花散る男女

トリヤマケイ

文字の大きさ
16 / 81
第1部 奈美編

♬ 15 ダイナシティ

しおりを挟む
   京には、確実に、そして加速度的に世界は変わってきているという思いがある。たしかにこれまでも一瞬の間断なく世界は変化し続けてきたのは言うまでもないが、これまでの人類の常識が通用しない未曾有のパンデミックな感染症の出現が、新しい世界へのイントロダクションだと京は思うのだ。

    情報過多なこの時代、さまざまな情報が飛び交っている。いわゆる陰謀説若しくは陰謀論といったこれまではトンデモとして都市伝説の範囲内での面白い話といった扱いでしかなかったものが、現代では個人でも情報を発信し、どれだけマイナーであっても、それなりに市民権を得られるのが当たり前となった。

   そして、興味本位のみで地下でワイワイ騒がれていたようなものが、平気でメインストリームに乗っかり流布されていくのが当然のようになっている。

   そして、これまで人類がつちかってきた科学や医学の常識というものが軽々と覆される現在では、陰謀論であるとかトンデモというイメージが強いかもしれない新世界秩序(New World Oder)を、世界を救うどころか国家を転覆させアングロサクソンの帝国主義による世界制服戦略であり、人生を揺るがすような大スペクタクル的な何かを期待させるただの陰謀論として片付けてしまうことが出来ない様相を呈しはじめている。

   世界銀行の金融支配であるとか、世界国家の建設であるとかグローバルな視点がいかに必要であるかは、論を待たないところだと京は思っている。

   ゴミひとつとっても、これまでの世界は際限なく海や川にゴミを投棄して平気でいられたが、いまや地球上にゴミが溢れかえっている。その内処理できずに地中深く埋めるしかない原子炉そのものであるとか放射能を除染した際の処理水であるとか、生命の源である大地と海を凄まじいほど汚している。 

   それがやがて人類へと確実に跳ね返ってくるという考えは陰謀論でも都市伝説でもなんでもなく、今が良ければそれでいい、自分と家族だけ幸せなら何の問題もない、そういう文字通り狭い了見では、これから先人類には滅亡しか待っていないことは、火を見るよりも明らかだろう。

   しかし、年がら年中、世界のどこかで争いやいざこざが絶えない世の中であるのに、世界がひとつになるなんて夢のまた夢の話ではないかと当然思うだろうが、実はすでに世界はひとつになっている。

   ただ多くの人が気づいていないだけだ。SNSでのディープ・フェイクであるとか、誹謗中傷、デマゴーグといった事件性のある、あるいは炎上系の情報は、またたくまに拡散されていくが、それと同様にホッコリするような、癒し系の情報も、またたくまに拡散されていく。

   ただ、有名人の不倫であるとか、アイドルの熱愛発覚であるとか、よく考えてみるとほんとうにどうでもいい情報なのだけれど、スマホの画面越しという絶対的な安全圏から眺める他人の不幸とか争い事や事件、ゴシップは、確かにこのうえなく面白いかもしれない。

   誰もが自分だけのスマホを肌身離さず持ち歩いていることが、当たり前のこの時代に、逆に言えばスマホをどこかに置き忘れたり、失くしてしまったら人生詰んだ、みたいな絶望感を味わうことになるのが、当たり前のこの時代だからこそ、いいニュースも悪いニュースも世界中を駆け巡る。

   情報端末により、同様に卑近の例でいえばチップを埋め込む、妊娠しなくなる等のワクチン陰謀説であるとかも一瞬にして拡散されていく。

   とどまることなく流れてくる、例えばそれらの陰謀説を逐一鵜呑みにしている人もいるかもしれない。

   人類には危機管理能力が備わっていて、例えば道路に落ちていた長い紐を見て、ヘビだと認識して飛び退くといった危険を察知してアラームが鳴るようになっているが、スマホという情報端末は、ほんとうにその人自身といっても差し支えないくらい一体化してるものなので、ヘビだと思って飛び退くことなど出来ないまま、ダイレクトに心の中に入ってくる。

   その情報が、人をズタズタに傷つけるものであったり、気分を害するものであったりしても、逃げたり遮断することは出来ない。賢明にも読むのをやめれば回避出来るかもしれないが、一日中途切れる事なく情報はスマホへと流されてくるのだ。

   誰も知りたくもない一般人やヲタクのごくごく個人的なつまらない悩みの話も、総裁選出馬に関する話も、アイドルのお泊まりが裏活でわかった話も同列で語られるような、それが、多様性の時代なのである。

   だいぶ話が逸れてしまったけれど、つまり癒しにもなれば、人を傷つける鋭利な刃物にもなる諸刃の剣である、このスマホこそが、世界をひとつにしているのだ。

   なので、世界の未来は明るいと楽観的に捉えていいのか、破滅に向かっていると悲観的に捉えていいのか、わからないけれど、良いことも悪いことも含めてこれから世界は、ひとつになっていく、その大きな変革の時期へと突入したのではないかと、京は無垢な瞳の子猫たちと遊びながら思うのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ピンクローズ - Pink Rose -

瑞原唯子
恋愛
家庭教師と教え子として再会した二人は、急速にその距離を縮めていく。だが、彼女には生まれながらに定められた婚約者がいた。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

25cmのシンデレラ

野守
恋愛
デパートに靴を買いに来た梨代は、自分の足に合う25センチのサイズが無くて落ち込んでいた。そこで偶然起こった暴漢騒ぎ。とっさに靴を投げて助けた男性は、まさに梨代が買おうとしていたブランドのメーカー「篠塚製靴」に勤める篠塚だった。しかも篠塚グループと呼ばれる現代財閥の御曹司だとか。 後日お礼として非売品の靴を届けに来た篠塚は、梨代にとある仕事の依頼を持ちかけて……。 御曹司が庶民を体験⁉ 王子様の「逆」シンデレラスト―リーが始まった! と思いきや、事態はあらぬ方向に。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

12年目の恋物語

真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。 だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。 すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。 2人が結ばれるまでの物語。 第一部「12年目の恋物語」完結 第二部「13年目のやさしい願い」完結 第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中 ※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。

処理中です...