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旅に出る事になりまして
しおりを挟むある日、今は私の義理の兄になる神官さんに呼び出された
「アンに頼みたい事があるんだ」
どうやら神官さんの実家の治める領地で謎の疫病が蔓延してるらしい
領地には癒し手さんもお医者様もいるらしいのだけどとても手が回らないのだそうだ
聖女がいれば一発で解決なのだろうが、今は魔王討伐の為に勇者パーティーに参加中だから無理だし、そこで聖女並みの癒しが出来る私に白羽の矢が立ったのだ
まあ、神官さんの実家なら1回も行ったこと無いけど一応私の実家でもあるわけで、エロ男爵から助けてもらったし、恩を返すつもりで快く引き受ける事にした
神官さんの名前はクリス・トラビス子爵
あら?私の名前もアン・トラビスなのね
こんなの小説には出てこなかったけど、そもそもアンはロディオが帰って来るまでもう出番は無かったな
どうせモブだし、もう好きにしてもいいかー
魔王が倒されて、ロディオと聖女がくっつけば大筋は間違ってないから問題ないでしょ
せっせと旅の支度を始める私に神官さん、もといクリスお兄様が何か欲しい物はあるか?と聞いてきたから即答しました
「酒!強いやつ!」
お兄様、目をまんまるにして驚いたかと思えば、アンにはまだ早いと怒り出す始末
いやいやこの世界の成人は16歳でしょ?
私だってもう17歳よ?早くは無いじゃん?
って内心ツッコミながらも、呑むための酒じゃ無いと説明した
疫病って事は多分何かのウィルスでしょ?
石鹸は平民には高級品ですぐには手に入らないだろうし、広めるにも時間がかかる
ならもうアルコール消毒をしてもらいましょって考えたからなんだけど、そうしたらクリスお兄様、ニッコリと微笑まれて
「石鹸の代わりになるのか?アンは物知りだなー」
と頭撫で撫でされた
あれ?
私、酒は早いって言われたし幾つだと思われてるんだ?
確かに背も低いし小柄だけど、さすがに属性見てくれてるし、成人女性ってわかってるよね?
でも撫で撫でしてるクリスお兄様の優しい笑顔を見てると…
いいかも、妹!
イケメンの優しいお兄様ってコレ最高じゃない?
と、ブラコンの扉が開きそうになったのだった
トラビス領地は帝都には近いが、子爵家が治める領地なのでさほど広くは無いし、これといった名産も無い、言葉が悪いがあまり盛えていない貧乏領地なのだとか
その上、疫病だなんて踏んだり蹴ったりね
せめて病気だけでも早く治してあげたいと気合い満々で出発したのでした
馬車の旅は当然はじめてだったけど、お尻が痛くなったら癒やして、ついでにお馬さんも行者さんも癒やしてあげれば意外と快適で、あっという間の時間に感じた
実際、お馬さんが元気過ぎて予定より早く着いたらしいけど、もしかして癒し過ぎた?
まあ元気なら、いいか…な?
トラビス領に着いたらまずは実家の子爵家に向かう
訪問中は子爵家でお世話になるからまずはご挨拶だ
クリスお兄様が知らせてくれていると思うけど緊張するわ…
元々平民だし、前世も一般人だし貴族のマナーとかわからんよ
出迎えてくれたのはクリスお兄様のお兄様、つまりトラビス子爵家の長男さんで、
クロード・トラビス子爵
今は代替わりをしていて当主様なんだとか
折角緊張しながらも挨拶しようと試みたのに、そんな事よりもとばかりに邸の子供部屋に連れて行かれ、押し込まれる
そこには可愛い男の子と、貴婦人が赤い顔してベットに寝かされていた
クロード様の奥様と息子さんらしい
「来てもらって早々申し訳ないのだが、あまりにも辛そうでな…」
まあ家族が疫病なら心配なのは仕方ないし、クロード様の焦るのもわかる
どれどれ、どんな感じだ?
と、私はポケットからスカーフを出してマスク代わりに口と鼻を覆って結んだ
熱は高い、脈も早い、喉は…ん?
腫れてるってレベルじゃない?顔がパンパンじゃん!!
んーー?
これって…もしかしてムンプスか?
ムンプスウィルス、つまり日本で言うおたふく風邪だ。
日本でもムンプスに特効薬は無かったはず。
ひたすら解熱剤で熱を下げて、冷やしてってしてれば1週間くらいで自然に治るわよね?
と、一瞬安心したがそれは日本の話
ちょっと待って、この世界に予防接種なんて無いわよね?
それは予防接種を打ってたらの話じゃん!
しかも結構重い後遺症もあったはず…
特に成人男性にはヤバいヤツが!!
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