第14章の結び
三度の剃髪によって深い苦しみに沈み込んでいた莉子と麻衣にとって、北川との出会いは大きな転機となりそうな予感をもたらした。床屋の刃以外にも「心をリセットする方法」が存在するかもしれない――そんな小さな希望を、二人は初めて具体的に感じ始めている。
もちろん、カウンセリングが即座にすべてを解決してくれるわけではない。それでも、もう一度看護師を目指す道を模索するうえで、確かな手がかりになるかもしれない。
差出人不明のメッセージも、学校関係者の優しい配慮があったことを知り、孤立感は少しだけ薄れた。周囲から奇異の目で見られるばかりだと思っていたが、実は陰で支えてくれる人がいたのだ。
これから先、二人はカウンセリングを通じて自分たちの心の問題に向き合い、国家試験への再挑戦に臨もうとするだろう。その道のりは平坦ではないに違いないが、剃髪のループから抜け出すための小さな扉は、ようやく開きかけている。
次なる章では、二人がどのように自分の思いを整理し、再び看護師への目標と向き合っていくのか。春の風が吹き込むカウンセリングルームで、彼女たちはまだ知らない自分たちの強さや弱さを見つめなおしていくことになる。
翌週の土曜日、莉子(りこ)と麻衣(まい)は緊張の面持ちで駅へ向かっていた。スマートフォンの地図アプリには、北川(きたがわ)のカウンセリング事務所の住所がセットされている。
彼女たちが初めて床屋で髪を剃ってから、どれほどの時間と苦しみが流れただろう。剃髪という手段を繰り返しながらも抜け出せなかった閉塞感に、今こそ何らかの光を見いだすため、二人は意を決してカウンセリングを受けることにしたのだ。
路地裏の一軒家
約束の時間は午前十時。駅から少し離れた住宅街の奥まったところに、北川の事務所はあるらしい。周囲は閑静な住宅街で、ところどころに小さな公園や古い家屋が残るレトロな街並みだ。
表通りから一本入った路地を曲がると、写真で見たとおりの看板が目に入ってきた。「北川メンタルケア・オフィス」と小さく書かれたプレートが、木の門柱に掛けられている。こぢんまりとした一軒家のようで、表には小さな花壇が彩りを添えていた。
「……ここ、かな」
「うん、たぶん。なんか緊張するね」
二人は顔を見合わせ、小さく息をつく。思わず手を伸ばしてインターホンを押すと、ややあってドアがゆっくりと開いた。そこには前回の喫茶店で対面した北川が、柔らかな笑顔で立っている。
「いらっしゃい。よく来てくれたわね。さあ、中へどうぞ」
玄関をくぐると、古いながらも手入れの行き届いた木の床と、温かみのある照明が出迎える。カウンセリングルームと名乗るだけあって、リビングのような空間が事務所のメインスペースになっているらしい。壁の一面には心理学やカウンセリング関連の書籍が並び、テーブルには落ち着いた色合いのソファが配置されていた。
初めてのカウンセリング
北川は二人を迎えると、まず「今日は二人一緒に話す形でいいかしら?」と尋ねる。カウンセリングは通常、個人で受けることが多いが、事前の連絡で「できれば二人一緒に話したい」と伝えてあったのだ。
「グループカウンセリングに近い形になるけど、あなたたちがそれで良ければ、そうしましょう」と北川は快諾し、部屋のテーブルで向かい合うように座らせてくれた。
大きな窓から柔らかな朝の光が差し込み、風通しのいい室内は清潔感にあふれている。どことなく学校や病院とは違う安心感があるように感じられた。
「じゃあ、まず軽く自己紹介から……って言いたいところだけど、私のことはすでに知ってるわよね。北川メンタルケア・オフィスの北川です。今日はよろしくね」
そう前置きしながら、北川は書類の入ったファイルを開く。そこには簡単なヒアリングシートが挟まっていて、名前や連絡先、気になっている悩みなどを記入する欄があった。
莉子と麻衣は少し戸惑いながらも、それぞれ書き込む。職業欄や「相談内容」の欄に何を書くべきか迷ったが、「看護学生。国家試験に不合格」「剃髪を繰り返し、メンタル面で不安がある」など、思いつくままに書いてみた。
打ち明ける現状
ファイルに記入を終え、北川は二人の表情をそっと見つめる。彼女のまなざしはあくまでも優しく、興味や関心を示しながらも、押しつけがましさは一切ない。
最初に口を開いたのは麻衣だった。学校へ通ううちに追い詰められ、国家試験で不合格になり、髪を剃ることで気合を入れようとしたが、結果的には何度も剃刀に走ってしまい、ますます自分を追い込む形になっていること――端的にかいつまんで説明する。
続けて莉子も、同じように剃髪を経た経緯を語りながら、「もう諦めかけていたけれど、看護師への夢を捨てきれない」と本音を漏らす。言葉に詰まり、途中で声が震えてしまう場面もあったが、北川は黙って耳を傾けていた。
「そっか……大変だったね。剃髪って、普通はなかなか選ばない手段だと思うけど、それだけ追い詰められたんだよね」
そう言って、北川は二人の様子をうかがいながら質問を重ねる。「髪を剃っている最中に何を感じたか」「その後、どんな気持ちになったか」――誰にも話せなかった感覚を言葉にするとき、二人は顔を見合わせ、戸惑いながらも少しずつ解きほぐされていくのを感じた。
剃髪の“快感”をどう捉えるか
やがて話題は、剃髪中に感じた恐怖や痛み、あるいは官能的な興奮にまで及んだ。そこは二人ともかなり抵抗があったが、「実は、ちょっとおかしな感覚があって……」と麻衣が切り出すと、莉子も頷きながら「私も……」と続く。
北川は特に驚く様子もなく、うんうんと相槌を打ちながら耳を傾ける。
「痛みと快感は、脳の反応として近い部分があるのよ。特に、気持ちが不安定な状態だと、極端な刺激を求めてしまうことがある。髪を切るっていう行為は一種の『イメージ的なリセット』にもなるから……それを繰り返したくなる気持ちは分かるわ」
その説明を聞いて、二人は少し救われたような気分になる。誰にも理解されないと思っていた“奇妙な感覚”が、専門家の言葉によってある程度整理されるからだ。
「自分たちはおかしくなってしまったのではないか」という恐怖が、少しだけ和らぐ。北川のまっすぐな瞳が、判断せずに受け止めてくれているのを感じ取る。
試験と将来
話は次第に看護師を目指したきっかけや、国家試験への再挑戦をどうするかという具体的な将来計画へと移っていく。
北川は二人に「いま、試験勉強はどれくらい進んでいるのか」「何が一番の障害になっていると感じるのか」を尋ねた。莉子は正直に「不安が大きすぎて、勉強する気持ちを保てない」と打ち明け、麻衣も同様の状況であると付け加える。
「勉強のコツやスケジュール管理の話よりも、まずはメンタル面を整えることが大事かもしれないわね。医療現場に出る前に、心が壊れてしまったら本末転倒だもの」
北川の言葉に、二人は思わず苦笑する。医療従事者を目指すはずが、心を病んでいては笑い話にならない。
それでも「まだ遅くない」と北川は強調する。具体的なカウンセリング・プランや、必要に応じた医療機関の受診など、本人たちの意欲と状況を見ながら進めていけばいいという。
「今日は初回だから、あまり詰め込まなくていいわ。もし、次も来たいと思うなら、また連絡してね。私としては週一くらいで通ってもらえれば、変化が感じられるかもしれない。もちろん無理のない範囲で」
そう言われて、二人は顔を見合わせる。週一でこの場所に通い、己の内面と向き合う――それは大変なことかもしれないが、逆に言えば「まだ頑張れるんじゃないの?」とメッセージで言われたように、何かを諦めずに挑戦するチャンスなのかもしれない。
差出人不明メッセージの補足
最後に莉子は、ずっと気になっていた「差出人不明のメッセージ」について直接聞いてみた。北川は苦笑しつつ、言いにくそうに口を開く。
「あれは私の軽率な行動だったかもしれないわ。あなたたちが危険な方向へ行ってしまわないように、どうにか気を引きたいと思って……でも、やり方が拙かったわね。本当にごめんなさい」
改めて深く頭を下げる北川を見て、莉子は胸の奥が少しだけ暖かくなる。誰かが自分たちを気にかけて、心配してくれた結果なのだと実感すると、責める気持ちは薄れていった。
「ただ、あのメッセージを送るようアドバイスしてくれた人がいるの」と北川は続ける。具体的な名前は出さないが、学校関係者であることは間違いなさそうだ。その人物は「彼女たちは助けを必要としているけれど、下手に正面から関わると逃げてしまうかもしれない」と懸念していたらしい。
「その人も、あなたたちがここに来てくれることを願ってると思うわ。いつか、そのうちお話しできるといいわね」
それを聞いて、二人の表情にかすかな感謝が浮かぶ。自分たちの知らないところで、ずっと気にかけてくれていた人がいる――その事実だけで、孤独感が少しだけ和らぐのを感じた。
新たな一歩
初回のカウンセリングは予定より少し長引き、気がつけば昼下がりになっていた。北川がそっと部屋の時計を見やりながら「今日はここまでにしましょうか」と微笑みかける。
見慣れない空間に緊張していたはずなのに、二人は不思議と心が少し軽くなった気がした。あれほど隠したかった剃髪の経緯や、心の悩みを誰かに打ち明けることが、ここまで安堵感をもたらすとは予想していなかった。
「ありがとう。なんか、楽になった気がする……」
「また来ます。週一くらいで頑張りたい、かも」
その言葉に、北川は満面の笑みを浮かべる。彼女は差し出す手のひらを軽く重ねるようにして「焦らなくていいから。いつでもおいで」と優しく返す。
玄関のドアを開けたとき、春めいた風が二人の坊主頭を吹き抜けた。まだ少し冷たさは残っているものの、先ほどまでの灰色の雲はどこかへ流れていったようだ。
第14章の結び
三度の剃髪によって深い苦しみに沈み込んでいた莉子と麻衣にとって、北川との出会いは大きな転機となりそうな予感をもたらした。床屋の刃以外にも「心をリセットする方法」が存在するかもしれない――そんな小さな希望を、二人は初めて具体的に感じ始めている。
もちろん、カウンセリングが即座にすべてを解決してくれるわけではない。それでも、もう一度看護師を目指す道を模索するうえで、確かな手がかりになるかもしれない。
差出人不明のメッセージも、学校関係者の優しい配慮があったことを知り、孤立感は少しだけ薄れた。周囲から奇異の目で見られるばかりだと思っていたが、実は陰で支えてくれる人がいたのだ。
これから先、二人はカウンセリングを通じて自分たちの心の問題に向き合い、国家試験への再挑戦に臨もうとするだろう。その道のりは平坦ではないに違いないが、剃髪のループから抜け出すための小さな扉は、ようやく開きかけている。
次なる章では、二人がどのように自分の思いを整理し、再び看護師への目標と向き合っていくのか。春の風が吹き込むカウンセリングルームで、彼女たちはまだ知らない自分たちの強さや弱さを見つめなおしていくことになる。
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