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第1部 奈美編
🎵6 もうすぐわかるよ、とっておきの星空
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星空弾丸ツアーの深夜バスに京と奈美は渋谷から乗り込んだ。最初のスポットは、お寺の裏の竹林で、そこにある防空壕から観る星空が最高だった。
ほんとうになぜなのかわからないけれど、そこだけ空気が澄んでいて瞬く星々が奇跡的に見えるのだ。いわゆるパワースポット的な場所でもあるので、そういった霊的なパワーが働いているのかもしれない。
京は、星空を見上げながら「そういえばもうとっくのとんまになくなちゃったけど、その昔東急文化会館の上にプラネタリウムがあったんだよ」と奈美に言った。
「子どもの頃に一度だけ、プラネタリウムで星を見たことがある」と京。
「そうなんだ。わたしプラネタリウム見たことないな」
「じゃ、今度行ってみる? つい最近知ったんだけど、渋谷のプラネタリウムなくなってしまったんじゃなくて、移転してまた見れるみたいなんだよ」
「うん。絶対行きたい。本物の星ではないかもしれないけれど、天空いっぱいに散りばめられた神秘的に輝く星々。見たいなあ。ロマンティックなんだろうなあ」
「そうだね、夜でも明るい東京の空では、星降る夜は体験できないね。プラネタリウムは、それに近いものを再現してくれるんだろうけど、俺、実はあるんだよ。帯広の芽室というところで牧場実習やったことあったんだけど、もうほんとうにあれはスゴイ。絶対に感激する! ここも都内にしては星がよく見えると思うけど、こんなもんじゃないんだよ、ほんとうに星が降ってくる感じするから、マジで」
奈美は眸をキラキラさせながら「絶対、京くんと一緒に見たい」そういった。
「うん。プラネタリウムもだけど、北海道一緒に行きたいね」
◇
次のスポットは、都内ではないけれど鍾乳石がいくつも連なる幻想的な地下通路というか鍾乳洞のなかを探検した。威風堂々とはとてもいかないけれど、銅製の兜をかぶった腰の引けたシュメール人といったテイで奈美と手を繋いで行進した。
大地の甘い水の下、冥界に風が吹いていく。そんな歌を詠んでみたくなってしまうくらい、物理的な異世界な感じと100年で1センチしか伸びないとかいう鍾乳石に、何やら時間の概念がない永遠を感じた。
鍾乳洞の中に入ると、肌寒いくらいでほかの人たちもほとんどが半袖なので、殊に女性の人は寒がっていた。
京は、前々から巨大な地底湖に興味があった。ただし、それは脳内で想像して楽しむという楽しみ方で、実際に自分がケイビングするとなると最悪パニックになるかもしれないと思っている。
この鍾乳洞は、まあ実際にケイビングするわけではなく、ドラゴンの体内を見学してまわるといった趣きだけれど、現実世界にいながら異世界の神秘さに触れられるといった点では同様だった。
「奈美は、高いところ結構大丈夫だよね? ジェットコースターとか大好きみたいだし」
「まあ、京くんよりはね。でも、狭いところはダメかな」
「ああ、俺もね、閉所恐怖症ではないと何の根拠もなく思ってたんだけど、高さ1メートルもない狭苦しい迷路みたいな地下ピットの中には入ったときは、ヤバかった。過呼吸なんてまったく経験なかったんだけど、これはマジに過呼吸がはじまりそうだなって状態にギリギリなって、なんとか過呼吸にならないようにって抑えてたけど、ほんとうにあれは怖かったな」
「危なかったんだね。よかった。京くん生きててくれて」
「大げさだな」と京はその時笑ったが、実際に京の高校の時の友人は地下での作業中に硫化水素中毒で事故死していた。その胸の詰まるような友人の死を反射的に思い出した京は、奈美が怖がるといけないと思いその事は黙っていたが、その彼を含め京と仲が良かった友人たちは、不思議と早くに亡くなってしまったり事故にあったりしているのだった。
むろん、友人全員というわけではないが特に仲が良かった友人ふたりは、すでに他界しているのは紛れもない事実だった。
京はそんな人生の巡り合わせを、どう受け止めていいのかわからなかった。
眼前の斜面にはリムストーンと呼ばれる棚田のような地形が形成されていた。そしてその棚には水が溜まっていて小さな滝となって次の棚へ、さらに次の棚へと、まるで掌から掌へと流れ落ちる砂のように静かに零れ落ちていた。
「ねぇ、京くん。たしかこのミニツアー、星空なんちゃらじゃなかったっけ?」と、奈美が柵から身を乗り出しながら京を振り返って聞いた。
「それな! やっと気がついた?」
「もう、何よいじわるなんだから、教えてよ」
「もうすぐわかるよ。とっておきの星空」
そして、それは確かに京の言った通りの星空だった。満天の星ではなかったけれど、楕円形の枠の中にのぞいて見えている星空は、満天の星とは違う凝縮した美がそこにはあった。
それは、地上に開いた穴を地下から眺めているわけなのだが、その穴の形がフレームになって、星空が切り取られているのだった。
絵画や写真と同じように、散漫ではない凝縮された美がそこに、ひっそりと息吹いていた。
ほんとうになぜなのかわからないけれど、そこだけ空気が澄んでいて瞬く星々が奇跡的に見えるのだ。いわゆるパワースポット的な場所でもあるので、そういった霊的なパワーが働いているのかもしれない。
京は、星空を見上げながら「そういえばもうとっくのとんまになくなちゃったけど、その昔東急文化会館の上にプラネタリウムがあったんだよ」と奈美に言った。
「子どもの頃に一度だけ、プラネタリウムで星を見たことがある」と京。
「そうなんだ。わたしプラネタリウム見たことないな」
「じゃ、今度行ってみる? つい最近知ったんだけど、渋谷のプラネタリウムなくなってしまったんじゃなくて、移転してまた見れるみたいなんだよ」
「うん。絶対行きたい。本物の星ではないかもしれないけれど、天空いっぱいに散りばめられた神秘的に輝く星々。見たいなあ。ロマンティックなんだろうなあ」
「そうだね、夜でも明るい東京の空では、星降る夜は体験できないね。プラネタリウムは、それに近いものを再現してくれるんだろうけど、俺、実はあるんだよ。帯広の芽室というところで牧場実習やったことあったんだけど、もうほんとうにあれはスゴイ。絶対に感激する! ここも都内にしては星がよく見えると思うけど、こんなもんじゃないんだよ、ほんとうに星が降ってくる感じするから、マジで」
奈美は眸をキラキラさせながら「絶対、京くんと一緒に見たい」そういった。
「うん。プラネタリウムもだけど、北海道一緒に行きたいね」
◇
次のスポットは、都内ではないけれど鍾乳石がいくつも連なる幻想的な地下通路というか鍾乳洞のなかを探検した。威風堂々とはとてもいかないけれど、銅製の兜をかぶった腰の引けたシュメール人といったテイで奈美と手を繋いで行進した。
大地の甘い水の下、冥界に風が吹いていく。そんな歌を詠んでみたくなってしまうくらい、物理的な異世界な感じと100年で1センチしか伸びないとかいう鍾乳石に、何やら時間の概念がない永遠を感じた。
鍾乳洞の中に入ると、肌寒いくらいでほかの人たちもほとんどが半袖なので、殊に女性の人は寒がっていた。
京は、前々から巨大な地底湖に興味があった。ただし、それは脳内で想像して楽しむという楽しみ方で、実際に自分がケイビングするとなると最悪パニックになるかもしれないと思っている。
この鍾乳洞は、まあ実際にケイビングするわけではなく、ドラゴンの体内を見学してまわるといった趣きだけれど、現実世界にいながら異世界の神秘さに触れられるといった点では同様だった。
「奈美は、高いところ結構大丈夫だよね? ジェットコースターとか大好きみたいだし」
「まあ、京くんよりはね。でも、狭いところはダメかな」
「ああ、俺もね、閉所恐怖症ではないと何の根拠もなく思ってたんだけど、高さ1メートルもない狭苦しい迷路みたいな地下ピットの中には入ったときは、ヤバかった。過呼吸なんてまったく経験なかったんだけど、これはマジに過呼吸がはじまりそうだなって状態にギリギリなって、なんとか過呼吸にならないようにって抑えてたけど、ほんとうにあれは怖かったな」
「危なかったんだね。よかった。京くん生きててくれて」
「大げさだな」と京はその時笑ったが、実際に京の高校の時の友人は地下での作業中に硫化水素中毒で事故死していた。その胸の詰まるような友人の死を反射的に思い出した京は、奈美が怖がるといけないと思いその事は黙っていたが、その彼を含め京と仲が良かった友人たちは、不思議と早くに亡くなってしまったり事故にあったりしているのだった。
むろん、友人全員というわけではないが特に仲が良かった友人ふたりは、すでに他界しているのは紛れもない事実だった。
京はそんな人生の巡り合わせを、どう受け止めていいのかわからなかった。
眼前の斜面にはリムストーンと呼ばれる棚田のような地形が形成されていた。そしてその棚には水が溜まっていて小さな滝となって次の棚へ、さらに次の棚へと、まるで掌から掌へと流れ落ちる砂のように静かに零れ落ちていた。
「ねぇ、京くん。たしかこのミニツアー、星空なんちゃらじゃなかったっけ?」と、奈美が柵から身を乗り出しながら京を振り返って聞いた。
「それな! やっと気がついた?」
「もう、何よいじわるなんだから、教えてよ」
「もうすぐわかるよ。とっておきの星空」
そして、それは確かに京の言った通りの星空だった。満天の星ではなかったけれど、楕円形の枠の中にのぞいて見えている星空は、満天の星とは違う凝縮した美がそこにはあった。
それは、地上に開いた穴を地下から眺めているわけなのだが、その穴の形がフレームになって、星空が切り取られているのだった。
絵画や写真と同じように、散漫ではない凝縮された美がそこに、ひっそりと息吹いていた。
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