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村に帰る事になりまして

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居心地が良くてついつい長居してしまっているトラビス邸

今日も可愛い可愛いクロード様の息子ケビン君と甘いおやつタイム

そんな私の癒しの時間に、トラビス家の執事さんがクリスお兄様からの手紙を持ってきてくれた。

ちなみに私がトラビス邸に初めて来た時はこの執事さんいなかったのよねー

そうムンプスに感染してたのよ。
おばあちゃんに癒してもらって自主隔離してたんだって、復活してからお迎えも出来ずにって平謝りされた
 
そんなの元々平民の私は気にもしないのにさ

そもそも私が来る前はおばあちゃんの癒しは一日五人限定で、領主様の家族なんだからライナ様もケビン君も一番に癒してもらえば良いものの、ちゃんと重症な人から順番を守ってたんだって、そういう生真面目な所、やっぱりクリスお兄様のお兄様よねー
まあ、そんな中早くに癒やしてもらえた執事さんは相当重かったんだろうなーなどと考えながら手紙を開く


クリスお兄様からの手紙には疫病を無事に治めた事の賞賛と、

(そろそろ帰ってきて欲しい)

って事だった

あの村には私以外癒し手もお医者さんもいないもんね

色々忙しい上に村の人達にいつ戻るのか催促されるし、私の不在を知らずに訪ねてきた人もいるし、とにかく帰ってこいって内容だった

確かに、そろそろ帰らないとなーって思ってたよ

ただメープルシロップの件から領民のみなさんがやたら優しいし、クロード様もライナ様も
(ずっといてもいい)
って言うし、何よりケビン君が可愛すぎるのよねー

まだ五歳で、

「アンおねーしゃまっ」

ってキラキラ笑顔で抱きつかれたら、もう魂ごと持っていかれるわ

天使なの?
いや魂もっていかれるから魔王ね!
魔王はここにいたわっ!?

なんて馬鹿な妄想していると魔王というワードに引っかかる

そうロディオ、
勇者パーティーの動きも気になるし、やっぱり帰るかー

その日の夕食の席で、クロード様ライナ様とケビン君にクリスお兄様から手紙が来たから帰ると伝えたのだった

「チッ…」

舌打ちするクロード様?あれ?


「もう、クリスは相変わらず…」

呆れ顔のライナ様?んー?
なぜかクリスお兄様の評判悪いよ?


「アンおねーしゃま!いなかいでー」

涙を目にいっぱいためていうケビン君
いや可愛い!法が許すなら連れ去りたい(許されないけど)


そんな感じで、私が帰る事が翌日には領民のみなさんにも伝わっていて、なにやら盛大にお別れ会を開いてくれる事になってたよ

準備があるからお別れ会は五日後と言われたけど、ん?

そのお別れ会当日は食べて飲んで、歌って踊っていっぱい領民のみなさんも癒し手のおばあちゃんもヨレヨレだったお医者さんも来てくれて大騒ぎした

この世界に来てはじめてお酒に手を出した私は翌日すっかりダウンして昼過ぎまで寝てしまった

んん?私いつ帰れるんだ?


ようやく帰郷の準備が整うのはクリスお兄様の手紙が来てから既に一週間が過ぎていた


出発の日にはみなさんにお見送りされて、私、ちょっと泣きそうだよ


「アンちゃん、気をつけて帰ってね」

ライナ様にハグされて


「これ、ケビンの宝物あげりゅ…」

また涙目になりながらケビン君、丸くて白い小さな石をくれる

ああー子供の頃ってなんでも無い石とか宝物にするよねーとか思いながらありがとうって受け取った


「君のおかげでトラビス領は生まれ変わった、本当にありがとう」

当主様らしくビシッと挨拶したかと思えば、


「私もアンの兄になるのだからお兄様と呼んでくれ…」

なんて可愛い事をいうクロードお兄様
くうっー
さすが親子おねだりの目がケビン君と同じっ!


そんなこんなでまた出発まで時間がかかったけど、大勢のみなさんに見送られた

私は馬車の中から見えなくなるまで大きく手を振り続けたんだ



こうやって、長い長いアンの社会科見学は幕を閉じるのだった…




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